○ 仔犬「回天」


隊員達が可愛いがった仔犬、回天を抱く三谷大尉


 大津島基地の士官室に仔犬が迷い込んで、住みついていた。赤毛の、おとなしい幼
犬であったが、搭乗員たちは喜んで、「回天」と名付けて可愛がり、だんだん大きく
なった。皆が異常なほどの愛情を注ぎ、代わる代わる抱きしめるものだから、床に下ろ
された後しばらくは、よたよたと歩いていた。

 猛烈指揮官と人には言われる板倉少佐であるが、この仔犬を胸に抱きかかえて、楽
しそうによく歩き回っておられた。

 このほど、先任搭乗員の帖佐裕大尉が本部の前の道に腰をかけて、この仔犬と一緒に
写した写真が同氏の遺品の中から見つかった。

 光の基地にも仔犬がいて、やはり「回天」と呼ばれ、同じように大事に扱われてい
たという。髭で有名な同基地の先任搭乗員、三谷与司夫大尉が仔犬を抱いている写真
が残されている点も同様である。

                                              03.12.18 小灘