Mcintosh MX110 チューナ・プリアンプの紹介


製作の記事ではありませんが,最近、以前からほしかったマッキントッシュの真空管式FMチューナを入手しましたので、その使用した感想などをリポートしました。


MX110のフロントビュー

最近、以前からほしかったマッキントッシュの真空管式FMチューナを入手することが出来ました。MX110という型式で、前期、中期、後期と3タイプあるなかの、後期型のものが入手できました。MX110は、FMチューナとプリアンプが一緒になった機種です。マッキントッシュの製品の経緯から見ると、FMチューナとプリアンプをドッキングさせた最初の機種のようです。ただし真空管を使ったタイプはこれが最初で最後です。以降はトランジスタ式に代わっています。真空管式のFMチューナとしては、同時期ではMR67やMR71といった機種がありますが、パネルデザインとしては、シンメトリックなMX110のほうが好きです。有名なプリアンプC22を思わせるデザインで大変気にいっています。同社のねらいとしては、C22とMR67またはMR71の機能をドッキングしてコストパフォーマンスを謳ったものなのでしょう。回路図(アメリカのサービスマニュアルを販売しているところからpdfファイルとして購入)を見ると、ドッキングした最初の機種であって、FMチューナ部、プリアンプ部ともに回路的には手抜きはなく(省略したと思われる部分はなく)、単に電源を共有させた構成になっています。電源部共有といっても、ヒータ巻き線は別々になっていますし、B+も整流後のデカップリング部をチューナー部、プリ部とに別に設けています。

マッキントッシュのこの時期のデザインは、エレガントで、控えめで、力強く、高級感があり、車で言えば,メルセデスベンツのような風格が感じさせるものがあります(多少おおげさかもしれませんね)。
MX110の緒言をカタログから一部抜粋しました。発売時期は1962〜1969年で当時のリテール価格は$399(当時は$1=¥360でしたのので日本円では14万円くらいでしょうか。ちなみにC22は$279、マランツ#7は$285でした)でした。

MX110のFMチユーナー部から見たところ

FM SECTION: Tube. FM Stereo. Sensitivity 2.5uV. Response 20-20kHz within 1.0dB. Distortion less than 0.6%. Four IF stages. Two limiters. Separation 30dB. Hum -70dB.
PREAMPLIFIER SECTION: Response 20-20kHz (+0.5 -0.5dB) , Distortion 0.2%. Input sensitivity and impedance: aux: 0.3V at 200k, phono: 3mV at 47k, tape head: 3mV at 220k, tape monitor: 0.3V at 100k. Hum and noise: high level -80dB, low level less than 3uV. Tone controls: bass +16dB to -23dB, treble +18 to-18dB. LF filter 50Hz at 12dB/octave. HF filter 5kHz at 12dB/octave. Phase switch: 0 or 180..
FRONT PANEL: Glass panel at top. Anodized gold at bottom. Volume. Input selector: aux, mpx, fm, phono 1, phono 2, tape hd. Dual concentric bass and treble controls. Rocker switches: muting: in or out, filters: lf in or out, hf in or out, loud: in or out, tape monitor: in or out, phase: in or out. Balance, Power. Mode selector: l to l&r, r to l&r, stereo rev, stereo, mono l+r, l+r to l, l+r to r. Tuning knob. Illuminated dial. Electron ray tuning indicator. Mpx light. Panloc buttons.
BACK PANEL: Inputs: ph 2, ph 1 (xtal), ph 1 (mag), tape head, aux, tape monitor. Outputs: main, tape, l+r. Ground screw terminal. Fm antenna screw terminals: 300 or 75 ohm. AC outlets: 2 switched, 1 unswitched. Fuse. Panloc mounting.
TUBES: 6DS4, 2-12AT7, 6AB4, 3-6AU6, 6CS6, 6HU6/EM87, 6D10, 3-6U8, 12AU7, 3-12AX7, Solid state power supply.
Size: 5-7/16"H, 16"W and 13"D. Weight 27-1/2 lb.
Sold from 1962-1969. Last retail price $399.00
                   以上 マニュアルおよび紹介記事から抜粋

また、MX110のブロックダイアグラムを回路図から作成しましたので参照ください。

MX110のシャーシ(クロムメッキがすばらしい)

FMチューナ部は、6DS4(ニュービスタ)による高周波増幅、更に12AT7による高周波増幅とミクサ。局部発振は6AB4です。中間周波増幅は6AU6による3段(IFTは4段)とリミッタは6CS6。6HU6のマジックアイによる信号強度表示。12AU7によるミュート。MPXステレオ復調は、12AU7と6U8。
プリアンプ部は、12AX7によるイコライザと6D10によるカソードフォロア。6U8によるトーンコントロールアンプ。トーンコントロールは可変抵抗によるNF型です。FM部とプリアンプ部ともに、独立して使っても十分な装備です。

