今月のエッセイ(番外編)

ベンツとBMW

 あーあついにベンツ買っちまった!!この3ヶ月ずっと研究してきたが、今が決断の時と決心した。まず車の性能についてはワールドスタンダードであることは誰しも認める。車好きならベンツを知らずして車は語れない。ピアノ弾きがスタインウェイを語るのと同様だ。そしてベンツCシリーズは一昨年ドイツでデヴューして以来大ピット。今ではWVにせまるセールスを達成している。このことは今回のCがいかに革新的がをを物語っている。私はCー200には試乗したがあまり芳しい印象は得られなかった。
 その理由はエンジンにあった。ノイジーで重い、BMWの4気筒と大違いだ。そして行き着いたのはC−240だ。これはV6 2.6リッターで、4気筒2リッターのC200とは全く走りのグレードが違う。
 スタインウェイにもベストバランスの機種があるように(それはBタイプだと思う)CシリーズならC240に違いないと、さまざまなデータから確信してた。そしてそれは間違いでなかった。ベンツが私の大好きなBMWをどこよりも高く査定してくれたのも決め手だった。しかも年末の駆け込み受注で値引きや付属品などの条件も信じられないほどの好条件が提示された。
 ドイツ車には買い時がある。デビュー直後は国産と違って初期トラブルが結構ある。そして1〜2年で完全に安定する。それ以降はもし買うなら出来るだけ早い方がよろしい。パソコンも自動車も所詮は生ものと同じで鮮度が命。ドイツ車がどんなにモデルチェンジサイクルが長いといってもせいぜい8年で新型に変わる。ドイツ車はモデルチェンジに関係なく価値を保つ、などと言っている人はこの技術革新の激しい時代にドアホだ。
 現行のベンツやBMWは一世代前と比較するのも愚かなほど劇的に良くなっている。
 日本車は4年一度のモデルチェンジなので確かに外観は変わったが中身はお茶を濁す程度のことで終わるメーカーも多い。しかしドイツ人は徹底している。
 考えてみて欲しい私は今年50歳、あと何年生きられるか?せいぜい20年だろう。その間8年に一回のモデルチェンジを漫然と待っていては死ぬまでにたった2〜3台しか乗り換えられないではないか!それが4年に一度なら倍新鮮な感動が味わえる。子供のいない自分にとって死んじまったら貯金なんていくら残しても意味ないしね。(もっとも貯金無いからいいけど)
さてくだらないことはこの辺で止めておいて本題に戻ろう。
 BMWとベンツ、これはずっと永遠のライバルだった。いまさら私等が評論家気取りであれこれ言うのは無用だが、兎に角正反対のキャラクターである。ベンツが権威主義やこわい人、BMWが遊び人やナンパ車の象徴などと考える人は論外。それは日本だけのローカルな話で、ベンツはドイツやヨーロッパ各国ではまずタクシー会社御用達と考えるのが当たり前。それは何より機械的な信頼度が抜群だから。
 目的地まで如何に早く安全に快適に人を運ぶか?そのベストな運搬手段がベンツだ。
 それに対してBMWには多分に遊び心がある。目的地までのプロセスを大切にするのだ。やはり血は争えない、ミュンヘンの飛行機エンジン製造会社だった関係でいまでもBMWのエンジンは最高に気持ちがいい。 そして全体に軽快でスポーティーで運転していて楽しいのである。
 これはミュンヘンがイタリアととても近い位置にあるからだと思う。イタリアといえばアルファ・ロメオ、フィアット、そしてフェラーリ、ランボルギーニとスポーティーな車が目白押しである。かたやベンツはドイツのシュトッツガルトに本拠地があるものの最近は北ドイツのブレーメンが製造の中心地だ。北ドイツはスゥエーデンやフィンランドにも近い。
 スゥエーデンのボルボを知らない人はいまい。世界でもっとも安全な車の一つはボルボのV-70や80であろう。ただし走りは多少鈍重で安定志向に傾く。
 さて今度のベンツのCはこのボルボの安全安定志向に近かった従来の路線から新しいBMWの3シリーズの成功に刺激されて、その魅力であるスポーティーさをデザインにも走りにも大胆に取り入れたことが大きな特徴である。 
 とは言っても先に触れたようにベンツはベンツである。走り出しでまず重厚さがBMWとまるで違う。サイズはほぼ同じなのに一サイズ大きい車に乗っているようだ。
 乗り心地はウルトラスムーズだ。このあたりの味付けはドイツ車の質実剛健な要素を残しつつも日本車やフランス車などからうまく快適さを取り入れた結果、新しいワールドスタンダードな乗り味を築いたようだ。ただまだ慣らし運転の状態で高速も一度も走ってないので詳しいレポートは控える。
