作品名の文字に色のついているものについては、私見による解説をつけています。文字をクリックしてください。
<ピアノ曲>
・3つのピアノ小品Op.3b
No.1 エレジー
No.2 結婚行進曲(エンミとユルヨ・プトゥキネンに捧ぐ)
・No.3 小さなガヴォット
・ピアノのためのおとぎ話Op.19
・ピアノのための組曲Op.26
ピーリレイッキ/羊飼いの思い/即興的な踊り/夜想曲/アダージョ/葬送行進曲
・2つのピアノ小品Op.37
No.1 流れを漂う舟
No.2 舟歌
・羊のポルカ
<室内楽曲>
・ヴァイオリンソナタホ短調Op.1
・夕べの童話Op.2-4
・歌曲Op.2-5
・子守歌Op.3a-1
・夜想曲Op.3a-2
・民謡第一番Op.3a-3
・民謡第二番Op.3a-4
・スケルツィーノOp.3a-5
・ピアノ三重奏曲 イ長調Op.7
・スケルツォop.17a-7
・憂鬱な旋律Op.17a-8
・無言歌Op.22-1
・悲しみOp.22-2
<宗教曲>
・スターバト・マーテルOp.25
<歌曲>
・秋の想いOp.2-1
・私はずっと炎を見つめていたOp.2-2
・朝の歌Op.2-3
・教会の庭の夏の夜Op.6-1
・エピローグOp.6-2
・くちづけOp.8-1
・マルヤッタの歌Op.8-2
・シニッカの歌Op.16a-1
・わが心よ、高鳴れOp.16a-2
・南ポホヤンマー民謡の編曲 第一巻Op.17b-1〜5
僕は村の道を行進する
そんなことを言うべきじゃない
悲しみの底から泣いて
この幾千の年月よ
僕のおやじの小屋
・南ポホヤンマー民謡の編曲 第二巻Op.17b-6〜12
若者たちは村の道をうろついて
向こうに赤い家が見える
ヘイッキ・ハウタラ
風が白樺のてっぺんをたわませた
ユッカ・ケトラ
さあ指輪をとりかえせ
みんなは僕がしあわせだと思っている
・夜Op.22-3
・森の娘Op.23-1
・アヴェ・マリアOp.23-2
・あの娘は花の上を歩くOp.23-3
・運命Op.23-4
・土曜の夕べOp.24-1
・霜の花Op.24-2
・秋の歌Op.24-3
・荒れ野の夜Op.24-4
・大工の歌Op.29-1
・おいで、私の恋人よOp.29a-1
・春の歌 巣を守る鳥Op.29a-2
・羊飼いたちOp.29a-3
・イマンドラの歌Op.30c-4
・月夜の舟旅Op.31a-1
・牛小屋でOp.31a-2
・神の聖堂Op.34b-4
・国難の時Op.31b-4
<合唱曲>
・森の王へOp.4-1
・永遠の夜Op.4-2
・夕べにOp.4-3
・私の父さんの小屋Op.4-4
・川の流れは舟を運ぶOp.4-5
・ヘンテリOp.4-6
・クッレルヴォの歌Op.4-7
・年老いた妻Op.4-8
・そこにはもう長い間花咲くリンゴの木があるOp.11-1
・海の賛歌Op.11-2
・日の出にOp.11-3
・わが子をトゥオネラにOp.11-4
・葬いの歌Op.11-5
・こだまを揺らすOp.11-6
・春の歌Op.11-7
・打て わが胸よOp.16a-2a
・キャラバンのコーラスOp.21-1
・舟歌Op.21-2
・若き愛国者のマーチOp.21-3
・私はめったに飲みに行かないOp.27a-1
・夏の情景Op.27a-2
・夏が去りゆくときOp.27a-3
・結婚式Op.27a-4
・夕暮れの雲Op.27a-5
・小屋をノックしてOp.27a-6
・ヴァップの歌Op.27a-7
・春Op.27a-8
・歌いましょうOp.27b-1
・ブランコOp.27b-2
・ああ しまった!Op.27b-3
・友が 古い友がやってきたOp.27b-4
・夕べの情趣Op.27b-5
・ポルスカOp.27b-6
・踊りの歌Op.27b-7
・鐘よ 鳴り響けOp.27b-8
・南オストロボスニアのリングダンスOp.27b-9
・仲間たちのマーチOp.28-1
・調べOp.29b-1
・ネズミの葬式Op.29b-2
・サタクンタの歌Op.29b-3
・ひとりOp.29b-4
・朝の歌Op.29b-5
・劇「カンダウレス」から三つの合唱曲Op.30a
No.1 尼僧の合唱
No.2 尼僧の感謝の合唱
No.3 哀悼歌
・花嫁の付添い人の歌Op.30c-7
・夏の夜Op.34-1
・秋Op.34-2
・ダンスからの帰り道Op.34-3
・それは再びやって来るOp.34-4
・自由の歌Op.34-5
・シルッカのハネムーンOp.34-6
