天理大学 生涯教育専攻 課題図書
鈴木 晶 『グリム童話』
講談社現代新書() / 1991年 / 214頁 / \660 / ISBN:4061490346
●すずき しょう●
1952年東京生まれ。東京大学文学部露文学科卒。現在、法政大学国際文化学部教授。専攻は文学批評、精神分析学、舞踊史など
著書:『バレエへの招待』(筑摩書房)、『「精神分析入門」を読む』(NHKライブラリー)など。
第1章 グリム童話とは何か
第2章 メルヘン学入門
第3章 グリム童話をめぐる神話
第4章 グリム童話の面白さ
学生の感想文(7)
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この本を読んで、思ったことは性的表現はとにかく削るけど、残虐性は残すっていうのがおもしろかった。子供向けの童話だし、分からんでもないが若干やりすぎかなというのが正直な感想である。残虐性は教育意図のために残したのだろうが、実際グリムの思惑どうりに子供がグリム童話を読んで「こんなことをすればこんな目に遭うからやめておこう。」と思ったのかは疑問である。自分の幼少時代を思い出しても結構子供は残酷好きである。だから残酷なシーンを読んだとしても子供は単純に楽しんでいるだけだと思う。
グリム童話を別の視点から見れておもしろかったが、研究や分析なんてせずに単純に楽しんだほうがいいと思う。たしかにグリム童話を研究して得たものはあっただろうが失ったものも多いと思う。
(2回 K.M.)
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私は、メルヘンとは空想の世界のお話だと思っていたが、本文の「物語の発端となる状況はきわめて現実的」という言葉を受けて改めて知っている話を思い浮かべてみると、なるほど、確かに当時の時代背景を垣間見ることができる。その他にも、グリム兄弟によるメルヘンの書き換えの意味や、どのように書き換えていったかなど、新しい"面白さ"を知ることができた。メルヘンを書き換えていたことに対する批判の声もあるようだが、それほどまでにグリム兄弟が盛り込みたかったイデオロギー、ドイツ民族の統一にかける情熱には感心する。また、仲の良い兄弟であったからこそお互いの存在が支えとなり、偉業を成し遂げることができたのだろう。機会があれば、グリム兄弟の伝記も読んでみたいと思う。
(2回 Y.N.)
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今までは、グリム童話だと思っていた話が、実際には昔話や創作童話だったと初めて知った。
多くの学者たちが、グリム童話の分析などを行っているが、別に、分析などしなくてもいいのではないかと思う。分析をすれば知らなくていい真実を知り、今までどおりに楽しむことができなくなりそうだからだ。そのため、ユング派やフロイト派による分析もあまり重要ではないと思った。子どもはただ、楽しい童話を聞きたいだけで、童話による悪影響は大人たちの考えすぎだと思う。
この本を読むことによって、今までとは違った視点からグリム童話を読むことができそうだ。本のタイトルで決めたので思っていた内容とは違ったけれど「すごい」と思う場面が多くあり面白かった。また、グリム童話を読む機会があれば、この本で読んだことを思い出して読んでみたいと思う。
(2回 K.H.)
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私はメルヘンと聞いたら、みんなが幸せそうに暮らしていて、動物も話せるような感じのイメージでした。グリム童話に関しても以前に流行っていた『本当は恐ろしいグリム童話』で暴力と残虐なシーンがあると知っていて、「昔から口伝てに継承された話」という観念は持っていませんでした。この本で面白いと思ったのは、「批評家たちやメルヘンを採取していた人たちには、『グリム童話』の文体が、民族の間で語られているものとは違っていることがわかったはずであるのに、脚色についての批判はない。」というところで、『グリム童話』をゲルマン民族の文化遺産と考えたいという願望がはたらくと、真実を診ないようにしようという空気が流れていたのかなと思いました。現在でも、私たちは日々の生活に追われているということを理由に、解決しなければいけないことをなんとなく見ないようにしているところがあると思います。
(2回 J.H.)
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彼らがグリム童話を作る際にかなりの嘘を含んでいたということが本書の大きなテーマの一つとなっていました。例え家族を養うためとはいえそのように嘘をついてまで出版したということは学者としては許されざる行為だと現代に生きる自分としてはそう感じます。
しかしながら彼らの極貧の状態でも学問(ゲルマン民族文化の確立)に対する熱意はとても感銘を受けたし、彼らの作った童話の一部が今も愛されていることも事実としてはとても素晴らしいことだと思いました。
彼らが貧しさの中でもなぜ学問(ゲルマン民族文化の確立)に対する意欲を失わなかったのかは本書には出てきませんでしたが彼らの兄弟愛、そして貧しい身の上だからこそ熱意を失わずに生きてゆけたのだと感じました。
本の中にある残虐性や意味のない暴力が教育的な意味合いは持たないだろうしかしながらそれをつづっている言葉使いの美しさはあまり文才のない自分でも感銘を受けるものがありました。金儲けのためとはいえ彼らの才能を十分に生かされたこの童話がこれからも愛され続けてゆくだろうと彼らの生き方も含めて感じました。
(3回 S.K.)
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私は、グリム童話を、昔は少しは読んでいたようですが、今はほとんど読むこともなく、話もぼんやりとは覚えているという程度でした。今回この本を読んで、懐かしいと思う一方、原稿・初版・第二版などと書き換えられていく話を読めて大変おもしろかったです。
グリム(ビィルヘルム)が、メルヘンをブルジョワ階級の家庭、子どもにふさわしいように話を書き換えていたようなのですが、性的なほのめかしにたいしては、かなり厳しく見ている割に、人肉食とか、血みどろ、手足の切断などの場面には寛大であった。これはグリム時代全体が残虐性に許容していたからである。時代とともに許容度というものも変化していくが、当時は子どもに対してもこのような残虐性を表現することが平気であったかと思うと少し怖いなと思いました。
(3回 A.Y.)
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最近、「グリム童話は残酷だ。」というようなことをよく耳にするので、グリム童話はただ残酷な話なんだと思ってあまり良いイメージを持っていませんでしたが、この本を読んでグリム兄弟からの様々なメッセージが盛り込まれているのだと知り驚き、印象が変わりました。しかし、良いことだけでなく悪い印象も与えてくれました。それは、ここでの女性の扱われ方です。「しゃべる女は悪い」とか「女は黙っておとなしくしているべきだ」と女性は受動的であるべきだと言われていて、それだけでなく女性は「褒美」・「賞品」であるとまで言われていました。少し悲しいし、怒りも覚えました。でも、ただ普通にグリム童話を読んだだけではこのようなことに気付かなかったと思う。この童話は子どもに何を伝えたかったのかと思うし、この童話は奥が深いと思うから伝えたいことが子どもに理解できるのだろうかと思いました。
(2回 H.M.)
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