天理大学 生涯教育専攻 課題図書
藤永 保 『幼児教育を考える』
岩波新書(赤121) / 1990年 / 218頁 / \660 / ISBN:4004301211
●ふじなが・たもつ●
1926年長崎県生まれ。1952年東京大学文学部心理学科卒業。お茶の水大学名誉教授、東洋英和女学院大学講師。発達心理学専攻。
著書:『発達の心理学』『あたらしい家庭教育』(以上、岩波書店)、『発達環境学へのいざない』『心の時代の不安』(以上、新曜社)
1 開かれた能力と人間発達(ヒトの成長と初期教育;日本の幼児教育)
2 英才教育の光と影(遺伝か教育か;英才教育の試み)
3 子どもの成長と環境の力(野生児の神話が語るもの;見すてられた子どもたち)
4 初期教育を考える
学生の感想文(8)
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胎児のころから音楽を聞かせたり、話しかけたり。小さいときから言葉や、あいさつだけじゃなくて、算数や英語も学ばせる。自分の子供への期待はふくらんで、子どもの気持ちも聞かず、有名な学校や有名な会社に入れたい。他の子どもたちにはまけたくないと、だんだん親たちの争いみたいになってきている。「子どものため」といってやっているけど、私には親の押し付けにしか思えません。私も、子どもができたら、おなかに話しかけたり、クラシックとかだけじゃなくて、私の好きな音楽とかも聞かせたいなぁって思うけど、生まれてきたら、その子はひとりの人間であって、わたしの所有物ではないので、子どもがやりたいことを、やらしてあげたいと思います。子どもが1番幸せになることを考えるのが親なんだから、なにが1番大切なのか、ちゃんと考えないといけないとおもいました。
(1回 K.I.)
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今では生まれる前から子どもに教育をし始める親がいる。まだ三歳の子どもなのに二つや三つ習い事をしている子がいる。子どもは太陽の下でのびのびと遊び、勉強は小学校に入ってからでもいいのではないかと思う私には、とても衝撃的であった。どこかの塾に行けば、知識は入ってくる。しかし、心の教育されているのだろうか。
親は子どもの将来の為と思い、小さいころから習い事をさせているが、それが本当に子どもの将来の為となっているだろうか。知識の勉強は大人になっても出来るが、心の勉強は小さいころが一番大切である。今後、人間関係を築いていくのにも、心が一番大切であり、その人間関係によって出来た思い出などは、本などでは学ぶことは出来ない。知識より心のほうが、大人になってからの大きな財産になる。
昔に比べ、現代の子どもは親の教育により、知識の量は多いが、心の豊かさは現代の方が劣っているのではないかと、考えさせられた。
(1回 Y.I.)
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赤ちゃんに対して今まで持っていた考えがくつがえされました。人間の生きる本能というものに改めて感心しました。「心」があるというところでは、人間も猿も同じだけど、学習するという意味の広さと深さは、やはり人間が一番だと思いました。でも、人間は生まれてくるタイミングが、少し早すぎるのかもしれません。だから、生まれてすぐの家庭でのしつけや教育、さらには幼児期の外からの教育までもが、その子に対してとても重要で且つ必然的な意味を持ってしまうのではないでしょうか。私にとっては、これはちょっとプレッシャーであると思いました。
(3回 Y.A.)
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この本を読んで、私は、もし自分に子どもがいたらどう育てていきたいかと考えた。子どもには秘められている未知の可能性があるといわれている。それを充分引き出してあげたいとは思う。しかし、これをやりなさい、あれをやりなさいという強制はしたくない。子どもにいろいろな体験・経験はさせたい。そこで興味を持ったものを、子どものペースで学んでいってほしいと思う。そして、そういうふうに学んでいる子どもを温かい目で見つめていきたいなと思った。
性格は本人次第で変えられるものであると思うが、以前、人の性格というものは、みな3歳ぐらいで決まってしまうものであると聞いたことがある。今、自分の元にある性格がそうらしいのである。この本を読んで、さらに、周りの環境って大切なんだなと感じた。
(3回 A.K.)
