大学生活の送り方 〜波賀 政伸編〜
波賀政伸
これが読まれている時は新入生が入学してきて、もう私も卒業して社会人として苦しんでいる日々を送っていることでしょう。(笑)新入生の皆さん入学おめでとうございます。在学中のみなさん進級おめでとうございます。生涯教育専攻に入学してどうですか?もう後悔している人も何人かいることでしょう。
しかし、私が言うのも何ですが生涯教育専攻はあなたの大学生活4年間を後悔させないところです。チャンスはたくさんあります。後は問題意識を持ってあなたが一歩踏み出す勇気があるかどうかなのです。これから、私の大学生活四年間を振り返りながら書いていきます。
私は当初、奈良県から出て行くことと教員になることを夢見て13受験し、テストだけでなく私の能力で判断してくれるというAO(アドミッションオフィス)方式も受験したのですが、全く私を評価して下さらず、予想もしていなかった天理大学1校だけが私を評価して下さり、入学させてくれるというありがたいことがおきました。12受験に失敗した私は、浪人する勇気も勉強する能力も全く無いことに気づかされ、しかも「大学からは奈良なんかに居てたら、人間が小さくなる」と言っていた私だけが仲間と離れて奈良県に残るということもおきて私は非常に情けない状態となりました。悩んだ挙句考えた事は、『4年間でいかに自分を成長させ、次に(進路)ステップアップさせる』という目標を立てることにしました、
そこで、入学して最初にしたことは自治会の門を叩き「自治会に入れてほしい」と言ったことです。しかし、「1年から参加したいと自治会室に行った人はいないので…」という理由で断られ、仕方なく歩いていると向かい側の部屋から炊き込みご飯の匂いがしました。そのまま匂いに誘われて入部したのが4年間続けることになる『ユースホステル部』でした。ユースでは、夏に沖縄を1週間旅行して、キャンプをしに和歌山に行ったり、冬には長野にスキーにも行きました。 また、大学の行事である体育祭実行委員を皮切りに、大学祭実行委員に参加して、なぜか各部がそれぞれ紹介する記事を私が1人で20団体分書いたり、電撃ネットワークが大学祭のイベントに来たのでサインをもらったり、学科ごとの劇で大道具もしました。さらには、石飛先生と一緒に母校(生駒高校)を訪問して天理大学の入学者を増やすためにと2人で宣伝しに行ったのも、よくわからないまま一年が過ぎていましたが、今では非常にいい思い出となっています。
2年からは、大学外で参加していた『赤十字の献血ボランティア会長』をすることになり、20のキャンペーンを企画、のべ2500人の方に献血してもらいました。また、井戸先生にお願いしてボランティアのメンバーに講演をしていただいたお陰で、10名に減って潰れかけていたのが県下5大学2短大2専門学校50名の団体に立て直すことに成功しました。大学内では、これから資格取得が必要だと考えた私はビジネス能力検定の受験者を40名集めて一斉に受験したり、岡田先生に誘われて、自由の森大学(学長:筑紫哲也)という市民大学にスタッフとして参加させてもらって市民大学運営のノウハウを学ばせてもらいました。また、大串先生に肩を押してもらって参加した『日韓文化交流基金学生訪韓団」では、準国賓待遇で韓国を10日間訪問し、今では行くのが難しい38度線がある板門店に行けたことや、ホームステイ先で「なぜメールアドレスを持ってないのだ?」「インターネットもしていないのか?」と言われ韓国のIT社会を見せつけられました。韓国がIT社会をめざした背景に国家予算の半分を軍事費に割かれているため、効率的な国家事業として行われたのがIT社会だと聞かされるなど貴重な体験をしました。帰国後インターネットの重要性に気づかされた私は、韓国に行ったことで我が家のITを進めるきっかけとなりました。
3年からは、『ユースホステル部部長』として東北1周を計画して1週間ユースホステルに泊まりながら、中尊寺金色堂・岩手わんこそば・十和田湖・奥入瀬・恐山・仙台で牛タンを食べたりと、かなり無理をしましたが東北4県約1600kmの楽しい旅となりました。生涯教育専攻の目玉行事である社会教育実習は、山口県生涯教育センターで受け入れてもらいました。今考えると往復5時間かけて通ったのは無謀だったと思いますが、実習先で「恐らく学生で社会教育実習生を受け入れるのはあなたが、最初で最後だろう」と言われる程珍しかったようです。また、指導担当していただいた先生に「君は公務員にきたらダメだよもったいない」と言われたのがその後の私の進路に影響をあたえました。
10月から今までしてきた活動を極力減らして就職活動を始めました。ありとあらゆる分野の企業を訪問して説明会や面接を受けたのですが、大手都市銀行の説明会に行って行員が何を話しているのかよくわからないし、質問する学生の話の内容もよくわからなかったことが改めて勉強しなおすきっかけとなりました。大手銀行、地方銀行、第2地方銀行、人材派遣、流通、電力、鉄道、商社ととにかく大手をまわりました。なぜなら、大手企業は5月ぐらいに採用が終わるので、それからでも中小企業は遅くないと考えたからです。
