What's Shadowrun?
What's "Shadowrun"?

注:このページの主なテキストは1998年頃の時点のものです。

 『シャドウラン』は、米国FASA Corporationから発売されたサイバーパンクRPGです。予想以上の人気から、後にSecond Editionも登場しました(日本に翻訳されたのはこちらです)。

 舞台は21世紀のもう一つの未来。魔法が復活し、世界に伝説上の存在が帰ってきました。激動の時代に国家は疲弊し、代わりに巨大多国籍企業が世界を動かす程の力を持つようになります(しかもほとんど日本企業!)。科学技術は飛躍的に発達し、世界を一つに結ぶコンピュータ・ネットワークや人体改造があたりまえの時代になります。
 そんな2050年代、法律に縛られず、非合法の仕事を影で請け負う一群の男女がいました。限界まで体をサイバー化したサムライや、復活した魔法の力を振るうメイジやシャーマン。電脳空間(マトリックス)を疾走するデッカーや、自分の思念で車両を操るリガーたち。傭兵や私立探偵、果てはロック歌手までいます。あるいは、エルフ、ドワーフ、オーク、トロールといったメタヒューマンたちも。

Shadowrun Second Edition
Neo Anarchists' Guide To Real Life

 システム照合番号(S I N)を持たない彼らはいかなるデータベース上にも存在しません。“仕 事”(シャドウラン)をこなすとき、彼らは大都市の夜を疾走します。いつしか彼らの存在は一種の都市伝説として、こう囁かれるようになりました――そう、“シャドウランナー”と。

 システムの方もなかなか本格的です。行為判定は目標値を決定した後、能力値や技能の値だけ6面ダイスを振り、目標値以上がいくつ出たかで成功数を計る・…という一風変わったもので、戦闘や魔法、カーチェイスやマトリックスなど様々な場面で末永く遊べるようになっています。追加ルールやデータの量が多いので、簡単なRPGのお好きな方は最初は戸惑うかも知れません。

 『ニューロマンサー』をはじめとするウィリアム・ギブスンの諸作品、あるいは映画『ブレードランナー』の持つ正統派の“サイバーパンク”な雰囲気を継承し、そこにファンタジーの要素をうまく融合させたこのゲームはアメリカでも高く評価され、現在まで根強い人気を保っています。
 サイバーパンクに欠かせない武器やサイバーウェア、車両などのガジェット類のカタログ、魔法や電脳世界などの追加ルール、謎が深まるばかりの第六世界を解説した奥深い世界設定集の数々‥‥など、サプリメント類も続々と登場しました。
 初版の舞台は西暦2050年、2版は2052年くらい〜が舞台となり(どうも、現実世界のほぼ60年後にしているようです)、ゲーム内世界と現実世界で年代が進む毎に、(サプリメントも出て)テクノロジーもどんどん暴走していきます。現在まで、サプリメントは20冊以上出ています。

Virtual Realities 2.0
Shadowrun Third Edition

 その後はShadowrun The Trading Card Gameというトレーディング・カードゲームにもなり、1998年は舞台を2060年代にし、追加ルールを統合したShadowrun Third Editionも登場しました。随所にマニア心をくすぐる所があってベテラン層に人気でもあり、インターネット上でも様々な方のページで英語版の紹介がなされています。
(ここまできて言うのもなんですが、シャドウランの魅力は一言ではとても言い尽くせません。ぜひ、そうした方のページをご覧ください。日本のTRPG総覧の『シャドウラン情報倉庫』へはこちらから。)

