天理大学 生涯教育専攻 課題図書
山岸 俊男 『安心社会から信頼社会へ ― 日本型システムの行方 ―』
中公新書(1479) / 1999 / 253頁 / \760 / ISBN:4121014790
●やまぎし・としお●
1948年名古屋生まれ。一橋大学社会学部卒業、同大学院社会学修士課程修了。ワシントン大学社会学博士。北海道大学文学部助教授、ワシントン大学社会学部助教授を経て、現在北海道大学文学部行動システム科学講座教授。社会心理学専攻。
著書:『社会的ジレンマのしくみ』(サイエンス社)、『信頼の構造』(東京大学出版会)
第1章 安心社会と信頼社会
第2章 安心の日本と信頼のアメリカ
第3章 信頼の解き放ち理論
第4章 信じる者はだまされる?
第5章 社会的知性と社会的適応
第6章 開かれた社会と社会的知性
後書き (研究の舞台裏)
学生の感想文(1)
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「人を信じることは、おろかなお人好しのすることでしょうか。それとも逆に、誰も信じないで『人を見たら泥棒と思え』と思っている人こそ、おろかな人間なのでしょうか」
この疑問に対する答えは、「われわれ自身が作り出している環境」によって決まっていた。社会的な環境によって、他人を信頼する人はおろかなお人よしにも、信頼しない人がおろかな人にもなってしまう。そして、一般的信頼の高い人のほうが優れた社会的知性の持ち主であることが分かった。
また、大学の偏差値と一般的信頼尺度の関係が印象に残っている。大学の偏差値はその大学の学生におかれた社会環境を示し、学生のおかれた社会的環境によって学生のもつ社会的知性のタイプが異なってくる。「人を見たら泥棒と思え」という信念は、機会を積極的に求める途を自ら閉ざしてしまう可能性があるようだ。大学在学中に社会的・経済的にさまざまな機会を持ち、一般信頼を高め、社会知性を充実させるための教育が必要であると思う。
(2回 M.H.)
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