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                        谷 和樹
 NO. 7_________________________★☆★彡

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■■■■日本の教師が外務省資料を基にして何が問題なのか■■■■■
■■■■■■■■■■◇村井淳志氏への疑問◇■■■■■■■■■■■

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 『社会科教育』1999年7月号臨時増刊「21世紀の歴史教科書を
提案する」の巻頭座談会の中で、金沢大学の村井淳志先生は向山先生の
北方領土論を批判された。
 私はそれを読み、村井先生のご発言に若干の疑問を持ったので、手紙
を書き、明治図書編集部宛に送った。
 この手紙は本誌1999年11月号に投稿として掲載された。
 以下はその全文である。
 私の文章だけでは誤解を生じる部分があるかも知れないので、興味を
持たれた方は、臨時増刊の座談会の記事をお読みになってからご覧いた
だければ幸いである。
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前略
明治図書教育書『社会科教育』編集部 御中

 社会科教育7月号臨時増刊『21世紀の歴史教科書を提案する』が届
き、大変興味深く読ませていただきました。
 現在の教科書に対する問題意識と、それを克服するための具体的な提
案がなされていて、全体としてとても勉強になりました。
 ありがとうございました。

 さて、本誌の趣旨とは外れるかもしれませんが、巻頭の座談会記事で
金沢大学の村井淳志先生が向山先生の北方領土問題についての発言に対
しての意見を述べられていました。
 読ませていただいて、村井先生は向山先生のご発言の趣旨を理解なさ
っておられないと感じました。
 向山先生は、『社会科教育』の連載で次のように書いておられます。
┌──────────────────────────────┐
│ つまり、日本の教師は、日ロ和親条約について、その中身を教え│
│ていないことになる。これは大問題だ。            │
│(『社会科教育』1998.6月.p117)          │
└──────────────────────────────┘
┌──────────────────────────────┐
│ 日教組、民教連の方々の中には、憤りを感じられる方もいよう。│
│それならば、「私たちはこのように教育した」「私たちの実践はこ│
│うであった」という記録を示していただきたい。        │
│(『社会科教育』1998.7月.p118)         │
└──────────────────────────────┘
 向山先生の主張の中心はこの部分だと考えます。
 向山先生も座談会の中でおっしゃっていますが、村井先生はその部分
に言及なさらずに
┌──────────────────────────────┐
│ 向山先生の北方領土論。これはちょっとひどいと思いました。研│
│究史を全然踏まえていらっしゃらない             │
└──────────────────────────────┘
とご発言なされたことは残念です。
 このような論議では具体的な実践事例、あるいは実践プランを提示し
ての検討でなければ生産的でないと思いました。

 また、村井先生は
┌──────────────────────────────┐
│ 一方の当事者である日本の外務省の公的文書だけを調べて結論を│
│出すというのは、日本政府が言っていることは常に正しいという先│
│入観を持って事実を選択していると言われても仕方がないんじゃな│
│いですか                          │
└──────────────────────────────┘
とおっしゃっています。
 しかし、日本の公立のそれも小学校の教師が、資料として提示するの
に日本政府の資料をまず踏まえることは当然のことと思います。
 それに、向山先生が提示した資料は、すべて
┌──────────────────────────────┐
│ 日露間領土問題の歴史に関する日本国外務省とロシア連邦外務省│
│の共同作成資料集(1992)                │
└──────────────────────────────┘
に入っているものばかりです。
 これは、両国の外務省が共同で作成し、掲載に合意した文書です。
 この資料集に掲載されている資料に関しては、つまりロシア側も信憑
性を認めており、日本政府の一方的な見解とは言えないものです。
 また、村井先生は
┌──────────────────────────────┐
│「千島列島」の範囲がどこまでなのかという点がまさに研究史の争│
│点だったわけでしょう                    │
└──────────────────────────────┘
と言われ、さらに、
┌──────────────────────────────┐
│ つまり、クリル諸島に国後・択捉が入るし、サンフランシスコ条│
│約でそれを放棄させられたのだということは、少し研究史をひもと│
│けば否定できないことであって・・・。            │
└──────────────────────────────┘
とご発言なさっています。
 しかし、サンフランシスコ条約にロシアが調印していないことをおっ
しゃらないのは公平ではないと考えます。
 一般に領土の移転は当事者国がどちらも合意している平和条約によっ
てのみ発生するものとされています。
 しかし日ロ間にそのような平和条約は締結されていません。
 千島列島の範囲に択捉・国後が入るという解釈自体はある程度妥当性
を持っていますが、入らないという解釈もまた主張されています。
 さらに「サンフランシスコ条約」の調印国であり起草国であるアメリ
カは
┌──────────────────────────────┐
│ クリール列島の辞句は従来常に日本の一部であり、正義の上から│
│は日本の主権下にあるものと認められるべき歯舞群島、色丹島、ま│
│たは国後、択捉島を含んでいないし、含むように意図されもしなか│
│った                            │
└──────────────────────────────┘
という内容の見解を出しています。
 サンフランシスコ条約に調印した48カ国から意義が出ない以上、こ
れに調印していないロシアの解釈を採用しなくてもいいのではないでし
ょうか。
 また、ロシアが日ソ中立条約を破棄して千島を占領していった経過等
の事実関係も見ておく必要があります。
 このような論議では、具体的な実践事例、あるいは実践プランを提示
しての検討でなければ生産的でないと思いました。
 以上、簡単ですが、村井先生のご発言に対して若干の疑問を持ちまし
たので、感想をお送りさせていただきました。

1999,7,2  谷 和樹
<NO.7ここまで>
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次回は「北方領土関係のWeb資料とその解説」です。

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