天理大学 生涯教育専攻 課題図書

河合 隼雄 『家族関係を考える』

講談社現代新書(590) / 1980年 / 188頁 / \660 / ISBN:4061455907



●かわい・はやお●
1928年兵庫県生まれ。1952年京都大学理学部卒業。1965年ユング研究所(スイス)よりユング分析家の資格を取得。国際日本文化研究センター教授。臨床心理学専攻。
著書:『コンプレックス』『子どもの宇宙』(以上、岩波新書)、『宗教と科学の接点』『昔話と日本人の心』『心理療法序説』(以上、岩波書店)など。


1 いま家族とは何か
2 個人・家・社会
3 親子であること
4 夫婦の絆
5 父と息子
6 母と娘
7 父と娘
8 きょうだい
9 家族の危機
10 老人と家族
11 家族のうち・そと
12 これからの家族

学生の感想文(15)

 家族関係は、親子という「血」による関係と、夫婦という「血」によらない関係とが共存している。と書かれているように親子関係について考えてみると、子どもは親を選ぶことはできない。逆に親も子どもを選ぶことができない。今まで自分が子どもであったせいか、子どもは親を選ぶことができないということは考えたことがあったが、親も子どもを選ぶことができないことについては考えたこともなかったし気づきもしなかった。そのことに対して自分はまだまだ子どもだと思った。そして、親子の関係というものは夫婦の関係とは違い、切っても切り離せない絶対的な存在だということに気づいた。このヨコとタテの関係が存在する家族をうまくやっていくにはたいへんだと思った。今の時代、戦後のような家父長制ではうまくやっていけないと思った。家族一人一人の個性を尊重することが一番うまくやっていく方法だと思った。
(2回 T.K.)

この本は昭和55年に発行され、まだ「少年犯罪」という言葉がハッキリとはつかわれていてないし、私がまだ生まれていない時代だが、この頃にはマスコミで扱われているような現象がおきていたようだ。この時点で今のマスコミやワイドショーがよく言う「最近の少年達は…」や「私たちの若いころは…」などというセリフすら疑わしくなる。
これは私の経験なのだが、私は高校生の時に電車通学をしていた。ホームで電車をまっている時、40代の男性が私の後に立ったのだが、私が高校生だと知ったら違う場所に移動するといった事がよくあった。電車で私の隣が空いているといったことも、今でもよくある。友達もよくあると言っていた。
このように、子どもと大人の距離がかけ離れている事が一番の問題ではないかと思う。どちらから離れていったかというのは、この際関係ない。問題は、どちらからこの距離を縮めていくかだ。それはやはり、この社会を作っていっている大人たちだと思う。
(3回 T.K.)

 家族関係というものは、個々の家庭により違うものである。いくら幸せそうな家族でも悩みはあるはずだ。私は家族というものに苦労させられていると思う。お金に困り、一緒に御飯食べたこともなくいつも寂しい思いでいたような気がする。この本に書いているように世の中家族だけではないというのには少々問題がある。実際家族関係というものは人生において価値のある存在であり、今生きているのも家族がいなければないことである。そのことを自覚してほしい。親がいるから私がいる、私がいるからこどもがいる。そういうことを、あたりまえと思わずにいきていくべきである。前に聞かしてもらった話だがあたりまえというのが人をだめにする。あたりまえの精神は生きていくうえで非常に危険思想である。家族がいてあたりまえ、息ができてあたりまえ、生きていてあたりまえ。最近の人類はあたりまえが多すぎる。
(3回 T.K.)

 結婚するとういことは自分と相手の二人が何らかの目的や動機を持って、お互い誓い合いそして家族が作られる。家族にも様々な形態があり、どちらかの両親と住む家族、夫婦二人の家庭など形は様々であり、事情も様々である。
 家族を形成することによって産まれてくる問題がある。夫の暴力、姑のいじめ、これらの逆など色々である。これらはどうすれば解決できるのだろうか、なぜお互い誓い合ったなかなのに年限が経つと結婚をする前の気持ちが消えてしまうのだろうか。それは、今までは相手の事を思いやっていきてきたが、だんだんとその想い薄れていきいつの間にか自分のことばかり想ってしまう様になったんでは無いだろうか。
 家族というものは安らぎの場というが、本当にそうなのである。家族には気はつかわなくていいし、自分を愛してくれる人がいる。しかし、家族が安らぎの場にするには相手に家事してもおうとか、してくれないから怒るなどということはいけない。自分でしようと気持ちが必要であり、自分で出来ない時はやってもらうその時に相手に感謝の気持ちを心から感じなければならない。そうすれば家庭は安らぎの場となり、仕事にも打ち込むことができるのである。
(2回 I.T.)

