メキシコ レイク バカラック 釣行記 ’96.12.29〜’97.1.5
フロリダから帰国して、普段の日常生活を送っていると、ある日突然それは私の前に現れた。バス専門誌バザーに載っていたメキシコ・レイク・バカラックの記事、そしてページを飾る写真達。その場は「いいな〜」としか思わなかったが、数日後、市川にあるバスメイトを訪れた時、そこに張り出してあったメキシコの記事に心を打たれた。この時は10ポンドなど、どうでもよかった。ただ、50センチオーバーが釣りたかった私は徳永兼三さんにバカラックの話をうかがった。それによると、50センチオーバーなどやでも釣れると言われ、この時に心がきまった。すぐにツアーに申し込み、この後デストロイヤーのF6−69Xを購入し、きたるべき日にそなえた。
12月29日、遂に出発の朝を迎えた。緊張と興奮の中成田空港まで行くと、徳永兼三さんが出迎えてくれた。学生の頃、学校が蒲田にあったので、良くバスメイトの蒲田に通っており、徳永さんが作ったバスメイトのオリジナルビデオを見てバスフィッシングを覚えた私は、徳永さんに憧れていた。その人と一緒に食事ができ、釣りの話もできたので、今回の旅は幸先の良いスタートだと思った。
日本を出国したのは、午後4時50分で約9時間のフライトで中継地点のロサンゼルスに到着した。だが、着いたのが現地時間の29日午前8時、この時点で1日戻ってしまっている為、時差ボケになった。この日の午後にサンタモニカへ買い物へ行き、この日はロスで一泊し翌朝のメキシコへの出発に備えた。
翌30日午前8時過ぎの便でいざメキシコへ。まずはメキシコのティファナまで行き、ここで税関と入国審査を済ませ再び乗ってきた飛行機に乗り、お昼過ぎにロスモーチェス空港に到着した。ここから、セスナに乗り換え30分ほどの空の旅を楽しもうかという時、パイロットの様子が少し変になった。言葉は全然分からないが、その仕草が何かおかしい。どうやらエンジンがかからないらしい。私たちはセスナから降ろされ、もう一機のセスナを見送った。それから車で市内を30分ほど走り、民間の空港でセスナに乗り、日本から2日半もかかる長い旅の末、やっと目的地のレイク・バカラックに到着した。そして、この日は食事とタックルの用意だけして明日に備えた。
1日目
31日午前4時に起きる。身支度を済ませ5時に食事を取り、5時半にホテルを出発した。車で揺られること20分程で、湖畔に到着した。辺りは冷えて静まりかり、空を見上げるとそこには満天に映る星々、そしてその中心に有る北斗七星が私たちを出迎えてくれた。早速ボートに分乗した。私とパートナーの村野さんには、オゴという現地のガイトが4日間付くことが決まった。まだ空が暗いうちに出船した。48馬力のエンジンは冷え切った、それでいて心地よい風を私に与えてくれ、星と風を感じていると湖を囲んでいる山々の間から太陽が昇ってくる。これが4日間変わらぬレイク・バカラックの夜明けだった。そして辺りが明るくなる頃、ようやくポイントに到着した。
私のレイク・バカラックでの記念すべき第1投目に、ゲーリーヤマモトの10インチグラブを選んだ。そして、ほんの数投で初バイトがきた。渾身の力でフッキング、だがその瞬間のあまりの衝撃でロッドが手から離れ、水中へ消えて行った。頭が真っ白になり何が起こったか分からなかったが、手元にかろうじてラインが残っておりロッドを水中から引き上げ素早くリールを巻いた。幸運な事にバスはバレてなかった。そこには今までに感じた事のない重量感が有り、数秒のやり取りの末ネットに収まったバスは生涯で初の50センチオーバーの55センチのフロリダバスだった。いきなり55が出たので、この1匹でこの湖の凄さを感じ、そして何本か釣った2時間後の午前8時半に今回の長さで最高の59センチ・6ポンド2オンスのバスを釣り上げた。その後は、ぽつり、ぽつりとなり目立った大物が釣れることなく初日を終えた。
初日の結果・・・55.47.44.59.45.43.52.52.52.48センチ 釣った順です
2日目
1月1日、午前中はゲーリーヤマモト氏と一緒にゲーリーさんのバスボートで釣りを教えてもらった。今年のツアーでは1人1回ずつゲーリーさんと同船し、レクチャーを受ける事になっていた為だ。朝一番で今回の旅の最重量の7ポンド13オンスをキャッチした。ゲーリーさんにちょっと厳しくグラブの釣りを教わり、午後は再びガイドのオゴさんのボートに乗った。緊張から解放された様な気分で午後はのびのびと釣りをした。夕方には再び7ポンドオーバーの7ポンド12オンスのバスを釣った。また、この日釣った最小の33センチのバスには、巨大なバスに噛まれた歯形が頭の後ろにくっきりと付いていた。恐るべし、レイク・バカラック。
2日目の釣果・・・45.42.37.33センチ.7lb13oz.6lb.7lb12oz 他5匹
3日目
1月2日の朝、この時点で8ポンドオーバーを釣ってないのは私の他に2人だけとなってしまい、3人揃って8ポンドオーバーを釣ろうと誓い、いつもの時間に出船した。朝、暗い内にガイドがトップウォータープラグを投げろと言うので、オリザラをキャストすると1投目で48センチがいきなり水面を割った。ここではトップウォータープラグに50オーバーのバスが平気で出る。日本ではまず考えられない出来事だ。
この日は余り数が出なかった。だが、その変わりに巨大なバスが出た・・・相棒に。午前中に10ポンドオーバーを取られ少しブルーが入っていた。その夕方、今度はさらにでかい12ポンドオーバーを横で釣られてしまった。全身から力が抜けちょっと落ち込んでしまった。明日こそ俺が釣ってやると思いつつ、笑顔でおめでとうと言った。結局、この日の私は50センチオーバーを2本含む6本だけで終わってしまった。
3日目の釣果・・・48.43.50.50.33.46センチ
4日目 最終日
最終日の1月3日は午前中だけの釣りで、午後には飛行機に乗ってアメリカに向かうことになっている。今日は相棒がゲーリーさんと乗る為、今回のツアーに同行してくれた同じ名字の伊藤さんと同船となった。いつもと同じように暗い内にボートに乗り、ポイントに移動した。この間、ずっと夜空を見ていた。そこには河口湖で見た以上の星々が輝いていた。この3日間は星を見る余裕すらなかった様な気がした。ここで、この旅での初の流れ星を見た。幾つも幾つも星が流れ、明るくなり始めた頃、真上の北斗七星を星が横切った。まるでさよならを言っているかの様に感じた。少しロノンチストになりながら、ずっと北斗七星を見ていた。やがて明るくなり、北斗七星に別れを告げ、気合いを引き締め最後の釣りにのぞんだ。だが、キャストしていても何故か気持ちが上の空だった。もう、これで終わりなんだなーと。バスはそこそこ釣れた。もう、バスの歯で指の皮がボロボロになっていた。その痛みがレイク・バカラックで釣りをしたんだと実感させてくれていた。釣りが終わる頃には、肩も痛くて上がらないほだった。
ゆっくりと感じられた時間の中で私はこの世界一素晴らしい湖に別れを告げた。あまりに遠い所なので再会の約束もせずに別れを告げた。この旅は本当に素晴らしい旅だった。あまりに素晴らしい湖だったので帰国後に日本とのギャップの差に苦しんだ。
最終日の釣果・・・42.45.46.40.44.50センチ