天理大学 生涯教育専攻 課題図書
小塩 隆士『高校生のための経済学入門 』
ちくま新書 / 2002年 / 221頁 / \700 / ISBN:4480059369
●おしお・たかし●
1960年京都府生まれ。東京大学教養学部卒。同年、経済企画庁入庁。その後、J.P.モルガン等を経て、現在、東京学芸大学教育学部助教授。専門の社会保障について研究を続けるかたわら、初学者が経済および経済学への関心をより高めるような入門書も著している
著書:
はじめに ― 過去に目を閉ざしてはならない
1 開国・維新と教育
2 近代化の推進と教育勅語体制
3 軍国主義への加速する試み
4 戦後教育改革
5 教育の保守化と高度経済成長
おわりに ― 柔軟な心を
学生の感想文(4)
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この本は真実を書いている。巷にあふれるキャッチコピーをひと目見れば(聞けば)ある商品を売り込む時に、耳あたりのいいことしか聞こえないのは周知の事実。「年金制度については、どんな世代の世代をハッピーにすることはできません」「現代世代との利害が対立している、そうした冷徹な構図を浮き彫りにしてしまうのも経済学なのです。」良薬口に苦し。「自分にとってどうすれば最もハッピーになれるか、なれる度合いを効用という。」ところどころに、分かりやすく文学的な文章も見られる。あとがきの終わりにでは経済に興味を持ってもらえれば嬉しいが、高校生はそれより勉学に励むべきとのべるなど、客観的にしあがっている。ふむ、じつに良書本。
(1回 T.K.)
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私は、元々経済に関してはどちらかというと関心のないほうだった。経済関係の話にしてもテレビのニュースで流れる、今でいうと不景気の問題などがまさにその主たる問題であるが、その上辺の知識程度しか持ち合わせてなかった。
だが、いざ読んでみたらなかなか経済学は興味深い。競争なんてしないでみんな仲良く協調していこうなどという一般社会の奇麗事だけでは済まされないメリットを含んだ市場メカニズムのシステム性と、与えられた価格を前提とし家計と企業が互いの効用、利潤を最大化を目指すことによる需要と供給の一致、景気の良し悪しの循環などがまさにアダム・スミスが「国富論」で主張した「見えざる手」のように経済の仕組みが理論的に因果関係を含んだバランスによって行われているのを知ったことはとても不思議でありまたシステムの美しさを感じた。
(1回 M.T.)
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ミクロ経済、マクロ経済、公定歩合、売りオペレーション、買いオペレーション、不良債権などの経済用語を聞くと、「経済学=難しい、遠いこと」というイメージをもっていた。しかし、この本を読んでみると、給料をもらうこと、会社の利益をあげること、家計のやりくり、消費税、リストラなど、身近なできごとを例にあげ、生活していく中で関わっていることだと知った。
例のなかで、1箱250円のタバコの場合、税金(たばこ税および消費税)が153.34円だという話が印象的だった。タバコの売値のうち6割以上が税金ということになる。ビールの場合は売値の4割強が税金だという。タバコは身体に害を及ぼすのだから世の中からなくなればいいのに…と思っていたが、タバコにかわって税金をかけるものがないので、世の中から完全になくすことはできないなぁと少し悲しくなった。
(3回 R.A.)
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本書は経済学の入門書であり経済の基本原理を分かりやすく解説している。
したがって、内容は客観的で中立的なものであるかにみえる。しかし、経済学の原理原則
から、短期、長期の経済予測、ましてや将来世代にいたる見通しになると、ある程度経済
評論家的な描写が不可欠になってくる。この点において著者は、これから社会に育ってい
こうとする高校生に向かって、なるべく偏見を持たないよう表現に配慮しているかにみえ
る。しかしながら、最後の第6章、「税金と財政のあり方を考える」になると現実的な、
状況がちょっと辛口にもなり、かつ表現しきれない経済、政治的問題がいっぱいありそう
なニュアンスが行間から垣間見えるような気がします。
経済学が自然科学の法則のようにはいかないけれど、基本的な原理と社会の現状を知った
上で、日常入ってくる情報を判断しその本質を見抜き、批判する力を養うべきではないか
このように思います。
(2回 T.I.)
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