合コン

京浜急行「上大岡」から数分の高台にヒロシの勤める石油関連会社の男子独身寮がある。
ヒロシの寮に隣接して大手化粧品会社の女子寮がある。
ヒロシは3年前にこの女子寮に暮らすマサコと知り合い、以来、恋人同士となった。

ヒロシの友達とマサコの友達は横浜駅周辺の居酒屋でしばしば合コンを開催。
合コンの日時の設定はいつもヒロシにまかされていた。
その役回りはなんとはなしに定着したものだが、ヒロシの設定した会はいつも楽しい会になった。
そして2次会のカラオケで盛りあがった後は、いい雰囲気のカップルができあがり、横浜西口の夜に散っていく。

今年の春、ヒロシが静岡に転勤することとなり、仲間のひとりツトムが代わって定例の合コンを仕切ることとなった。
だがツトムが日時を設定するようになってからはいまひとつ盛り上がらない会になっていた。
ヒロシが抜けただけでメンバーややり方は大して変わらない。
また、場を盛り立てることに関してはどちらかといえばツトムのほうがヒロシよりうまいのだが。

7月の終わり、ヒロシが出張で横浜にきたのでツトムは飲みにさそった。
「マサコとはうまくいってるのか?」
「まあな、静岡は近いからあいつときどき逢いに来るんだ」
「ところで知っての通り、おまえが抜けた後、俺が例の合コンを仕切っているんだが、なぜかテンション上がんねえんだな」
「前回はいつだった?」 
「先週の木曜日、その前はたしか・・・その4週間前の木曜日だったよ」
「なるほど、そりゃツトム、日がわるいんだよ!」
そしてツトムはヒロシから合コンの日を決める重大なノウハウを教えられる。
それはなんと女性陣の性周期を知り、排卵期に設定すると盛り上がりやすいということだ。
「女は排卵期には普段より男を求める傾向があるんだよ」とヒロシ
「そうか、その時期は女性が積極的なんだ。 それで盛り上がるのか!」
「でも、君はどうやって女性陣の排卵期を知ることができたんだ。 全員にあなたの生理はいつ?なんて聞くわけにもいかないだろうに。」
「マサコに教えてもらったのさ」
「マサコは君の彼女だから聞き出せるかもしれないが他はどうなる? まさかみんなタイミングが一緒ってこたあないだろうからな」
「いや、実は生理のタイミングが同じなんだよ!」
ドミトリー効果というものがあり共同生活をする女性の性周期は一致してくるというのだ。
ヒロシはマサコをとおしてベストの設定日を知り得たのだ。

ツトムは最近、同じ女子寮のミドリという娘と付き合っている。
彼女から得た情報をもとに今度はバッチリだという合コンの日を設定した。 
だが結果は残念ながら以前と同様さむいものだった。 
「な〜ぜだ?」
とても大切な点を見落としていたことに気づかないツトムは落胆するばかりであった。 

実はミドリは最近入寮したばかりでまだ他の女性たちとは周期が同調していなかったのだ。


この話は同居する女性の生理が同調するということと、排卵期の女性は積極的になるということを前提になりたっています。
はたしてそんなことがあるのでしょうか? 検証してみましょう。

ドミトリー効果

同じ場所にいるメスマウスはフェロモンの影響で排卵時期が同調する
マクリントック教授が人で証明

ドミトリー効果のドミトリーとは寮という意味で、同じ寮で共同生活する女性の生理が同調するという、現象をドミトリー効果といいます。
同じ場所にいるメスマウスの排卵時期が同調するということは以前から確かめられていましたが、人でも動揺の現象があることを確かめたのはマーサ・マクリントック、現シカゴ大教授、がはじめでてした。 彼女はマサチューセッツ洲、ウェルズリー大学に勤務しているとき、自分の女子寮(ヒラリー・クリントンも同級生)の学生135名を対象に1年間、月経周期を記録してもらって証明しました。 
実験のきっかけは寮に体臭の強い女性がいて、彼女のワキガが周期的に強くなったり弱くなったりすることに気がつき、其のニオイが原因かもしれないと考えました。
そこで、わきの下の分泌物の抽出液をつかい5人の女性で実験しました。
分泌物を含んだ綿を別の女性の鼻の下にはって6時間そのままにするというやりかたで、2ヶ月間続けてみると、採取した女性の月経周期の時期により、受けて側の排卵期が早まったり遅くなったりしたのです。
いっしょに暮らす期間が長ければ長いほど生理の時期が一致してくることになります。 
この研究成果は 1971年に英科学誌「ネイチャー」に発表して大きな反響をよびました。
ついでながらこの調査では、他に、学外活動で男性に接したり、恋人がいたりするほうが排卵回数が多いことも認められました。
次に、排卵期に女性が積極的になるというのは通説ですが、人間は理性の動物ですから露骨に行動が変わるということはないでしょう。 しかし、そのほうが子孫繁栄のためには都合がよいことから生物額的に正しいかもしれません。
排卵期には黄体期、月経期、卵胞期にくらべ男性の体臭成分であるアンドロステノンの感受性が高まるという現象は最近では2003年に名古屋女子大の末田香里等が女子大生19名について実験した報告があります。

またねずみによるフェロモン実験により、妊娠直後のメスねずみが新しいオスねずみの匂いにより流産することや 発情周期が他のねずみのフェロモンの影響をうけるなどの事実が知られている。