 今は子どもも一人一つ自分の部屋を持っている。核家族化が進み、家族の人数が減った為家が広く使えるようになったからであろう。それに、夫婦の共働きの家が非常に多くなり、家族の団欒の時間が少なくなり、経済的にはとても裕福だが、心理的には貧乏になってきているように思う。核家族化により、きょうだいも少なく、子どもはバイトや遊ぶことにあけくれ、家をあけることが多い。そんな中、いつ家族の団欒の時を過ごすのであろうか。家族が集まる時もなければ、もちろん話すような時もない。そんな中、家族というものがどうやって「精神安定機能」を果たすのであろうか。果たしてはいけないだろう。
 昔のような大家族だからといって、この問題が解決するということではない。核家族でも、家族の「精神安定機能」を果たしていくような家作りが、これからの課題である。
(1回 Y.I.)

 私は、家族関係が人間関係の中で最初の人間関係であり、他の人間関係人も大きな影響を与えるため、家族関係をしっかり持ってほしい。
 家庭内暴力の起こる原因のすべてが家族関係の崩壊だけではなく、その他のストレスにより、そのストレスを解消する方法を知らずに一番身近な家族に対して家庭内暴力という形でストレスを発散しているのだと思いました。そして、そのストレスを家族にも言えない子供たちが自殺という方法を取り出したのだと思う。
 将来自分が家庭を持つようになれば家庭が「憩いの場」となれるようにしたいと誰もがそう思うものである。しかしそれは、ただの理想にしか過ぎない、もし本当にそうしたいと思うのであれば、それなりの努力が必要だし中途半端な気持ちでは無理だと思う。しっかりとした家族関係を築くものはこれほど難しいものだということこの本を読んで知った。
(1回 K.H.)

この著書は、事例に基づいて家族関係を考察していく形になっているので、読みやすい。いくつかの事例を読んで、様々な家庭があるなと改めて思った。
 また、心理学的であったり一般的であったり、色々な視点から物事をとらえているので、なるほどと読者に思わせる部分が多い。この本を通して、新たな物の考え方を知った事は大きいと思う。
 社会を小さくしたものが地域であり、地域を小さくしたものが家族だ。つまり家族は人間関係の基礎である。将来自立して社会に出て生きていく事ができるよう、家族の中で多くの物事を学ぶのだと思う。人間が生きていく上での基盤だ。
 様々な家族が存在する。他人の家庭が良く見える事もあるだろう。しかし、それぞれの良さがある。幼い頃、母によく言われたものだ。ヨソはヨソ、ウチはウチでしょ、と。これは本当にその通りだ。これからは、自分の家族を大切に生きていくべきだと思う。
(1回 Y.Y.)

 現代の日本で家族の事件、幼児の虐待や子どもが実の親を殺すといった事件が目立っている。殺人とはいかずとも夫婦の別居や離婚、親の世話をしない息子娘夫婦の核家族化など家族間の関係性やつながりは昔と比べ衰えている様に思える。
 私は昔ながらの典型的な日本の家に生まれたので、この様な事件とはあまり関わりがない様に考えていたが、最近、家の平均年齢が上がるにつれて一家団欒の時間や機会が少なくなっている。と同時に家族間の会話や一緒に過ごす時間も減っている事に気がついた。年齢が上がり各々やりたい事や自分の時間を見つけ、それを重視するようになったからだとは思う。このままだと典型的な現代の家族の道を歩み、家族間の関係はもろくも崩れていくのかと実感しつつあるので、この危機を脱するためにもう一度、家族の一人一人の役割を考え、血のつながり以上のものを大切にしようと思った。
(2回 H.K.)

「家族関係を考える」を読んで、家族のありかたについて改めて考えさせられました。家族という関係は、お互いがお互いにくつろぎと安らぎを求めていると思います。家庭環境はその人に大きな影響を及ぼすのでとても大切だし、子供が成長していく過程にはなくてはならない存在です。一番親が子供に愛情を伝えることが出来る場所だと思います。しかし、悲しい事に、現代の日本では、「一家団欒」というのが確実に少なくなっています。父親と母親がそれぞれの役割を十分に果すことができていなかったり、家族がそろって話しをする時間が少なかったりして、家族がそろう機会がどんどん減り、心のきずなを深めにくくなっていったりと様々だと思いますが、誰が悪いという事はないと私は思います。みんながみんなの事を思わない限り解決しないと思います。自分にとって家族とはどんな存在か、家族はこうであってほしいと1人1人考えを持ちお互いに言い合えたら良いのにと思いました。
(3回 M.W.)

 とてもおもしろい本だった。さまざまな家庭の問題は、原因は思いもよらぬことであるようだ。現在、過去、さまざまな長い話し合いを持ち、原因を追求するカウンセラーという仕事は、大変興味深い。私は愛する二人は、必ず幸せになれると思い込んでいたが、考えを改めようと思った。私は特に問題を起こさずここまで生きてきたが、自分では気づかない負の部分を持っていて、子育てに影響するかもしれないと思うと怖くなった。子どもの虐待や、両親を殺害するなど、毎日のように悪化する家族関係のニュースが報道されている。なぜそのような事件が起きるのか、さらに興味を持った。
(3回 M.N.)

