天理大学 生涯教育専攻 課題図書

宮本 みち子『若者が『社会的弱者』に転落する』

洋泉社新書y / 2002年 / 184頁 / \720 / ISBN:4896916786



●みやもと・みちこ●
1947年長野県生まれ。71年東京教育大学(現・筑波大学)文学部経済学専攻卒業。73年同学部社会学専攻卒業、75年お茶の水女子大学家政学研究科修士課程修了(家庭経営学専攻)。ケンブリッジ大学社会政治学部客員研究員を経て、現在、千葉大学教授。社会学博士。専門は青年社会学、家族社会学、ライフコース論
著書:


1 若者たちは崖っぷちに立っている
(「独身貴族」の出現―八〇年代;パラサイト・シングル論―九〇年代 ほか)
2 若者の危機が隠蔽される社会
(経済;心理 ほか)
3 家族・親子から「若者の危機」を読む
(なぜ子育ては苦労な仕事になってしまったのか;各国レポート「子どもの現在」 ほか)
4 日本の社会に未来はあるのか
(長期停滞の時代の若者の選択;若者の没落をふせぐために社会がすべきことは何か)

学生の感想文(3)

若者は社会的弱者である。この言葉にまず私は驚いた。自由(それが責任を伴うことに気づかない。)未来、夢、可能性。若者という言葉のもつ何と甘美なイメージよ。その若者がなぜ社会的弱者なのか。
だが、それは居場所のないふらふらとしたパラサイトと紙一重ということを改めて認識しなおした。父親と同じになりたくない、でもしんどい仕事はしたくないし、責任も負いたくないけれどお金はほしい、ま、いざと名あたら永久就職。そんなゆるい甘いビジョンはやがて、就職試験で藻屑となり消え去ることの若者は知らない。私も気づかない。宮本美智子は知っている。
(1回 T.K.)

私は、筆者が言うように、確かに若者は「一家を支えてひたすら会社人間として働く父親に扶養されている。親の責任は何歳で終わるかが不明確となった状況下で、若者は親からの自立を迫られず、「長い依存期」を保証されている。」だが、そうしなければどうしようもない若者もいるように思える。超氷河期といわれる就職難のなかで幸運にも就職した若者たちの現実は豊かさとは程遠く、経営悪化のなかで人減らしが進み、一人あたりの仕事量は増えた。しかも残業手当はカットされる。このような現実のなかで生きていく若者たちは親に依存するしかない人もいるように思える。中には、ただ、やりたいことがなく、フリーターの道しかなかった若者もいるのではないのかとさえ思う。誰もが不安にさらされている世の中で、最も厳しい状況に置かれているのが私たち若者の世代なのだ。改めて現実をまのあたりにした気持ちになったが、これを変えていかなければいけないのも、私たち若者なのだと思った。
(1回 A.M.)

私は学生生活を終えたら、一日でも早く自立したい。特に「経済的」にである。
「子どもに対する親の優位を保つために、ある程度子どもを経済的依存の状態にしておく。」このような状態からは早く抜け出すべきだ。「子どもの経済的自立を促進する教育と、自立を遅らせ親の統制を維持し子どもをしつけるのと、どちらが適切か親の心は揺れ動く。」子どものためには自立を促進させることの方が適切であるのは明らかではないのだろうか。親は子どもより先に死ぬ。いつまでも面倒は見ていられないのだ。
「働いている子どもが、親のために家計を助けるのは当然という考え方に約七割の親が否定している」ことに衝撃を受けた。「親が許す」から子どもはなかなか大人になれないのだ。
若者に社会に参加するチャンスを持たせること、生きていく力を持たせることが社会に求められている。しかし、若者も自分で自立への道を切り開いていかなければならない。 そのためには、多少の若者バッシングも必要だ。
(3回 M.H.)