在宅医療の基礎用語

往診 医師が家庭に出向き診療を行うこと
訪問看護 看護婦が家庭を訪問して看護すること
訪問介護 ホームヘルパーサービス
ホームヘルパーが家庭を訪問して食事や排泄などの介護や家事の援助をする
デイサービス デイサービス施設まで送迎して入浴、食事、機能訓練を行う
日帰り
ショートステイ 短期入所サービス(原則1週間まで)
介護施設で要介護者を短期間預かること
特別養護老人ホーム 常時介護を必要とし家庭での生活ができない高齢者等が対象となる社会福祉法人
老人保健施設 入院治療は必要ないが家庭に復帰するためにリハビリテーションや介護が必要な高齢者等が対象となる医療機関
療養型病床群 長期にわたり療養が必要な高齢者等が対象となる医療機関で生活スペースに余裕がある

在宅医療の1例

私の妻の父は秋田市で寝たきり状態で在宅介護を受けています。

 卑近な例で申し訳ありませんが、在宅医療の1例としてその実際をご紹介いたします。
 家族は患者である義父、その妻(私にとって義母、72歳)、息子(私の妻の弟37歳)、その妻と娘2人(私の姪、7歳と2歳)です。息子夫婦は共働きで義父の介護者は義母のみです。

 現在72歳の義父は60歳の時に初めて脳梗塞で軽い言語障害となりました。しかし、翌年には仕事中に脳内出血を起こし、右手足がやや不自由となりました。そのまま、安定していたのですが、平成6年から臥床がちとなり、平成8年からは完全に寝たきりとなりました。肺炎で何度か入院する度に体力が落ち、寝たきりとなったようです。飲み込んだ物が誤って気管に入って肺炎を繰り返します。
 肺炎を予防するため口から食べることをやめて、現在は食事はお腹に開けた胃瘻(いろう)という管から、栄養剤を流し入れるのみ。排泄は自分では知らせられず、おむつにしています。その世話は72歳になる義母だけがやっています。また、義母は孫娘二人も共働き夫婦に代わって面倒を見ています。
 週1回、病院から医師が往診してくれます。夜間や休日に熱が出たときは当直の医師が電話で応対してくれるので安心です。
 また、週1回訪問看護ステーションから看護婦が2時間ほど介護に来てくれます。介護のアドバイスなどをしてくれます。
 2週に1度は秋田市が入浴サービス車を出してくれて入浴できます。
 ホームヘルパーは利用していません。
 義父のショートステイ(短期間施設入所)を勧めていますが、義母は自分が面倒をみたいといっています。

 老人病院に入院させると月30万円かかるそうで共働きの夫婦でも支払える金額ではありません。

 昔は中気(ちゅうき。脳卒中のこと)3年といわれ、脳卒中(脳血管障害)後、3年しか生きないといわれていましたが、医学の進歩により、現代では脳卒中の再発はある程度予防でき、このように自分で食べられなくても、胃瘻という管で生命を維持できる世の中になりました。

 寝たきりになったら、あなただったらどうしますか?結局、「一人では生きていけない」状態になります。


 現在、日本には65歳以上で要介護高齢者(洗面、歯磨き、更衣、食事、排泄、入浴、歩行のいずれかひとつでも何らかの介助を要する者)は、141万6千人いて、在宅が86万2千人と全体の6割といわれています。この在宅要介護高齢者の内訳は

全く寝たきり 13万人
ほとんど寝たきり 15万人
寝たり起きたり 40万人
その他 18万人

です。そして、その人たちを介護する人(介護者)の約50%は60歳以上です。また、65歳以上の寝たきり高齢者の介護者の86%が女性です。
 要介護高齢者も病気をかかえ大変ですが、その人を介護する介護者も自分の健康問題、精神的ストレスが生じます。デイケアやショートステイといった介護者の負担を軽減する福祉施設の拡充が必要です。

 在宅で介護をする家族の負担は、地方自治体の在宅福祉に対する取り組みかたで、かなり違います。家族だけで面倒を見ようとすれば、介護する家族までも倒れてしまいます。訪問看護婦やホームヘルパーの援助が必要になります。
 地方自治体に期待できないと判断した高齢者の中には住み慣れた地を捨てて、在宅福祉の充実している村や町に転入していく人もいます。


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