・市民軍のマーチOp.34a-7
・祈りOp.34b-1
・大地を 大陸を覆うときOp.34b-3
・主は寺院に来たれりOp.34b-4
・恋人は素敵
・ユーモレスク
・私の恋人は美しい
・すでに波や弱まり
・おやすみ
◇◇◇ 私見による解説 ◇◇◇
○朝の歌Op.2-3
とてもさわやかな感じの曲です。まさに朝のすがすがしい空気がそのまま音楽になっていると言うてもいいでしょう。中間部が一段と優しい感じになるのがまた印象的です。初期の作品ではありますが、素敵な小品だと思います。
○結婚行進曲Op.3-2
私の大好きな曲の一つです。結婚行進曲と言うと、どうしてもメンデルスゾーンや ワーグナーの曲が有名になるのですが、クーラのこの曲はそのいずれとも全く雰囲気 は違います。華やかな祝典の雰囲気、というよりは、むしろ、地味でしっとりとし た、非常に慎ましやかな喜びに満ちた曲、と言うことができましょう。特に、その中 間部における、もの哀しさのようなものは、まるで娘を嫁に出す父親の心情を表すか のような印象を与えます。この曲を初めて聴いた時、昔話で読んだ、きつねの嫁入り の行列の光景を思い浮かべたのは、私だけでしょうか… ちなみに、私もこの曲は、 一応、弾くことができます。(^^;○ピアノ三重奏曲 イ長調Op.7
クーラの室内楽作品を代表する作品です。室内楽だからと言うて、安心してはいけません。この曲は、何と、演奏するのに約50分を要するという大曲なのです。全体は4つの楽章に分かれています。1楽章は、どこか聴いたことのあるような懐かしい感じのする、美しいテーマ が流れていきます。ピアノとヴァイオリン、チェロの3つの楽器が互いに絡み合いな がら、時に大きく盛り上がり、時に繊細な表情を見せたりしていきます。そのダイナミクスの幅の広さは実に聴き応えのあるもので、クーラらしさがよく表れていると思います。2楽章はどこか愛らしい感じのテーマから始まり、それが中間部になると、チェロによりまるでむせび泣くかのような哀愁を帯びたテーマが奏されます。3楽章はさらにぐっと暗い感じになり、どんよりと雲が垂れ込んだ空を思わせるような雰囲気が漂います。が、そこからまるで光を求めるかのようにテーマが歌い出されていきます。この暗から明へ、という流れはシベリウスの「フィンランディア」等にもあるパターンですが、ここでもそれが実に効果的に組み立てられていて、聴く者の心をぐっと捉えてきます。4楽章も最初はどこか不安そうな動機から始まります。それが何回か繰り返された後、やがてテーマが、コラールのような感じでピアノに現れ、チェロ、ヴァイオリンと歌い次がれていき、音楽は次第に盛り上がっていきます。このテーマ自体はどこか歌謡的な感じもするのですが、それがうねりを繰り返しながら、次第にクライマックスを築いていったかと思うと、最後は、案外とあっさりとした感じで終わります。50分間、まるでシンフォニーを聴くかのような充実感に満ちた作品だと言えましょう。
○そこにはもう長い間花咲くリンゴの木があるOp.11-1
作品11の曲というのは、いずれも素晴らしいものばかりだと思うのですが、その中 でも2番目に好きなのは、この曲です。曲は大きく、3部に分けることができるかと 思います。詩はコスケンニエミの詩で、カレリア地方=フィンランド人にとっての心 の故里、のことを歌ったものです。1部は、フーガの形式になっています。一旦、f まで盛り上がったかと思うと、すぐにpに落ち、そこから、じわじわっと盛り上がっ てきて、一気にffまでもってくる、そのドラマティックな構成は、なかなか感動も のです。2部は、そのffの頂点の後、すぐにppで始まる男声合唱から始まりま す。やがて、女声も加わり、タテのラインの揃った和声進行で進んでいきます。3部 は、今度は、ppの女声合唱から始まります。と、その後ろで、男声が2声でフーガ のテーマを再現していき、この曲最大のクライマックスへと向かいます。最後は、バ リトン+第2テナーが、再度、フーガのテーマを名残惜しそうに再現して、終わって いきます。○日の出にOp.11-3
