ペディション初体験 VP5運用記

Report of VP5-Turks And Caicos Island DXvacation (1993 Sep.16th 〜 Sep.20th UTC)

 簡単ですがカリブ海に浮かぶ小島、タークス・アンド・カイコス島における VP5/JJ1BMB(OP.大湖)と、VP5/JM1GYQ(OP.岡本)の運用結果について報告致します。

フロリダからジェットで約1時間半   タークス・アンド・カイコス諸島

QSO総数
 現地時間で9月16日の夕方から運用を開始して9月20日の昼過ぎにQRTするまでに、10mから80mまでのHF帯と、サテライト(AO−13)からSSB/CW/RTTYでQRVした結果、2局で3,346 QSOをログインすることができました。HF帯におけるJAとのオープンは、ほとんど無く20mと17mでCW/SSBで数局とQSOできただけです。しかし、AO−13を使ったサテライトQSOでは交信相手の約40%がJAで、しかも日本から持ち込んだサテライト用のANTが不調であったにもかかわらず、HF帯に比べてQRM/QRNが少なくオープンする時間もはっきりしていて信号も安定しており、サテライトがJAとラグチューができた唯一のバンドとなりました。

18MHz帯でパイルアップと格闘中   サテライト運用を見学中のJod(VP5JM)

プロパゲーション
 10/12mはQRVしている局が少なく、南米、北米、ヨーロッパの数局と交信しただけでした。
15m〜20mは昼過ぎから夜にかけて北米とヨーロッパが強力に入感し、ときおりアフリカからも呼んできますが、深夜から朝にかけてはほとんど入感もなくバンド内は静かになります。
 40m〜80mは深夜になると、時間と共にヨーロッパの信号がノイズの中から浮き上がってくるのですが、睡魔に勝てずスマートにパイルをさばけません。ローバンドの運用時間帯は、80/75mが0430z〜0530zとJAとのQSOが期待できる0800z〜1100zで、40mが0730z〜0900zと 2330z〜0430zにQRVまたはワッチをしましたが、時期が早いために残念ながらJAの信号は全く聞こえませんでした。75mで北米のパイルをさばいているとWが、ニュージーランドから呼んでいるとおしえてくれましたが、空電によるQRNでそれも確認できません。80mのCWでJAとコンタクトしたかったので、まだ日も昇らない早朝からQRVしたのですが、VK9MMを呼ぶWが聞こえるだけでCQをだすと逆にVK9MMのQRMになるのでQSYしてほしいとうたれてしまいました。しかし、JAとカリブ海とのQSOが難しいのと同じように、北米の東海岸とオセアニアのPedi局とのQSOが如何に難しいかを数日間の運用で知っていましたので、直ちに周波数を空けました。

10m/15m/20mのトライバンダー   Jodyの娘夫婦と一緒にスナップ

 太平洋のペディションでどのバンドでもJAが強力に入感するのと同様にVP5では、マイアミからジェットで1時間30分の距離なので伝搬も良く、北米の局がいつでもどのバンドでも強力に入感します。特に北米の東海岸の局の信号は強力で、そのほとんどがSメーターを+10dB,+20dBまで振らせます。

