ある国のある広場に立つ錆付いた一体の鉄像。その鉄像が何なのか知るのは年老いたステファンとカルメン兄妹だけ。ふたりはひとりの少女にその鉄像の話を始めました。
科学者の息子、10歳になるピエールは昆虫や花が大好きな少年でした。しかし、息子に科学者になって欲しいと思う父はピエールの気持ちを理解してくれず、反発をして庭を飛び出していったピエールは事故に遭って死んでしまいます。死んでしまった息子をもう一度甦らせようとして、父親は一体のロボットを作りました。しかし、彼がロボットを作り上げたことをどこからか聞きつけた軍人が、ロボットを戦争の道具に使おうと現れます。自分の息子でもあるロボット・ピノを悪の道具に使われたくない父親は必死でピノを逃がしました。
ピノは人間に使い捨てられた機械たちやステファンとカルメンと出会い、兄妹にサーカスの道化にされているところを、博士の助手に救出され、今度は政府の高官ライム氏の家に預けられます。ロボットは人間と共存できるか、そして人間の役に立つかを知る目的でライム家の人々と暮らすピノ。しかしピノは失敗をしてばかりでライム家は大騒動。ピノのせいで家の中がメチャクチャになってしまうと怒る母親と2人の姉はピノを返すようにライム氏に訴えますが、三女のナーナがピノと話すことで閉じていた心を開き、ボケていたおばあちゃんも治ってピノはライム家で暮らし続けることになります。そしてナーナのやさしい導きでいつしかピノは人間のように動きはじめますが、ピノにはどうしても人間の心はわかりませんでした。
ライム家にメイドとして働いていたカルメンと刑務所から出て来たステファンはピノで大儲けを企て、例の軍人もピノを欲しがっていました。時代はまさに戦争の直前。そんな中、ライム家での平和な日々を過ごすピノ。しかし、自分の発言によってライム家は大騒動となり、いたたまれなくなったピノは家を飛び出します。自分のせいで家族を傷つけてしまったのは、自分に何かが足りないからだとピノは悩みます。
ピノは不意に誰かが自分を求めていることを感じ、それに引かれるままに辿り着くとそこは病院。ベッドには死に行こうとしているピエールの母が横たわっていました。母の死と言う悲しい思いの中で人間の心を知ったピノでした。
悲しみに打ちひしがれているピノはステファンとカルメンに捕まり、軍人に引き渡され、ロボットの開発を強いられている父の元に連れて行かれます。解体されそうになるところを命を懸けて守ってくれた父の「争いからは何も生まれない」との言葉を胸に父母の分も生きることを願うピノ。
世界は戦争の渦の真っ只中、ピノも巻き込まれてますが、むやみに殺し合いをしてはならないと勇敢に行動します。死ぬことはいつだってできる、人間は生きなきゃいけないんだと叫ぶピノの声が荒れ果てた戦場に響きました。
やがて平和な時代が訪れ、ピノとナーナは親を亡くした子供たちを引き取って育てていました。そして月日は流れ、人々は自然に老いて人生を全うして旅立って行きますが、ロボットであるピノは愛する人々を見送るばかり。ナーナも旅立って行きました。
そうして更に何十年も経ち、ピノとナーナが育てた子供たちも立派に成人し、市長となった子供もいました。今までの功績により名誉市民の表彰を受けるピノ、そのお礼の言葉を述べている時に子供が車に轢かれそうになったのを見て助けに飛び出すピノ…。
人間になりたかったロボットのピノは「僕をもう修理しないで」と言って、愛する人々の待つ場所へと旅立って行ったのでした。
ピノの話をし終わって誰もいなくなった広場を後にするステファンとカルメン兄妹。ふたりはピノの話を伝えるためにいつまでもいつまでも生き長らえて、この広場へとやって来るのでした。