 日本では1995年、かのグループSNEの翻訳で富士見書房から翻訳されました。こちらは、サポート紙が『ドラゴンマガジン』や『RPGドラゴン』ということから、また、『富士見ファンタジア文庫』等で育ち、『ソード・ワールドRPG』等のスタンダードなRPGをメインにしているリプレイ世代のティーンエイジャー層が主なターゲットである、ということから、原作の持つハードな雰囲気とはやや趣の異なったものになっています。舞台も西暦2050年で時が止まっています。(というより、年代がどうのというほど細かい設定は出てきません。)
 英語版に慣れ親しんだ人の中には、翻訳に誤りが多い、オリジナルの日本(東京)の設定が貧弱/英語版と食い違う点が多過ぎる、サイバーパンクの魂をなくした良い子のゲーム(笑)になっている‥‥などなどといった声も聞かれます。
(これについては賛否両論ありますし、勿論、売り手側には売り手側の事情があります。それに日本人とアメリカ人では感性が違うというのもあります。本ページの目的は『シャドウランの魅力を伝える』ことなので、それについては触れません。詳しくはその筋のページをどうぞ)。
 いずれにせよ、このような本格派RPGが日本でも紹介された意義は大きいのではないのでしょうか。出版界でのTRPGが下火になり、残念なことにFASA社が2001年に業務停止してしまった今、3rd Editionの日本語訳発売は考えられませんが、Web上でも熱心なファンのサポートはまだ続いています。

 というわけで! この『RI財団のシャドウランページ』では、全18章からなる大作シャドウラン・リプレイ『While The Earth Sleeps 〜大地の眠る間に〜』を掲載しています。筆者が大学時代に行ったキャンペーンの最終話を元にして書いたものを、Web上に復活させたものです。
 舞台は西暦2056年の新日本帝国、クリスマス前夜の東京スプロール。日本語版の設定を使ってはいますが、豊富な英語版資料を導入しています。(オリジナルの要素も入っています。) 小説風の描写や、ゲーム内(外?)世界の人々の呟きも多数含め、読み物として楽しめるようにしました。
 ばりばりシャドウランナーの貴方も、未経験の貴方も、「舞台はシアトルに限るぜ、チャマー」と浸っている貴方も、「私、リプレイのファンなんです〜」な貴方も(ってなんだそりゃ/笑)、記念にぜひ、御一読ください!

 なお、前述の通り当サイトのコンテンツの目的は『シャドウランの魅力を伝える』ためのものです。お分かりのこととは思いますが、『当サイトに書いてあることが正しいのだ』あるいは『英語版のSHADOWRUN/日本語版シャドウランどちらのプレイスタイルが正しい』といった類の主張は持ちあわせておりません。どうしてもご理解いただけない程度の低い方がごくごくたまにいるので明記しておきます。
 そして、皆さんが皆さん自身の手で、皆さんだけの素晴らしいシャドウランをプレイなさることを、心から願っています。



[追記] そして‥‥時は過ぎました。
 現実世界で90年代後半は日本での展開シリーズが97年に終了した後もファンサイドでシャドウランは遊ばれており、同人界でも固定サークルがあり、日本のネット上でもサイトは幾つか存在しました。同時にネット黎明期のこの時代はまだITリテラシーが確立されておらず、日本語版の悪口や互いの中傷、シアトル派vs東京派の両派閥の存在などがありました。
 そして、2001年にFASA社が営業停止、WizKids社が所有権を買収し、3rd Editionの展開は欧米では続行するも、日本では全てが停止。一部の熱心なファンは遊び続けたものの、ほとんど過去のゲームと化していきました。既にサイバーパンクのブームは去り、近未来ものであればシャドウランを受け継ぎ、より遊びやすく進化した国産TRPGが存在します。
 シャドウランは、ゲーム歴の長い古参ゲーマーが不朽の名作や懐かしい作品として上げるゲーム、サークルの先輩が知っているゲーム、サイコロの代わりにトランプを使う国産サイバーパンクRPGで、日本上空の発電衛星やアメリカ大統領にドラゴンがいる、等の設定の元ネタとして、偉大な先輩として紹介されるゲームになっていったのです。
 当サイトでも、他のTRPGシステムにより人気があったこと、リソースを集中する必要があったことなどから、好きな方々には申し訳ありませんがシャドウランのセクションはWeb上にコンテンツは残しているものの更新停止、事実上の開店休業状態が続いていました。

 そして‥‥日本のTRPG界もネットの世界も大きく変わった後。2005年に4th Editionが発売、2006年に日本語翻訳が決定。2007年春に、いよいよ日本語版が登場します。
 グループSNEに代わりSR4を担当するのは、1stの頃から熱心なファンとしても知られていたスザク・ゲームズの朱鷺田祐介氏。
 十年の時を経て、シャドウランは最も愛するデザイナーの手でよみがえるのです。

Shadowrun 4th Edition
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