サテライト
 JA1CG高橋OMのからサテライト運用の特訓を受けたおかげで、数時間の運用経験しかないこのバンドでまずまずの成果が出せたと思います。日程の前半は2mの受信ANTが不調で、自分のダウンリンクも聞こえない状態でしたが、後半は現地局のVP5JMから借りたCushcraftの13エレを水平偏波で使い、ダウンリンクを満足に聞けるようになり、最終日はリストQSOに頼らなくても自力でパイルをさばくことができました。実はこの借り物のANT、VP5JMことJodyが以前2mのFMで使っていたものを、なんと、彼女自身が歩いて持ってきてくれたのです。前の晩にJodyの夕食に招かれたときに、我々がダウンリンク用の2mのANTの調子が悪くて呼ばれても良く聞こえないと、コボしていたのをJodyが覚えていてくれて、ガレージにしまってあったCushcraftの2m用13エレ八木を引っぱり出して夜が明けるとすぐに持ってきてくれたのです。しかし、サテライト用の同軸ケーブルにはN型コネクタがついており,JodyのANTについているM型コネクタにつなぐための変換コネクタが無く万事休す。そこで同軸ケーブルについているN型コネクタをナイフで切り落とし、ケーブルの芯線と網線を直にANTのコネクタにビニルテープで押さえつけて接続。13エレ八木を木の棒で作った水平ブームに取り付けて方位と仰角を手回しで調整すると、それまで静かだったダウンリンク用の2mモービル機から20mと勘違いするような幾つものDX同志のQSOが聞こえはじめたのです。ANT交換の一部始終を見ていたJodyは、こんなオンボロ設備、いや失礼。立派なリサイクル・サテライトシステムでAO−13からの信号が強力に受信できたことに驚いていました。

地上高1.5mの手回し式サテライト用ANT   ケーブルを半田ゴテを使わずに接続

 出発前から、電話でのやりとりの中でJodyがサテライトに興味を持っていることは知っていましたし、彼女が見せてくれたTravelMate(TI製note book PC)にはQuickTrackがインストールされており、我々のANT設営やQSOの様子を見て自分でもできると自信を持った様子なので、設備一式をプレゼントしようと思いました...が,これはヤメました。(でも、シッカリとサテライトQSOの約束はしてきました)

オービット表(机上)で衛星軌道を確認   一緒に行ったVP5/JM1GYQ 岡本氏

ライセンス
 VP5のライセンスを得るのに必要な書類は、従免と局免のコピー、それと電監が発行する従免と局免の英文証明書です。まず、英文証明の申請書をJARLから入手します。それに使用目的、提出先国名、運用予定地および期間等を記入し、従免と局免それにパスポートのコピーを添付して地方電監に郵送します。英文証明書は申請してから手元に届くまで一ヶ月前後かかるので早めの準備が必要です。
 ライセンスの申請は岡本氏が以前から知っているVP5の局に頼みました。申請料は21ドル(US)です。必要書類と申請料を日本から発送して2週間後にコールサインが決まったとの知らせをファックスで受け取り、このとき何が何でもVP5からQRVするのだと決意を新たにしたのでした。実際、ホテルや航空券の手配を本格的に開始したのはコールが確定してからです。何しろ大枚をはたいてカリブ海まで行く最大の目的は、観光よりも無線をするためなのですから。

歩いて5分のところにあるカリブのビーチ    Jodyの娘さんとハズバンドのKarl

パイルアップ
 20mや15mのようなメジャーなバンドは、電波をだせば5分後にはWの東海岸とヨーロッパの猛烈なパイルアップを受けます。パイルになれば楽しくて暑さや時折自分の足を登ってくるトカゲのことなど気にならなくなりますが、599++のパイルが数時間も続くと苦痛になり、QSOの効率も落ちてくるので、呼んでくる局の数を減らすために出力を下げたこともありました。それでも、自分がパイルアップをうけるということは、"とにかく楽しい"の一言に尽きます。Hi
 QSOのロギングとCWの運用は、CTのDxPeditionモードで行いました。自分のシャックではCTを486/66MHzのIBM互換機で17インチのモニターにCCT98(RTTY用に)とGeoClock(世界地図上に主要カントリーのローカルタイムとグレーラインを表示するソフト)を同時にウィンドウで表示させてマルチバンドのDXハンティングを効率良く行う為に使っていますが、今回の運用で本領発揮といったところです。QSOのトータルやWKDカントリー/ゾーン(もちろんデュープQSOも)がリアルタイムに分かり、パイルさばきをより一層面白くしてくれます。しかも、QSLのプリントアウトまでやってくれるのでQSL書きのために自分の運用時間が削られることもありませんし、ログの清書も数分あればOKです。エレキーとヘッドセットそれにCTはペディショナーにとって三種の神器ですね!
 AT拡張スロット付きのラップトップPCでも持っていれば今年のハムフェアーで手に入れたDVP(TNX JE1JKL)でSSBのパイルアップをさばくことができたのですが、もう二度と無いかもしれない次回のお楽しみとしました。余談ですが帰国する前に寄ったアトランタでQSLに使うラベルを買ったのですが、5千局分でたったの10ドルでした。それに、CT用に386/33MHzクラスの格安PCも買いたかったのですが、オーバーウエイトになるので諦めました。CPUとマザーボードだけでも買っておけば良かったと後悔しています。