 一番の魅力は、しかし安全性あることは言うまでもない。インターネットで調べたが、Cは世界で最も厳しいヨーロッパ衝突安全テストにおいて全ての項目でトップクラスだった。
 中でも注目に値するのは歩行者を万一跳ねたときのダメージの低さだ。ボンネットがかなり柔らかくて形状もきわめて滑らかだ。ベンツのエンブレムは勿論可倒式だ。
 後はこんなテストも興味深かった。たとえばトラックの後ろに高速で追突した場合、大方の車はトラックの下にもぐりこんでしまい搭乗者は悲惨な結果になる。しかしベンツはそのケースも想定してAピラー(要は前の窓枠)が異常なほど頑丈にしてある。これはくるまががけ下に転落横転した場合なども同様に搭乗者を最後まで守る。
 また安全の為の細やかな気配りにはあきれた。たとえば後席のヘッドレストは当然3名分確保されており、バックの際に視界の邪魔になるときはスイッチ一つで圧縮空気により一瞬に倒れる。
 またギアーをレバースに入れるとドアミラーが自動的に下向けになり路肩等が確認できるーーー等良くここまで徹底的に使う人の安心を考えたものだとドイツ人の徹底さを感じる。
 ベンツは世界で最初に自動車を発明して以来100年以上にわたって常に安全性を追求してきたメーカーだ。そしてもう一つの顔は保守的なイメージとは逆で実に先進的なテクノロジーに前向きな姿勢だ。
 車の姿勢制御のEPSと呼ばれるコンピューター4輪制御システムは国産車で最近やっと普及してきたがベンツでは6年前から標準だ。またキイが座席やハンドルやドアミラー位置まで記憶していて乗り込むときは全て下がって乗り込みやすくなりキイを差した後は自動で自分好みのポジションにセットされる(日本車でもセルシオ等では当たり前、しかしコロナ級のこんな小さなクラスでも標準であるところが偉い!)ーーー機械に強い僕でもマニュアルなしにはこの車は使いこなせないほどあちこちにエレクトロニクスの制御技術が生かされている。 それを自由にカスタマンズ出来るのも魅力である。
 すなわちベンツはデジタル的であり、いい意味で機械的である。それに大してBMWはアナログ的で人間の感性を大切にする。だからBMWはエンジンの音一つとっても何か楽器を聞いているように快い。まあ端的に表現するとベンツはゲルマン系、BMWはラテン系のキャラクターだ。
 私も出来ればこの2台を保有して街中ではBMW、高速長距離ではベンツを使い分ければ最高だろう!
この2大メーカーはこうしてお互いをライバルとして尊敬しながら切磋琢磨し今日の地位を築いてきた。それに最近ではアウディがどんどん頭角を現しており、この3メーカー、もっと具体的に言ってしまうと、BMWの3、ベンツのC、アウディの4は世界をリードするプレミアムクラスなのであるのだ。(もちろんもっと大きなクラスもあるが数の上で問題にならない)
 それにしてもこんな素晴らしい車を発明し発展させたドイツとは何という国なんだろう。(ポルシェやフォルクワーゲンやオペルもお忘れなく!)
 ドイツで面白いアンケートが行われたそれらの車の所有者の男性1000人にこう質問された。もし自分がどうしても欲しい車手に入れるためには、かみさんを借金のかたにしてでも買いますか?さて回答は如何だったろう?何と7割の男性はJa!(Yes)でした!
 この無類の車好きは日本人ではちょっと想像がつかない。
 特に音楽関係者にその傾向が多い。私の知っているピアニストのゲルハルト・オピッツさんなど演奏会の合間に良く新車のカタログを眺めては次はこれで行こう!なんてニヤニヤしていたっけ?
カラヤンやミケランジェリやポリーニなども大の車キチでスピード狂だ。(ドイツ人ではないが)
 ピアノのスタインウェイにしてもこうした高級乗用車にしてもドイツ製品に通じるある種のこだわりや完全主義、クラフトマンシップを強く感じる。それに加えて強い主張や哲学を持っている。この辺はバッハやベートーベンやブラームス等のドイツ音楽にも通じるものがある
日本車に足りないのはまさにその点である。
 しかしどんなに高価でも所詮はただの車である。私の人生にとってそれは仕事道具の一部であり、リフレッシュの材料であり、あくまでも趣味の世界を脱しないのだから、と自分に言い聞かせている。でも本年はスタインウェイを手に入れたときと同様に最高のものを手にする喜びで一杯である。



ご感想をお聞かせ下さい