『占領軍政策と平和について』<認識すべき根本的な問題> ('00.3) より

 昭和20年8月、戦争に勝って日本に進駐してきた占領軍の最重要政策は、自分たちの安全と占領目的遂行のために「米国に刃向かうことができない日本にすること。あとで仇をとろうとしない民衆にすること」であった。

 そのため米軍は新しい憲法を僅か1週間で作り上げる一方、占領軍の名において教育と報道を完全にコントロールした。国内の郵便物はすべて占領軍が検閲し、封筒はすべて開封して内容を調べた上で「検閲済」と印刷したセロテープで閉じて配達した。

 このような弾圧的管理を受けたことは日本人はもう忘れてしまったようだが、占領期間は異例の長期におよび、大新聞ほか各報道機関は廃刊命令を恐れて占領軍の意のままに従ったのである。日本の永い歴史も伝統も教育も、指令どおりすなおに「過去はすべて悪」として簡単に否定してしまった。占領軍の巧妙な洗脳宣伝も効果的であった。

 勝者は自分の都合の良いように敗者の歴史を変えてしまう。日本でも外国でも昔から「勝者の論理」が一方的に通用してきた。一度戦争で敗者になった方は長いあいだ陽の目を見ることがない。大戦が終ったとき「これで日本は五十年は復活できない」と言われたものである。「百年間は駄目だ」との説もあった。

 しかし、敗戦国がいつの日か必ず再生するとは限らない。「すべて自分が悪かった」と自己否定する敗者は滅亡する。復活か消滅か、左右するのは負けた国の人々の意識である。その国の、教育と報道がこれに影響する力は大きい。

 戦争の勝敗を決める要素は多々ある。偶然、或いは僅かな差が決定的になることもある。「勝てば官軍」であるが「正しいから勝つ」というものではないから、敗者であってもすべてが悪である筈がない。

 日本は戦後、幸運に恵まれ経済的には活況を回復したが、精神面では占領軍が去った後も「この国を駄目にする占領政策」に今もなお盲従を続けているのが教育界とマスコミであると思われる。日教組教育とマスコミが長年にわたって、今の親を含めて子供まで、ニ、三代にわたってくまなく包み込んできたベールのなかに、無自覚のまま、今の日本人が在るのではないか。

 改めてこのことを認識し、先入観に一切とらわれない「自分の目と頭で」、この国のありようを見直すことが必要であろう。

 一党独裁の覇権主義国家が日本の周辺にもある。古来、戦争や恫喝のタネは何とでも一方的に作られてきた。そしていつも、敗けた方、引っ込んだ方が一切の悪を背負わされるのである。若い人たちで一度、国民の将来の安全保障についてシュミレーションしてみてはどうか。