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「幼児教育を考える」を読んで、子どもが成長するということの大切さを知り、そして育つ環境が子どもにどれだけの影響かを与えるかがわかりました。子どもは無色で生まれてきて、いろいろ経験な度によっていろいろな色に染まっていくと考えたら、幼児期というのはとても重要です。幼児期の環境や体験・経験がその後の成長に深く関わってくることは事実です。親は自分のエゴとかで子どもを縛ったりしてはいけないと思います。すごく難しいと思いますが、その子の良いところ、個性を見つけてあげて、尊重し自主性を伸ばしてあげられたら…と思います。教育に関しても親は自分の子にどんな才能があるか発見したがったりしていろいろなことをさせたりしますが、長い目で子どもの成長発達を眺めてやる事が大切だと思いました。そういったいろいろな部分で親は本当に責任重大だなと思いました。
(3回 M.W.)
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一年前ある講義で日本における早期教育のビデオを見た。あまり詳しいことは覚えていないが、そこでは幼い少女が大学生レベルの数学の問題を解いたり、予備校の講義を受けていたり、また、母親が胎児に歌いかけたりする映像が流れていた。それを見て多少違和感を持ったものの、子どもには果てしない可能性が秘められていて、鍛え方次第で素晴らしく頭のいい子にもなり得るのだと思った。このビデオで問題とされていたのは、専業主婦が世の中に認めてもらう術として早期教育が行われているといったことであった。家庭という閉ざされた空間で、このような教育が行われることは、大変危険である。このような環境で大人になると、感情までも頭で考えたりするようになってしまうという例があるという。このことから早期教育には、たくさんの人間との関わりが大切だということが深く理解できたように思う。子どもは他人の世界を知ることによって成長していくのだ。その大切な営みが大人の自分勝手な思いで絶たれてはいけない。このことだけに限らず、子どもは大人の所有物のように扱われてはいけないと思う。
小さい頃からあれこれ知識を詰めこむのも一つの教育だが、子どもの高度な能力などから考えて、様々な刺激を与えるだけでも十分な教育と言えるのではないかと思った。
(3回 M.I.)
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有名小学校向けの幼児進学塾が話題に上ったのは、たかだか10年ほど前のことだと思う。世間が「お受験」に注目しはじめたのもこの頃だ。それまで幼児というと、小学校へ上がるまでの準備期間として、家庭や幼稚園、保育園で学ぶだけでよかった。しかし現在は、受験戦争の低年齢化がますます進み、有名小学校に入るための有名幼稚園受験のようなものもあると聞いた。もう歯止めが利かなくなっている。
親たちは学校の「ブランド」に惹かれ、本来の「早期教育」の目的を見失っている気がする。「早期教育」は将来子どもを個人の意欲と普遍的理想とがどこかで深い関連をもつ人、つまり「生きがいをもつ人」に育てることが第一の目標ではないだろうか。
愛情中心主義の本拠である、家庭にまで教育を持ち込む前に、しっかりと自分の子どもを愛し、育て、しつけを行うのが親の一番の仕事だと思う。そういう親に育てられた子どもがきっと、将来「生きがいをもつ人」になるはずだと私は信じたい。
(3回 H.K.)
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本書のキーとなる事柄が多く、要約をしようにもなかなかまとめることができなかった。私自身、世間の子を持つ親と同じく、早期教育や英才教育が子どもにとって良いものだと思っていた。しかし、実際は、単に早い時期から教え込むだけでは期待できないことが分かった。教育には、親の子どもに対する愛情と信念が必要なのだと知った。適切に教育がなされていないと、子どもは親の私物化になってしまい、子どもが大人になったときに親を愛憎の入り混じった存在としてみることになってしまう。そうならないためには、育児書や子育てマニュアルたるものを過剰に信じ込まないことだと思った。子育てに本当の意味での正しい教育の方法はないと思うが、適切な教育が成されることが大切だと思った。
この本を読み終え、広田照幸著「日本人のしつけは衰退したか」を読んだ時と似た感じが残った。今までの教育に関しての固定概念が崩されたようだ。新しいことをまた一つ得られた。
(3回 T.O.)
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