入手して、早速聴いてみました。スピーカーで聞かないでコンデンサヘッドホン(コンデンサ イヤ スピーカー)を通して聴いてみました。コンデンサヘッドホンはソースの質の良否がはっきりわかるからです。いいかげんなソースだと、直ぐアラが見えてきます。そういうわけで、ソースチェックなどにはいつもこのヘッドホンを使っています。
聴いた結果は、申し分ないすばらしい音質でした。アンテナをきちんとつなぎ十分なRF信号入力にしたので、MPXノイズもなく、実にすばらしい音質で聴くことができました。ダイアルを回して、ポップスやクラシックなどいろんな局のいろんなソースを聴いてみました。多少大げさですが、これがFMの放送かというくらい、その音の質のよさに驚きました。FM放送の帯域は20〜15000Hzですが、特に高域帯域の狭さをまったく感じません。むしろ自然なプロファイルで耳あたりのよさが高域の不足を目立たなくしているように聞こえます。コンデンサヘッドホンで、これだけの音質で鳴らせるのはすばらしいの一言です。いろんな局のアナウンサーやキャスターの声(女性、男性)をきいて、いつも車で聴いたり、CATVチューナのFMチャネルから聴く、おなじみの声が、改めて、彼は・彼女はこういう声だったんだなどの自分でうなづきながら時間の経つのを忘れて聴き入ってしまいました。

MX110のウッドキャビネットを外したところ

先ほど述べたようにMX110は、プリアンプも内蔵されています。プリを通してのFMソースとプリを通さないでのFMソースの違いも比べてみました。トーンコントロールのツマミをセンターにしても多少、特性がフラットでないことが影響しているようで、若干色づけされるようです。しかし音の質を落とすことは少しもありません。特に高域を若干持ち上げることにより、FMソースの高域不足を解消してくれます。C22より音質がいいという人もおられるようです。私はC22のアンプの音を聴いたことがありませんが、MX110を聴いた限りでは、まったく不満はありませんでした。それもFMソースでです。
製造されて30年以上たっているにもかかわらず、ボリウムのガリもなく、ロータリスイッチの接触不良もありません。真空管のコネクタもおそらくシンチ
のものだと思いますが、接触不良のない信頼性の高い部品が要所要所に使われています。現在でもまったく問題なく使うことが出来ます。マランツ#7やマッキントッシュのC22などの真空管プリアンプは、ヴィンデージ物で程度の良いものは数十万円もしている昨今ですが、このMX110は、リーズナブルな価格で売られています(といっても当時の新品価格程度とすこし高い気もしますが)。高級FMチューナと高級プリアンプが一緒になっていると考えると、とてもいい買い物だと思います。

次はLPなどのソースをこのEQアンプやプリアンプを通してコンデンサヘッドホンでチェックしてみたくなりました。
最後に、現代の使用においては、ちょっとした改善や工夫が必要と思われる点を挙げてみました。

(1) AFC回路がないので、周波数変動には敏感である。
   この点に関しては、AFC回路を追加改造、またはOSCの電圧をツェナーで定電圧化改造してみたいと
   思います。FMチューナ専用機MR71にはバリキャップを使ったAFCがついています。高周波部OSCも
   シールドケース内に収められ周波数ドリフトを押さえる対策がとられていますが、AFCはあったほうが更
   に安定した受信が出来るでしょう。
(2) 入力セレクタで、CDなどの高入力レベルのものがAUX 1個しかない。
   MMフォノやヘープヘッドなどの小信号レベルのものは充実しておりますが、CDやMDなどの高入力レ
   ベル用の入力端子が1個しかありません。外付けの拡張セレクタがあると便利です。
(3) プリアンプ部のバランスVRと音量VRが、プリの最終段についています。
   なぜかわかりませんが、通常は、プリの前段についているバランスボリュームと音量ボリュウム、最終
   段のカソードフォロアの後についています。フォノやAUXの入力レベル調整半固定VRが、パネル裏の
   本体内上面についているので、ひずみが生じないレベルに合わせておけば問題ないのですが
   VRのツマミ位置によって、負荷インピーダンスが変化するのは、ちょっと疑問をもってしまいます。
   この対策としては、入力インピーダンスの高いバッファアンプを入れるとよいと思います。カソードフォロア
   でもいいのですが、プリアンプ部の最終段がカソードフォロアなので、またその後にカソードフォロアを設
   けるのもへんなので、トランス出力のバッファアンプを設けたいと思います。

気が付いた点は以上です。特に変更が必須というのではありません。現状でも十分使えるチューナ・プリアンプだと思います。製造されて年代もだいぶたっています。したがって、コンデンサなど、時間とともに劣化が進み音質に影響与える部品は、新しいものに交換しようと思っています。


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