作品11の中で、一番、好きな曲です。これもコスケンニエミの詩によるもので、内 容は、人生の高尚さというか、光り輝く”生”への思いというものが、たっぷりと歌 われています。上3声による、ppの静かな雰囲気で始まりますが、ベースが加わる 辺りから、次第に膨らんでいき、最初の頂点を築きます。その後、3拍子に変わり、 低声からフーガのテーマ(フーガと言っても主題は各声部とも1回しか出てきません が)を歌っていき、最高点に達すると、男声合唱が、静かに歌い出します。日の出前 の、地上の静けさを表すかのように。そして、それを受けて、女声だけで冒頭の部分 を繰り返すと、男声が加わり、一気に、クライマックスを迎えます。ちょうど、日の 出で、さぁーっと明るい陽の光が差してくるように。「永遠の真実」という言葉を叫 んで(?)、終わります。この充実した内容は、かの「フィンランディア」にも匹敵 するものかと思います。(ちょうど、「フィンランディア」の詩もコスケンニエミで すから、何か共通するものもあるのかもしれませんね。)○わが子をトゥオネラにOp.11-4
フィンランドの民族詩カンテレタルによる曲です。クーラの最初の夫人との間にできた子供、アウネが生後すぐに亡くなってしまった年に作曲されたそうで、暗く、悲しみに満ちた曲です。最初と最後の部分は、Larghettoとなっており、とってもゆっくりと演奏されます。それは、まるで、悲しみを引きずりながら歩むかのようでもあります。そして、中間部では、その悲しみがffにまで爆発していきます。この悲しみの世界は、マーラーの「亡き子をしのぶ歌」の世界にも通ずるものがあるような気もします…○葬いの歌Op.11-5
エイノ・レイノの詩による曲。題名のとおり、「死」を扱っている曲ですが、そこには、決して悲壮感とかいうものは感じられません。むしろ、淡々と「死」を受け入れ、輪廻転生とでも言うべき、大きな流れの中で「死」を受け入れようとするかのようです。曲も、淡々とした和声進行になっており、案外とさらりとした印象がします。○こだまを揺らすOp.11-6
オネルヴァの詩による曲。母親がわが子を揺りかごなどで、あやしているような光景が目に浮かんでくるような曲です。5拍子という拍子が、そういう揺りかごの雰囲気を、うまく表現していると思います。この形に仕上がる前に、もう一つ、別の版があるようですが、そちらは、4拍子となっており、個人的には、やはり5拍子の方が、この曲の雰囲気にあっているように思います。○春の歌Op.11-7
「春の歌」と言っても、決して、「春が来た〜、春が来た〜」というような感じの曲ではありません。コスケンニエミの詩による曲ですが、この詩は、むしろ、春になっても自分の心は冬のまま、というようなことを歌っているのです。そして、曲も、そういう、どこか不安定な感じを出すためか、リズムがかなり揺れます。それでいながら、タテの線がしっかりとつながっていないと、曲としてまとまって聴けない曲ですので、演奏しようと思うと、かなり難しい曲になるのでは、と思います。○打て わが胸よOp.16a-2a
不協和音がいっぱい出てくる曲です。それは、どこか不気味な感じさえします。詩は、リュトゥコネンのものです。最後は、まるで絶望のどん底に沈んでいくかのように、静かに消えいくように終わっていきます。○キャラバンのコーラスOp.21-1
とっても長い曲です。(と言うても5分くらいなのですが…) エイノ・レイノの童話劇「ニニヴェの子供たち」から詩をとっているそうで、2人の恋人の対話が、その内容になっているらしいです。途中に、テノールのソロとソプラノのソロが入りますが、それは、この恋人同士を表しているのでしょうか。かなり起伏に富んだ曲で、途中、かなりの盛り上がりを見せますが、始めを終わりは、ごく静かな感じになります。クーラの死後にマデトヤがこの曲を編曲しているようですが、そのこともまた興味深いものです。○舟歌Op.21-2
「キャラバン…」が長いのに対して、こちらは、ごく小さな作品です。詩は、フィンランド古来の民族詩カンテレタルに基づいています。風や水に、私の舟を運んでおくれ、とお願いする、可愛らしい詩で、曲も、愛らしくできています。○若き愛国者のマーチOp.21-3
愛国主義者としてのクーラの性格がよく表れている曲です。旋律、和音ともに、割と単純なものですが、それが、この曲が多くの人に愛されている所以でもあるのでしょう。一番最後に、「Suomi on Suomi」とfffで終わるのが、印象的です。○おいで、私の恋人よOp.29a-1
実にドラマティックな、まるでオペラ・アリアのように盛り上がる歌曲です。詩の内容的には、マーラーの「さすらう若人の歌」にも似たものを感じます。全体的に暗いトーンで描かれていて、一体、何にそう反抗しているの?と聞きたくなるくらい、強く責め立てるような曲調になっています。クーラの歌曲作品を代表する作品の一つと言えるでしょう。
