メンバー: 中谷、磯辺、甲谷
最初の予定では8月10日にクワンナイ川を遡行し源頭でキャンプ、11日にトムラウシ登頂後、化雲岳、五色岳、忠別岳を経て白雲岳非難小屋へ、そして12日は旭岳を経て旭岳温泉へ下る計画だった。
しかし、台風10号による豪雨が9日10日の両日にかけて北海道を襲った。増水しているであろうクワンナイ川の遡行を控え、11日以降の様子を見ることとし、10日は旭岳温泉から旭岳、北海岳白雲岳間を往復し、黒岳へ、そして北鎮岳分岐、中岳、中岳温泉、裾合平を経て旭岳温泉へ戻るという行動を行った。
この行程は2日間くらいゆっくり時間をかけて散策するのが普通だと思うが、ほとんど雨の中を9時間ほどで駆け抜けるという強行軍だった。しかし3人とも体調がよく、翌日に疲れを残すということはなかった。
旭岳温泉へ下山後、クワンナイ川の様子見のため天人峡温泉手前にある忠別川とクワンナイ川の出合まで行ってみる。行って見てみると水流はココア色ににごり、水量は多く、険悪な様相で入渓など論外というような状況であった。
8月11日
天候:曇り
タイム:ポンクワンナイ川出合5時40分、魚止めの滝12時30分、クワンナイ川源頭16時15分
前日クワンナイ川の増水の様を見て3人で相談の結果、遡行をあきらめ尾根ルートからトムラウシを目指すことにした。
しかしあきらめきれず、ダメモトのつもりで行動開始前、もう一度見に行ってみる。すると以外にも「昨日ほどの水量はなく、にごりも治まり遡行が可能な状態」だった。
天気予報の降水確率20%と好天の期待も持て、一旦はあきらめたクワンナイ川遡行を決行することにした。
通常クワンナイ川の遡行にはザイルを使用することはないが、今回は増水による渡渉や高巻き時の安全確保のためにザイルを携行した。
「昨日ほどの水量はなく、にごりも治まり遡行が可能な状態」とはいうものの、気を抜ぬいて渡渉できるところは一箇所もなく、小さな淵の通過でも腰より深い深みにはまり、時にはザックの浮力を感じるほどの深みもあった。水温の低さとあいまって「遡行可能ギリギリな状態」といった様で引き際を常に考えながらの遡行だった。
そんな強行軍であったが魚止めの滝へ到着し、以降の増水の心配から開放され30分間大休止をする。
それにしても、今回で4回目のクワンナイ川遡行であるが、過去これほど苦戦を強いられた事はなかった。
普通ポンクワンナイ川の出合から滝の瀬13丁が始まる魚止めの滝までは5時間から6時間程度でいける行程だが今回は7時間近くを要した。
しかも天気予報を裏切り途中ポツリポツリと雨も降り出してきた。不意の増水の可能性もまったくないとは言い切れず、この7時間の工程中休憩したのはほんの2回だけという強行軍であった。
待望の「滝の瀬13丁」。滑床の上に薄い膜を貼るように勢い良く流れる景観。滑らかな岩盤に吸い付く沢靴の感触。そしてところどころ岩盤にびっしり生えたコケ(水生植物か?)はふわふわの緑のじゅうたんの上を歩いているような感触で、わずか1時間足らずの行程であったが3人とも存分に沢歩きの楽しさを味わうことができた。
その後、単調な河原歩きと、2箇所滝の高巻き、そして階段状の小滝群を超えてキャンプ予定地にしていた源頭についた。
源頭では、エゾツガザクラやエゾコザクラなどがまだ見ごろな状態で咲き誇っていた。また、ナキウサギのさえずりだけが響く風もなく穏やかなキャンプサイトだった。
8月12日
天候:曇り時々晴れ
タイム:クワンナイ川源頭5時45分、縦走路6時30分、トムラウシ山頂着8時15分、発8時40分、化雲岳11時10分、滝見台3時、天人峡温泉登山口3時55分
昨日の夕方と同じくほとんど風もなく、ガスも晴れた恵まれた天気の中、出発する。
縦走路に到着後、荷物をデポしトムラウシ山頂を目指す。何度も登っているトムラウシだが、今日ほど見晴らしの利く中を登ったのは初めてであった。
ガスられると迷いやすい山頂付近だが、せっかく天気も良く今後何度もこられるところでもないので北沼のほとりから直接山頂を目指さず、トムラウシ分岐を経由して裏側を巻いてのんびり登ることにした。
トムラウシ山頂ではすでに2パーティが到着しており、また我々の後からも2パーティが到着し、にぎやかな山頂となる。
トムラウシ山頂から天人峡へのくだりでは、時折薄いガスがかかることもあったが、ほとんど風もなく展望が利き、絶好の中の行動で大雪の雄大さを満喫し、満足できる山行だった。