ハンドキャリーした機材の全て(衣類はクッション代わりに機材の間に詰めた)
内容:トランシーバー2台、リニアアンプ、プリアンプ、RTTY、
エレキー、パソコン、同軸ケーブル、アンテナ

島での生活
 カイコス島では、岡本氏が調理するサンドイッチとコーンフレークを主食とし、煮沸した井戸水、缶コーラとビールを飲料水としました。夜になると蚊と蛾のパイルと、エアコンがないので熱帯夜が我々を迎えてくれます。毎朝、蚊が起こしてくれるので早朝のローバンドの時間に遅刻することはありませんでした。1回だけ20数ドル(US$)のロブスター料理を食堂?のようなレストランへJodyと、バケーションに来ていたJodyの娘夫婦にさそわれて食べに行きましたが、大きさは伊勢海老より一回り大きく、おいしくて満足できるものでした。
 我々がラジオを楽しんでいる様子は、Jodyの使用人Paulの目には仕事をしているように映ったようで、ここで何の仕事をしているのだと、たずねられてしまいました。ビーチにも行かず、ANTを建てたり一日中無線機の前に座り続ける我々を見て、変な東洋人と思っていることでしょう。
 島での最後の晩は、Jodyの家での夕食によばれ自家製のキー・ライムパイをご馳走になりながらJodyや彼女の娘夫婦ナンシーとカールとの会話を楽しみました。食事のあとで、Jodyがシャックから持ってきたカタログを見せながら、来年デイトンへ行ったら買うのだからサテライトでQRVするのにどのリグが良いかと我々にたずねるのですが、こちらも初心者なのでアドバイスはJA1CG高橋OMにお願いしてみると勝手な約束をしてきました。SRI OM. また、Jodyは現在5BAND DXCCに興味があり、そのために来年75m用のANTとタワーを建てるつもりだとも言っていました。なんとか実現してほしいものです。

QSO数の内訳
 最後にVP5/JM1GYQとVP5/JJ1BMBが行ったQSOの内訳を以下に示します。

BAND CW SSB RTTY SUM
160 0 0 0 0
80 116 36 0 152
40 232 1 0 333
30 744 0 0 744
20 369 309 6 684
17 540 0 0 540
15 569 181 0 750
12 11 0 0 11
10 4 0 0 4
SAT 77 151 0 228
ALL 2662 678 6 3346

*1. CW:78 QSO(JAは44 QSO)、 SSB:150 QSO(JAは42 QSO)
*2. VP5/JM1GYQ:1,323 QSO、 VP5/JJ1BMB:2,023 QSO

SPECIAL THANKS TO:−
 バケーション後半の4日間、アトランタで我々を居候させてくれたNW4Fタイソン夫妻、朝早くサテライトのためにANTを持ってきてくれたVP5JM Jody、台風で天気が大荒れの中、駅まで迎えに来て下さったうえ深夜までサテライトの運用方法を実習させていただいたJA1CG高橋OM、セイシェルでのPediで使用実績のある小型DC電源を貸して下さったうえ、月刊ファイブナインの誌上でInfoをながしていただいたJA1ELY草野OM、運用に必要な書類の件でお世話になったJA8VE斉藤OMとJARL国際課のJA1TRC岡OM、購入したばかりのTS−50を貸して下さったJR1QQG野瀬OM、海外旅行の心得を教えて下さった飯泉OMに深く感謝致します。

タイソン氏の庭でショトガンによる実弾射撃  白いTシャツの男性がタイソン氏


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