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鹿島槍ケ岳 天狗尾根(2005年3月20〜21日

メンバー:L中谷、甲谷


一泊二日の予定で鹿島槍ヶ岳天狗尾根へチャレンジ。
日程にゆとりはないが天気予報はおおむね良好、降雪の見込みなし。また、この三連休で入山者も多くラッセルは無いだろうとの読みで入った。もしも時間切れになれば、天狗の鼻からの下山も予定していた。

3月20日
天候:晴
タイム:大谷原駐車場発7:15、天狗尾根支尾根取付き着8:35、天狗の鼻着15:05、アラ沢の頭下(C)着16:55

3月21日下降に使った北俣本谷を振り返る。晴天だが稜線には雪煙が舞っている。

 

下山後、大谷原の駐車場から天狗尾根の全景を撮影。

3月19日夜八時横浜発、翌20日AM一時大谷原駐車場着。

朝、目を覚ますとほぼ快晴。駐車場から紺碧の空をバックに天狗尾根の全景が見える。車も20台くらい駐車しておりトレースも大いに期待できる。
駐車場に車を置いて林道を歩き、程なくして二手に分かれる林道を右手に取り、荒沢を目指す。
雪に埋まった河原を歩き、途中2箇所の浅瀬を靴の中をぬらす事無くわたる。
このルートを何度も通い、状況に詳しい中谷さんの話では、今年は雪が多く水が出ていないので楽だという。

荒沢に入り、さらに進むと沢筋は狭まり、取水口の手前に着く。
通常であれば取水口の手前にある、つり橋を右岸から左岸に渡り、取水口の上流を渡渉しなければならないのだが、今回は雪が多く右岸の壁をヘツルような形で通過し、渡渉を免れた。
前からこの天狗尾根も登りたいと思ってはいたが、この取水口の渡渉がいやで今ひとつ煮えきっていなかった。今回この渡渉を免れたことで最大の難関はクリアしたも同然で気が楽になった。

支尾根の急登を一時間程度でのぼりきり天狗尾根に着く。途中オーバーズボンとヤッケを脱がなければならないほどの暑さで絶好の日和である。
高度があがるにしたがい左手に爺ケ岳が立派に見える。

天狗尾根ののぼりもトレースに助けられハイペースで進む。第一クーロアール手前でアイゼンとハーネスをつける。
この第一クーロアールとさらにその上の第二クーロアールは雪が少ないと、もろい岩の露出と氷のミックスで結構厳しいらしい。
取り付きは簡単そうに見えるが上部になるほど傾斜が急になっていて場合によってはザイルがほしくなるかもしれない。また、降雪直後だと雪崩も想定しなければなるまい。
しかし今回は、二つのクーロアールとも雪が豊富に着いている。、しかも先行者のトレースが程よいステップになっいるためノーザイルでまったく不安を感じる事無くクリアする。

第二クーロアールを抜け、一旦少しくだり鞍部より少し長めで急な雪壁が続いていた。先行する5人くらいのパーティーは途中からザイルを使用していたが、我々はそのまま進む。その雪壁を抜けるとなだらかな雪面の天狗の鼻であった。
天狗の鼻着15時5分。好天とトレースに助けられ良いペースだった。しかし好天もここまでで、風が強くなり少し肌寒さを感じ始めた。オーバーズボンとヤッケを着込む。

天狗の鼻を少しくだった天狗のコルには5張りほどのテントが設営していた。今日中に上部の岩場二つを越えテントを設営したいと考えさらに上に進むことにする。

岩場二つとも傾斜はゆるくそして距離も20メートル程度と小ぶりだ。しかし岩が外傾していて、見た目ほど簡単ではない。中谷さん空身でザイルを使い越える。

テント設営を考えていた小屋岩に到着したが、さらにその上の急斜面を越えた地点にテントを設営した。その地点は、東尾根との合流点になるアラ沢の頭直下である。

テントの中で食事をしていると雷鳥の鳴き声が聞こえた。そんな一時もあったが、次第に風が強まりテントをたたく音で静寂はかき消される。ラジオニュースを聞くと福岡で強度の地震発生とのこと。

 

