天理大学 生涯教育専攻 課題図書
汐見 稔幸『親子ストレス―少子社会の「育ちと育て」を考える 』
平凡社新書 / 2000年 / 222頁 / \660 / ISBN:4004203635
●しおみ・のりゆき●
著書:
第1章 少子化問題と教育―生命を生み、つなげることの意味を問う
(少子化問題の深層を探る;子育て観はどう変わったか;「生命のつながり」という哲学)
第2章 育てのストレス―なぜ、親がわが子を虐待するようになったのか
(育児が抑圧へと変わるとき;「育て」のための豊かな「育ち」とは)
第3章 育ちのストレス―自分を好きになれない子どもたち
(引きこもる若者たち;子どもの自己評価)
第4章 少子化克服への道―世直しの倫理と論理
(文明社会のニヒリズムは克服できるか;育児支援の新たな思想づくり;競争社会のアイデンティティと性)
学生の感想文(7)
*
「親子ストレス」は家庭内に何らかの問題(たとえば金銭面など)が一番の原因にあるからだと思っていたから、まさか元をたどれば現代文明の中、特に少子化までも関係していたなんて思ってもいなかったので驚きだった。
親のストレスは結構想像できてはいたのだが、子のストレスについてはたぶん友達関係ぐらいだと思っていたので、よい子であること、ありつづけることを極端に意識しすぎている子がこんなに多くいるとは思ってなかった。あと優しい暴力っていう言葉に子育ての難しさが伝わってきた気がした。
今まで、少子化という問題についてそれほど興味がなかったのだが、考えさせられ、意識づいてきたと思う。
でも、私がこの本で一番教えられたことは、「精神的にマイナス状態にある人に正論をぶつのはその人に対するいじめに等しい」という言葉に、私は人がそういう状態にあるときいじめてなかったかを思いなおさせてくれ、これからも気をつけようと心がけるきっかけになったことだった。
(2回 K.W.)
*
特に面白かった永田えり子さんの「赤ちゃん工場」という論文でした。もはや生は自由な市場あり、自分の髪の毛一本でも誰かに盗まれ、売られる時代がくる。売られれば知らないうちに自分のクローンが作られ、自分の遺伝子を持った子どもが生まれていく。自己のプライバシーはどこまで守られていくのだろうか、恐ろしく思った。そうした時代のなかで、どうやって子どもを見て、育てていけば良いのか、生の観念は授かるものではなく、自在にコントロールしていくものなのか、時代の変化と共に生への観念も変わっていくのだろうか。そんな中だからこそ母性性の称揚に気づいていってほしい。
(3回 S.O.)
*
親の期待通りに適応した子ども、つまり、「よい子」。
私は、どちらかというと家で「よい子」になろうとしている方かもしれない。けれど、親の過干渉のせいとは思わない。過干渉というより、心配なんだと思う。ただ、自分自身が、干渉されていると感じ過ぎなんだと思う。あと、怒られるのも怒らせるのも嫌だからでもある。干渉がなければ、「よい子」になる必要もないのであって、親と子の距離が干渉か心配か捉え方が変わると思う。
でも、干渉は子を育てるものでもあると思うから、親が少しも干渉しないのも逆に問題である。
親子ストレスは、親子関係の深さが関わっているだろう。親子のバランスがうまくいってこそ、親子ストレスは、解消されていくんじゃないかと思う。
(2回 A.O.)
*
最近、当たり前のように親が子供に加える虐待、また若者による暴力、殺人事件がテレビや新聞で相次いで報道されているのを見ると、なんて残酷なんだろうと本当に悲しく思います。何故こんなにもたくさん起こるのかと日頃感じていたので、この「親子ストレス」という本に興味を持ち読み始めました。特に母親が自分の腹を痛めて産んだ我が子を虐待するのかと幼児虐待には関心がありました。この本には実際に虐待を加えてしまった親たちの実話いくつか書いてあり、親たちは決し子供が嫌いというわけではないのに様々の不安定な心理状況からこんなにも暴力を加えてしまう、それを私は悲しく感じました。たくさんの不安やストレスを母親が一人で抱えさせる、抱えようとするから、こうした事件が起こるのだと考えさせられました。育児を母親に任せないことはもちろん、もっと周りの支えが必要なんだと感じました。
(2回 Y.M.)
*
最近の少年犯罪、いじめ、ひきこもり、親による虐待など、今、日本の子育ては根本的に問い直されなければならない。著者は、これらの問題は「日本特有の"完璧さ"と効率性を求める歪みにある。"よい子""よい親"から解放されたとき、新しい家族観、生命観がみえてくる」と書かれている。とくに、日本の子どもたちが、自分に対して非常に厳しい評価をし、将来について暗い見通ししか持っていないことが、数カ国の子どもたちの比較を通して、はっきり指摘しているくだりがあると思う。こんな子どもたちを作っている、今の大人・親の責任は大変重大だと思った。
子供に「自己肯定感」「未来志向性」を作ってあげることがいかに大切かが説かれている。きっとこの辺に、今の日本の子どもたちをめぐる多くの問題の原因がありのだろうと思う。
(1回 S.I.)
*
私は親子虐待についてすごく興味を持っていました。最近でもよくニュースで取り上げられえています。子供をいじめたいわけでもないのに、いらだちやストレスから、つい子供を虐待してしまう。心の中では、悪いことだと思っていても気づいたら手を上げていた。そういう、現実をもとにした声を聞いて書かれた本の内容には凄く衝撃をうけました。実際、本を読むまでなんてひどい親なんだと思っていました。一方的に親が悪いと考えていました。でも、虐待している自分をやめたいと思っているのにやめられない。という悩みもそこには存在しているのだと、初めて気づきました。ストレスを溜め込むのは実際よくないだろうと感じます。ただ、普通に生活をしているだけでもストレスを感じてイライラしてしまうときがあるのですから、相当なストレスがかかっているのだと思います。ストレスを感じないというのは無理かも知れないけれど、少しでもストレスを感じない方法はないものかと考えてしまいました。
(2回 E.F.)
*
テレビや新聞などで最近よく虐待という文字を目にするようになりました。その内容は年々ひどいものになっているような気がします。虐待する人の心理なんて、ただ単に、「ノイローゼでおかしくなってしまったとか、子供が嫌いだから」くらいにしか考えた事がなかったのですが、読んでいくうちに、虐待をしていた母親の体験談によると実際子供が嫌いというわけでもないし、「普通」の母親ばかりでした。つまりそれほどまでに育児が抑圧へと変わり、結果虐待というものにまで至ってしまっている。
このような、育児ストレスが社会問題になっている現在、少しでもストレスを解消していく必要があると思います。実際母親が外の世界に出ることで、人間関係も広がり子供への八つ当たりも減ると思うし、母親にまかせっきりではなく父親も子育てを手伝うようにしていく必要があると思いました。
(2回 A.Y.)
*