外国人小学生いじめ・体罰事件

《はじめに》
 愛知県下で、アルゼンチン人の小学生(仮に「A君」とします。)がクラスメートからいじめを受けている事件があります。この事件には教師も加わり、教師からの体罰も絡んで複雑な事件に発展しています。


《事件の概要》

1.A君は、1990年、3歳の時に両親(いずれもアルゼンチン人)とともに来日しました。日常会話程度の日本語が何とかしゃべれる程度です。保育園のころからいじめが始まり、小学校に入学後も続きました。いじめには小学校の教師も加わり、1995年には、習字の教師が黒板に「64」と書き「この子はこれだ」と言ったためクラスの皆に笑われた、という事件もありました。

2.両親は1996年度の三学期に転校の希望を教育委員会に提出したものの、もう少し様子を見ようという話になりました。 そのような中で同年8月にA君が担任教師から顔面を殴られる等の体罰を受ける事件が発生したため両親が警察に被害を訴えたところ、小学校長から「500万円を出すから警察や他人に本件のことを話さないでほしい」旨の申し出があったそうです。
 にもかかわらず学校側は、両親の側から金銭の要求を出して来たかのように警察に説明し、警察からは両親に対して「どうして学校に500万円も要求するのか」との疑問が出されました。

3.A君は、この事件をきっかけに、教師に対する恐怖・不信・不安を抱き、そのことが原因で学校に行けない状態になり、転校の措置が一応とられたものの、不登校の状態が続きました。A君は、大勢の日本人によって一家が皆殺しにされる夢まで見るほど、恐怖に苛まれたのです。


《弁護団の結成とその活動》
1.この事件の解決を図るため、昨年10月に、名古屋弁護士会の「子どもの権利特別委員会」のメンバーが中心になって弁護団を結成し、「子どもの権利市民オンブズマン」や議員の応援も得て、教育委員会や小学校長との交渉活動を開始しました。 しかし、体罰報告書の内容や教師に対する処分について回答を拒否するなど、かたくなな態度を崩さないため、弁護団は個人情報の公開請求を行いました。今年2月になって県教委から非違行為報告書が公開されましたが、事実関係には弁護団の調査とはかなりの相違があります。弁護団では、これを踏まえて意見書を提出し、再度教育委員会と話し合おうと考えています。 なお、A君に体罰を加えた教師は訓告処分に付された(1997年1月20日付け朝日新聞朝刊記事より)他、傷害事件の被疑者として取り調べも受けているようです。

2.また、A君を励ますために弁護団が昨年末にクリスマスパーティーを企画したところ大きな反響があり、そこでは外国人差別の問題性も明らかになってきたのですが、A君は今年1月半ばにアルゼンチンに帰国してしまいました。帰国までに解決ができなかったのが残念でなりません。


《おわりに》
 本件の根底には、単なるいじめや体罰だけではなく、日本で働く外国人への根深い偏見 や差別が横たわっています。個人の人権保障のためには、本件の解決にとどまることなく 、より幅広い運動につなげて行くべきではないでしょうか。




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