3月21日
天候:晴
タイム:
アラ沢の頭下(C)発7:50、北俣本谷末端着13:30、大谷原駐車場着14:30

昨日夕刻より強くなった風はますます強くなる。準備を整え、6時30分ごろ外へ出る。しかし目が開けられない、呼吸が苦しい、そんな猛烈なブリザードの中でテントを撤収しようとしたが、断念し一旦テントの中に逃げ込む。日程にゆとりがあれば停滞という状況であった。
当然、昨日天狗のコルにテントを張っていたパーティーが登ってきた気配はない。またその後も会っていないから多分下山または停滞しているのだろう。

テントの中で30分ほど二人まんじりともせず状況の改善を期待するが変化なし。ふただびテント撤収にチャレンジ。
最悪の場合テント放棄も考えたが今度は苦戦しながら何とかテントを撤収することができた。

アラ沢の頭までの緩斜面を風に飛ばされないよう、四つん這いになってきわめて遅いペースで進む。耐風のため姿勢を低くするとブリザードで呼吸は苦しい。
アラ沢の頭までは僅かな距離である。東尾根の風下へ回ればこの状況は回避できる。そんな読みと風は強いが3月のこの時期である、寒さは感じない。頑張るのみ。

アラ沢の頭に苦戦してたどり着き、リッジの南側に回り込むと予想とおり風を避けることができ一安心する。
アラ沢の頭から北峰までは目と鼻の先だが風を回避できる下部南側は腰までのラッセル、そのラッセルの先頭の多くを中谷さんに担当してもらう。上部北側は相変わらずのブリザード、しかもナイフリッジ。風に引っ剥がされないよう慎重にのぼる。多分北峰に到着したのは9時ころであったと思う。北峰山頂からは360度のパノラマであった。

直下の北峰と南峰のコルには二張りのテントがあった。我々が昨日テント設営していた時分、東尾根の第2岩峰を登っていたパーティーが見えたが多分そのパーティーだと思う。彼らテントを放棄したのかテントをそのままにして、南峰へ登っているのが見えた。ここまで来た我々同様強風に苦戦しているようでその進む速度は遅い。きっと彼らは一般ルートの主稜線を南下し、冷池山荘を経由し赤岩尾根を下ろうとしているのだろう。
我々も下山ルートの第一候補はそのルートを予定していたが、第二案として、北峰からの下山は雪面の状態がよく雪崩の心配がなければ直接北俣本谷右股をくだることを計画していた。

一般には決して進められないが、我々は長い時間稜線でブリザードに吹かれるより北俣本谷右股を直接くだり最短の時間で北俣本谷末端へつけるほうを選択した。中谷さんは去年の3月にも北俣本谷右股をくだった実績があるのでそれを頼りにさせてもらう。

北峰山頂の風のあたらないところで休憩の後、北峰と南峰のコルから北俣本谷右股の急斜面をくだる。もちろん雪崩を警戒し先頭の中谷さんと私の二人の間隔は50メートル・場所によっては100メートルよりも長くとり慎重にくだる。
このくだりではコルから北俣本谷に入ると稜線で苦しんだブリザードにはほとんどあたらず、急斜面を楽にくだることができた。

くだりは楽とはいうが山頂から本谷末端まで休憩無しの一気のくだりは少々きつい。中谷さんから大きく遅れて、本谷末端20分くらい手前の砂防ダムの上に到着したのが12時ころ。ここまでくれば絶対雪崩の心配はない。充実したこの二日間の山行を振り返り一時間近く大休止をする。

その後、赤岩尾根取り付き点になる北俣本谷末端からトレースのしっかりしたルートを一時間ほどかけて大谷原駐車場に戻った。大谷原駐車場から苦戦して登った天狗尾根の上部が手に取るように見えるのがなんとも感慨深かった。

この二日間を振り返って見れば、期待に違わず、好天と先行者のトレースに助けれら一日目はハイペースで行程をこなすことができた。
そして、二日目は猛烈なブリザードで苦戦し鹿島槍ヶ岳北峰へ到達。久々に印象深く、そしてハイレベルの達成感を味わうことができた山行だった。


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