4年からは、就職試験の対策ついでに公務員の専門学校に通い始めました。と同時にどうせ来年から一生働くのだからと思って3年続けていたバイトをとっとと辞めて就職に集中しました。5月には今の会社に内定を頂いたのですが、せっかくだったので郵政職員、奈良県警、広島市職員、山口市職員などを受験しましたが、私には合っていなかったようです。夏まで公務員の受験勉強をして気がすんだのであっさりやめて、次に集中したのが卒論でした。卒論のテーマである「行政における生涯学習の現状と課題〜奈良市と生駒市を比較して〜」を、調べるため奈良県庁・奈良市・生駒市・両市公民館の職員に話を聞きに行くことで、奈良県の生涯学習の現状を知ることができました。10月には、5年間の献血ボランティアの経験が認められたのか、厚生労働省主催の『献血推進運動中央連絡協議会委員』に選ばれて厚生労働省局長、日本赤十字社幹部、各地方代表者に向かって献血に対しての持論を展開しました。結果的にはうまくいかなかったのですが、現場で献血活動している全国の学生・職員の意見をしっかりと聞いてもらえたのはよかったことだと思います。2月に北京と台湾に行ってきたのですが、新聞やテレビで見るよりも不景気な気がしましたが、土産屋の店員が自分たちの生活がかかっていることもあるのでしょうが、たった一年の学習で日本語が上手になるのは、私たちが語学を学ぶ時に見習うべき点だと感じました。北京で故宮城を見て歩き、故宮城の中身は台湾に移っているので台湾で故宮城の宝物を見ることができたのも2つの海外旅行に行った成果でした。また、私は大学の授業が好きだったので4年生にも関わらず、今までに一番真剣に授業を受けていました。これを書いている頃は卒業できるのかどうかわかりませんが、恐らく、社会教育主事と博物館学芸員の資格は取得できていることでしょう。それが無理なら私は何もかも失って留年ですね。
さて、だらだらと書かせてもらいましたが4年間でこれぐらいはすることができます。よく「あんなの絶対無理」と言って行動に移す前に止める人がいますが、学生は「失敗してなんぼ」の時だと思います。失敗していっぱい恥じをかいて経験しないと何も始まりません。天理大学に入って就職はどうなんだろう?と思っている人もいると思いますが、不景気になったおかげで学生本人をしっかり見てくれる時代になってきているといえます。私が入学(1999年)した時に「君らが卒業する頃には景気もよくなっているかもしれない」と言われてきましたが、依然不景気のままです。もしかしたら、このような時代が本当は普通なのかもしれません。
そこで就職するための道としてアドバイスできる事は、次の10点です。
・専攻の先生とは進路については特に特にしっかり相談にのってもらう
・インターンシップに必ず参加する(大手の会社に行く)
・学校の留学・短期留学を利用する(天理大学は非常に行きやすく、ワンステップ上を目指せる)
・語学を修得するとワンステップ上の企業に入れる
・新聞を毎日読んで企業の嘘を見破る(2紙読むとなおよい)
・企業系列と業界地図は知っておく
・進路部の就職ガイダンスには全て出席する(勝手に判断して欠席してはいけない)
・就職にお金はケチらない。自分の一生がかかっているのだから(チャンスがあればどこにでも行く)
・自分の1年後・3年後・5年後・10年後と先を考えて自分を磨いていく
・大学以外にも他大学生、社会人との交流を積極的に行なう
そこまでと思うかもしれませんがこれ以上のことをしないと希望のところに入社するのは非常に難しいです。
私は学校側にも言いたいのですが、資格を取得することをよく進めます。しかし、言うだけでなく進路部の職員も一緒になって資格を取得し、スキルアップを見せる事で学生も目を向けていくのではないでしょうか?TOEICも200点コース、500点コース、700点コースとコース別にしたり、公務員試験では、達成度テストにしてコンスタントに勉強させていくなど具体的な方法で学生を伸ばす必要な時にきています。
また、企業のOB・OGを学校に呼び講演させるのも、若手ではなく幹部クラスの大手社員、大学教授、公務員などを無理にでも呼ぶべきで、一度に無理なら年間を通してでもするべきです。そうやって天理大学生に足りない自信や積極的さを取り戻さなければいけません。
さらに、大学・教員・学生が三位一体となって協力体制をとってもらわないと就職を勝ち取るのは難しいのではないでしょうか?就職活動をあまりしたことがない職員がいくら就職の話をしても説得力がありません。一般社会での経験を積んだベテラン専門員を常任させるべきだと思います。学生は建前を聞こうとは考えていません。実際の話を、体験を、聞きたがっているのです。
学生側も、天理大学の良い点でも悪い点でもある内輪だけで楽しむ事からもっと外に目を向けて行動していかなければいけません。大学祭に盛り上がるのは決して悪くありませんが、大学祭だけが人生でもありません。完全燃焼してから、立ち直るまでの時間がかかりすぎています。就職活動・公務員試験・大学院入試・留学をみんな(天理大学生)がしていないから大丈夫ではありません。よく「大手とかじゃなくて自分の好きなことができる会社に入るから大丈夫だと」言う人もいますが、大手にも行けるような能力がなければ自分の希望する企業に行くのは本当に難しい事です。そして、学生はもっと主張して自分たちがよりよく過ごせる大学にしていくようにぜひしていって下さい。
最後に、私は大学に入学する前に「あれもしたいこれもしたい、あんなアイデアこんなアイデアがあるのになぁ。」といつも欲求不満でした。しかし、4年たった今あれだけしたいことがたくさんあったはずなのに、私の中にあったアイデアをほとんど使い切ってしまいました。結局、私もまだまだ体験の少ない修行の身だったということです。
これを最後まで読んでくれたあなた、大学4年間はあっというまに過ぎます。せっかくいろいろな人が助けてくれて大学という自由を手に入れたのですから、絶対に無駄にしないで下さい。
そして、「あの時ああしとけばよかった」と後悔しないように過ごして下さい。たぶん過ごすけどね。
(第7回「高橋賞」受賞)