○調べOp.29b-1
1914年のクオピオ音楽祭のために作曲された曲です。ラウリ・ポホヤンパーの詩によるもので、とてものびやかな部分とリズミカルな部分との対比が印象的な曲です。冒頭のゆったりとしたppから、最後のドラマティックなfffまで、実に表情の幅が広いのが特徴とも言えましょう。素敵な曲、という印象が強いのですが、でも、実際に演奏するとなると、結構、手間取りそうな気もするような曲です。○ネズミの葬式Op.29b-2
民族詩カンテレタルに基づいた、女声3部合唱の曲です。でも、詩の中身を読んでみると、ちょっと切なくなってしまうようにも思います。曲自体は、ごく小っちゃな曲で、愛らしい感じの曲です。○サタクンタの歌Op.29b-3
この時代は、各地方を奮い立たせるようなナショナリズムの強い時代でもあり、これは、そうした雰囲気に満ちた曲です。力強い中に、フィンランドの自然への熱い想いのようなものが感じられる作品だと思います。○ひとりOp.29b-4
女声3部合唱の曲。何と、クーラ自身が詩を書いています。が、曲自体は、とても悲し気で、女性が一人でぽつんと寂しそうに泣いているような情景が目に浮かんでくるかのようです。何か、しっとりとした感傷にさせられる曲です。○朝の歌Op.29b-5
これもまた女声3部の曲です。E.レイノの詩によるもので、歌曲としても作曲したもの(Op.2-3)を、クーラ自身が後に女声合唱用に編曲したものです。詩自体が、ハイネの「春の歌」と、韻律において似通っているのだそうで、そうしたこともあってか、とてもリズム感のいい、明るい感じの曲になっています。最後に、「どんな山もそれを妨げることはできない 若い2人の愛を」として力強く終わるのが、印象的な曲です。○祈りOp.34b-1
クリスマスの歌です。と言っても、明るくクリスマスを祝う、といったものではな く、むしろ、曲調は暗い、と言えましょう。曲は3つの部分に分けることができま す。1部は、和声的な進行をしながら、クリスマスに、敬虔に、静かに祈りを捧げる 様子を歌っていきます。ベースが、他の声部とちょっと独立したような動きを見せる のが、面白いところでもあります。2部は、テナーから始まるフーガです。それは、 人の迷い、悩み等を歌っているようで、そのフーガの動きからも、苦悩の様がはっき りと伝わってくるようです。ffの最高潮に達した後、すぐにpで、悩みが解決しな いまま、フェルマータとなります。そして、3部は、1部の繰り返しになります。再 び、静かに祈りを捧げながら、全ての悩みを解決したいという思いが満ちてきて、そ の心の叫びが消え行くように、曲は終わります。○大地を 大陸を覆うときOp.34b-3
Op.34b-1の雰囲気を受けて、静かなお祈りの歌です。賛美歌詩集の詩に作曲したものですが、そこには、しみじみとした優しさが満ちあふれていると言えましょう。ゆるやかな3拍子のリズムが、例えばブラームスの子守歌のような雰囲気を出しており、まさに慈愛に満ちた曲です。また、音楽的には、半音階進行の美しさが存分に発揮されており、クーラならではの美しさも感じられる、素敵な作品です。○主は寺院に来たれりOp.34b-4
Op.34の曲というのは、いずれも宗教的で、美しい曲ばかりですが、この曲もその一つです。J.L.ルーネベリの詩に作曲されたもので、前の「大地を 大陸を覆うとき」と同様、優しく愛に満ちた曲となっています。内声部に出てくる半音階進行がまた、美しいです。○恋人は素敵
フィンランドの民謡を編曲したもので、そのどこか哀愁をおびた旋律が印象的です。主旋律は美しいのですが、内声部が、結構、難しいことをやっているのもまた、この曲の特徴でしょう。○私の恋人は美しい
これもフィンランドの民謡を編曲したもの。詩は4連あり、1〜2コーラスは、4声部のモノフォニックな作りですが、3コーラスめは、女声と男声のかけあいになり、4コーラスめは、4声部がばらばらと輪唱のように歌う、という作りになっています。明るい、楽しい雰囲気の曲です。○おやすみ
初期の頃の作品と言われる作品です。ベースの2声進行から静かに不思議な感じで始まり、それだけでとても神秘的な感じすらします。半音進行や不協和音などの非常に美しいハーモニーを感じることのできる曲で、クーラの魅力がつまっている作品と言うてもいいのではないでしょうか。