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#240/300 本会議場  市民の討論広場 メイン会場
★タイトル (********)  01/12/29(Sat.)  21:25  ( 82)
ヨーロッパ人の肖像     一久
★内容
ヨーロッパ人の肖像


オルテガの「大衆の反逆」を読んでいて、ふとなにかに似ているような気がした。

内容がではなくて、オルテガの考え方、特に、ヨーロッパの優越性に対する根拠
のない自信の持ち方についてである。

そう、あのヒットラーに似ているのだ。

同じような感覚は、オルテガだけではなく、ヘーゲルにもトインビーにもマックス
ウェーバーにも見受けられる。おそらくは、ほとんどの欧米白人が共有している感
覚なのであろう。

ヒットラーが特殊な存在なのではなくて、ヒットラーは欧米白人の隠された感覚を
雄弁に表現しただけなのである。つまり、ヒットラーとは、最も正直なヨーロッパ
人であるということなのだ。

言い換えれば、ヨーロッパ人は皆、ヒットラー的なものを心底に持っている。

それだけではなく、ヨーロッパに滞在した非ヨーロッパ人もまた、この種のヒット
ラー的な考えを無意識的に吸収してしまう。

それゆえに、世間には、日本人でありながら日本文化の独創性を認めようとしない
人や、燐国人でありながら、ヨーロッパの視点からしか日本を見ることのできない
韓国人も少なくないのである。

彼ら、ヒットラー的な人々が掲げる、貧弱な根拠とは、ひとことで言うと、ヨーロ
ッパだけが自前の発展を遂げた、という点である。

その他の文明は、他からの影響を受けなくなった時点で停滞する、というのだ。だ
から、日本もまた、そうなるのだ、という。

そして、(ヒットラーは別にして)そうなる原因は、自由を尊ぶ精神にある、とする。

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このような論に比べれば、戦後すぐの日本で提唱された、梅棹忠夫氏の「文明の生態
史觀」のほうが、よほど優れているように思える。

この論の要旨は、高度近代文明を築くのは、原始文明の恩赦の届く地域で、かつ、騎
馬民族などの略奪勢力から離れた距離にある地域で、そのうえ、食料生産に適度な労
働を要する地域であり、それは、西ヨーロッパと、日本以外にはなかった、というも
のである。

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それはともかくとして、私はヨーロッパもまた、独自に発展したのではなく、常に多
からの刺激を受けていたのだ、と思っている。つまり、この時点で、ヒットラー的な
考え方を否定してしまっている。

では、なぜ、ヨーロッパは世界を席巻したのか。それは、「隣の芝生は青く見える」
からである。

後進地帯であったヨーロッパには、見習うべき他文明がいっぱいあった。イスラム、
中国、インド、あるいは、過去のギリシャ・ローマ。

それらの先進地域に追いつこうとするあまり、師匠の国以上のものを作ってしまった
のである。

日本のタクシーには、自動ドアがついているが、あれもまた、同様の心理が生んだシ
ロモノである。日本人は、ヨーロッパに行って自動ドアがついていないことを知って、
はじめてヨーロッパはそこまで進んでいなかったということを知るのである。

ヨーロッパの幸運は、たまたまその時期が産業革命の時代と重なっていたということ
である。自動ドアぐらいで出遅れても、大した問題はないが、蒸気機関が進歩する時
期に出遅れたならば、遅れを取り戻すことは容易ではない。

さて、そのヨーロッパも、自分たちが世界のトップに立ったと自覚したとたんに停滞
を始める。そしてアメリカに追い抜かれることになる。

オルテガの自信とは裏腹に、ヨーロッパはアメリカに屈伏した。

その後のヨーロッパがなんとか盛り返しているのは、アメリカを新たな先進地帯であ
ると認め、ふたたび、隣の芝生を青く見ることを始めたからである。

つまり、オルテガが批判した人々こそが、ヨーロッパを再生しているのである。

それがなにより証拠には、オルテガの賛同したヨーロッパ共同体構想が最も進展した
のは、アメリカの優位が決定的となった第二次世界大戦後と、日本の経済力が世界を
席巻した1980年代後半だった。



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