現代の日本人にとって、「家族団欒」というイメージは極めて大切なものとなっている。「国民生活に関する世論調査」によると「充実感を感じるとき」として、第一位にあるのは「家族団欒のとき」である。私も迷うことなくそう言うと思う。家族といる時が一番自分らしいと思う。しかし、筆者がいうように「家族はわれわれに実存的対決の場を用意するのである。個性を生かすには家族が邪魔のように思われるし、家族なしの孤独は、また個性を破壊する作用を持つ。」のである。実家に帰って家族といる時は確かに自分らしいと思うが、姉と二人でいて話をしていると自分の言いたいことを友達と話しているときより言えなかったりする。それは、本音で話しを出来ているからだと思う。家族は私の考えを人生の経験からちゃんと否定もしてくれるのである。
(1回 J.H.)

 現在の日本人にとって「一家団欒」というイメージは極めて大切なものとなっている。核家族の家庭が増え、食事の時間もバラバラで、家族が一緒に過ごす時間など一切ないという家庭も少なくない。その結果、お互いの考えていることが全くわからなくなり、家庭内暴力や離婚といった、収拾のつかない事態に陥ってしまうのではないだろうか。私は「家族」とは最も小さな「社会」であると思う。父、母、子といった構成員たちが「家族」というものを作り上げ、互いに支え合って生きている。しかし、「社会」である以上、自分を生かし、自立した人間として個性的に生きる場でもなければならない。これからの「家族」はそれが望める場であり、家族同士が刺激し合い、向上し合え、良い意味でそれぞれが自立した人間になることが必要である。それが、新しい「家族のあり方」ではないだろうか。自分の家、家族のあり方をよく知るためには家の外から眺めてみないといけない。私も自分の「家族」というものを第三者の目線で見てみようと思う。
(3回 H.K.)

 実際にカウンセリングに来た人の例をあげており、現実におこっている問題なのだということを感じた。離婚や家庭内暴力など家族の問題は、年々深刻になっている。それはテレビなどを見ていたら誰もが感じていることだと思う。しかし、なかなか解決策は浮かんでこない。最近の若者たちは、愛する二人が結ばれると幸せになれると、簡単に結婚を考えがちである。しかしそれは親子の関係の中に割って入ることになり、ある程度の衝突・葛藤の覚悟は必要なことだと思う。いろんな家族関係があるように、そのなかで自分たちの関係を作り出していくことが大切なのだ。親子関係には、血のつながりという絶対的なものがあるが、夫婦関係にはない。そういったことからも、愛し合っていればうまくいくなどという甘い考えは、危険思想となることを知っておく必要があると思う。
(3回 H.I.)

 私は家族が大好きです。確かに父をけむたく思った時期はありました。でも、カウンセリングを受けたりなんていうような家族の問題などはなく、この本を読んで私の家庭って平和かもしれないと感じました。そんな中で生活してきたから家族の間題の重大さを考えたことなどありませんでした。でも、ここに夫婦であれ、親子であれ「言ってはならない真実」というものは存在、すると書いてあるけど、それはわかる気がした。どんな親しい仲でも言っていいことと悪いことはあると思うから。ここではさまざまな視点から家族関係について考えられているけど、わたしは家族って信頼しあって、そこには愛があって成り立っているものだと思う。どんなことがあっても、どんなに喧嘩しても問題があったとしても最後に支えてくれるのは家族であって、他人ではないと思う。家族はそういう強い絆で結ばれているものなんだと思う。
(1回 H.M.)

 この本を読んで、家族の一人一人が果たす役割の大切さがとても良くわかった。
 家族は共に生きてゆく中で、お互いの関係をつなぎ合い、補い合い、支え合っている。しかし、家族制度が変わってきた現在、その役割は変わっていかなければならないが、その急な変革に追いついていないのではと思った。何百年も続いてきた日本の拡大家族が、急に核家族へと変化したから、良い効果を果たす家族の一人一人の存在が、今はまだ見えてきにくいのだと思った。
 夫婦・親子の絆の弱まりによって、色々な効果が現れにくくなっていると思った。この本を読んで、現代の家族の心理的な事実が分かったので、もう一度、家族の一人一人の役割を見直し、考えていくことが必要だと思う。
「一体、家族は何を目標とし、何を中心として存在しているのかが解らなくなってきたこの世に自分が存在していることを、家族との関わりの中で確かめる、今流行の言葉を用いるなら、アイデンティティーの確立ということが、家族との関係の中で問われているし、それをどの程度までやり抜いていくかが、これからの家族の課題ということになろう。」と述べている。
(3回 K.T.)