1.Junkノートパソコンの復活記(ThinkPad570の復活)


最近、企業で情報インフラとして使われていたと思われるIBMのノートパソコン(ThinkPad 570)をジャンクとして入手しました。BIOSパスワードがかけられているもので、起動時にパスワードを入力しないと前に進まないといったしろものでした。そのせいなのか、結構新しい機種で、外観もそこそこなものが中古相場よりも安い価格で購入できました。だめ元にするにはちょっと高かったんですが、「IBM社が、BIOSパスワードがかかっているだけで滅却しなければならないものを、最近のエコロジー活動が騒がれる中で、設計するわけがない。必ず解除できる方法があるはず。」と決め込んで買ってしまいました。
起動パスワードの解除については、保守マニュアルに記載されています(IBMのホームページからダウンロードできます)。が、BIOSパスワードは、いったんかけられると、システムボード交換しかないと謳われています。やっぱり解除不可なのでしょうか。

ThinkPad570のキーボードを外したところ

あれこれ想像をめぐらせながら、早速、解体です。BIOSパスワードは書き換え可能ということなので、不揮発性のメモリが使われているのだろうとあたりをつけてそれらしいデバイスを探します。その中で、目に止まったのが、シリアルEEPROMでした。実はこれにあたりをつけたのは、手持ちの他の機種(TP560X)を開腹してTP570と見比べてみました。この比較で、類似のデバイスでEEPROMをと探していたらこれしか残りませんでした。大当たりかも知れませんが、大外れかもしれません。間違っていたら振り出しに戻るだけなので、その先に進みます。
TP570に使われているシリアルEEPROMは、24RF08という、FLASHメモリタイプのEEPROMです。因みにTP560Xは、24C01Aです。これも容量は異なりますが同FLASHメモリタイプです。

キーボードを外した左手前にEEPROMがあります(写真は液晶側から見ています)

このメモリの中身を読取って解析をしたいんですが、さてどうして読むかです。一番簡単な方法は、プリント基板から取り外して、EPROMライタで読み取る方法です。ただ、これには大きなリスクが伴います。プリント基板に面実装されたSOPタイプのパッケージを、上手に外せるか、また、元に戻せるかといった問題です。結構小さいデバイスなので、下手に半田外しすると基板やデバイスのリードを壊してしまいそうです。この方法は最後の手段として他に方法はないか検討してみました。

シリアルEEPROMのデータシート(デバイスメーカのホームページからPDFファイルがダウンロードできます)をじっくり読みました。そうすると、このデバイス、プリント基板に実装された状態で外部からデータの内容が読めたり書けたりすることができることがわかりました。つまりISP(インシステムプログラミング)できるデバイスです。
これなら、プリント基板やデバイスにダメージを与えなくてもできます。単にICの端子にリード線を半田付けするだけで済みます。

早速この方法で進めてみることにしました。用意する信号は、シリアルデータ線、クロック線、GNDの3本だけです。電源Vccは、ThinkPad本体から供給します。
簡単なISPを製作するところからはじめました。以前電子工作で作ったMicrochipのPICプログラマやATMELのAMRプログラマを改造(若干の結線変更、とシリアルEEPROM.用のインターフェース)で済ませました。とりあえずリードだけできるようにしました。読み取りさえできれば、そのデータからパスワードを読み取って、それをパソコンの立ち上げ時に正規に入力すればOKだろうと考えたからです。簡単なインターフェースですので、30分足らずで完成です。
早速24RF08の各端子に3本のリード線を繋いで、内部データを読み取ってみました。にわか仕立てのシリアルEEPROMリーダからの結線を24RF08の端子に繋いだ後、ThinkPadの電源をONします。キードなどは結線してなくてもOKです。とりあえず、マザーボードに電源を供給し24RF08のVccが供給されれば良しです。しばらくしてPOST(ThinkPadの初期処理)が終了しただろうと思われる時間が経過してから、EEPROMリーダで外部からデータを読み取ります。
うまくいきました。それらしいデータが読み込まれています。それを確認して、データのセーブ、そしてThinkPadの電源をOffします。

EEPROMにリード線を半田付けしたところ

さあ、これからこのデータのどこにパスワードが格納されているのか調べます。ひょっとしてこの中にあるのかな、と疑問をもちながらの作業です。
データの中には、機種名や型式が見られます。それらはひと目で読めるコードで格納されていたので、今読んだデータはきちんと読めているのだと確信できました。しかし
肝心のパスワードらしきものが見当たりません。果たして、入っているのでしょうか。
それとも、暗号化されているのでしょうか。さっぱり解りませんでした。

読み取ったデータの内容(型式などが見える)

ここから、一部省略させてください。理由は、メーカでもBIOSパスワードの解除は対応していませんし、もし犯罪に使われたり、またそれを荷担するような行為はできませんのであしからず。

結論は、◎です。今回読み取ったデータの中のある領域に暗号化して格納されていることがわかりました。この結論にいたるまでには相当の期間がかかりました。どうやって解決したかは皆さんのご想像にお任せします。

ということで、ジャンク扱いで購入したThinkPad570は見事に復帰しました。
現在、自分の携帯用パソコンとして大活躍しています。その後同様のBIOSパスワードが設定されているThinkPadを数種類入手しました、それらも本解除方法で、復活できました。これらのThinkPadも家族や知人宅で現役として活躍しています。

本記事をこのホームページに掲載したのは、ゴミ(ジャンク扱い)往きのパソコンでも、少しでも活かせるなら、活かして物を大切に使いたいという趣旨からです。”ものあまり”の時代といわれていますが、資源の無駄使いを少しでも軽減して、よいものはいつまでも大切に使いたいものです。


注意)
ThinkPad:IBM社の登録商標
この記事をお読みになって、この内容を実施されて、お持ちのノートパソコンを壊したり復帰不可能な状態になっても当方は一切関知しません。ご自分の責任でお願いします。
また、ご自身の所有物であることがはっきりしているThinkPadで、ご自身が設定されたパスワードを忘れてしまったりして復帰できなくなった場合、ジャンクを入手されて復帰させたい場合など、ご相談に応じることもできます。その際はメールをください。
現在は、諸事情によりお引き受けしておりません。
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