環六高速道路からの大気汚染物質排出量予測


環境影響評価書のデータに基づいて,大気汚染物質排出量の予測を行なってみました.窒素酸化物排出量につきましては,一審準備書面6−2の骨格となっています.


予測の前提となる中央環状新宿線,環六事業の概要

窒素酸化物排出量予測

浮遊粒子状物質排出量

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予測の前提となる中央環状新宿線,環六事業の概要

1.中央環状新宿線

  起点 目黒区青葉台4丁目

  終点 豊島区高松1丁目

  延長 約10.1km

  往復4車線

  トンネル形式(一部高架)

  設計速度

   本線 60km/h

   出入口 40km/h

  換気所 8ヵ所(内1ヵ所は路外,他は路内の中央分離帯上)

  換気搭 H45m×W15-27m×D7mを2本(神山町は3本)が標準

  1996年度3月完成予定(その後大幅に延長され,2004年3月完成予定)

 

2.環状6号線拡幅事業

  起点 渋谷区松涛2丁目

  終点 豊島区長崎1丁目

  延長 約8.2km

  往復6車線

  幅員 40m(歩道5m×2,車道10.5m×2,中央分離帯9m)

  1996年度3月完成予定(その後大幅に延長され,2004年3月完成予定)

 

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窒素酸化物排出量予測

 計算は多少変則的だが,1日交通量を車種別に分けるのではなく,車種構成により平均した1日1台あたりの排出係数を算出し,1日交通量との積から窒素酸化物排出量を求めた.データは環境影響評価書に基づいているが,一部明らかな(というより故意による)データの誤りは修正した.

1.予測の基礎となる各種データ

@昼夜別,車種別交通量比率

路線名称 昼間 夜間
大型 小型 大型 小型
中央環状新宿線 17.2% 63.5% 5.1% 14.2%
山手通り 8.5% 73.1% 1.2% 17.2%

(出典)現況交通量:評価書資料編 p.214

 時間交通量率と大型車混入率:評価書資料編 p.17,18

 

A昼夜別,車種別NOX排出係数(g/台km)

路線名称 昼間 夜間
大型 小型 大型 小型
中央環状新宿線 1995年 2.907 0.808 2.855 1.036
2000年 2.759 0.778 2.834 1.030
山手通り 現在 3.958 0.630 3.649 0.606
1995年 3.958 0.630 3.649 0.606
2000年 3.751 0.597 3.458 0.575

(出典)評価書案資料編:p.132,133

 最終的な評価書では中公審答申「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について」により,排出係数を大幅に下げているが,これには疑問が残り採用できない

 

B単位交通量あたりの窒素酸化物排出係数の算出(g/台km)

路線名称   昼 間 夜 間 合 計
大型 小型 大型 小型
中央環状新宿線 排出係数(g/台km) 2.759 0.778 2.834 1.030  
交通量比率(%) 17.2 63.5 5.1 14.2  
日平均寄与(g/台km) 0.475 0.494 0.145 0.146 1.259
山手通り 排出係数(g/台km) 3.751 0.597 3.458 0.575  
交通量比率(%) 8.5 73.1 1.2 17.2  
日平均寄与(g/台km) 0.319 0.436 0.041 0.099 0.896

2000年の平均排出係数

 中央環状新宿線 1.259g/台km

 山手通り    0.896g/台km

 

2.中央環状新宿線からの窒素酸化物排出量の算出

中央環状新宿線の交通量と排出量

区  間 距離 2000年交通量 走行量 排出量
(台/d) (台・km/d) (kg/d)
青葉台〜富ケ谷 1.35 91,000 122,850 154.67
富ケ谷〜新宿南 1.45 101,000 146,450 184.38
新宿南〜西新宿 0.65 83,000 53,950 67.92
西新宿〜中野本町 1.35 75,000 101,250 126.47
中野本町〜中落合 3.05 91,000 277,550 349.44
中落合〜南池袋 1.10 86,000 94,600 119.10
南池袋〜高松 1.15 66,000 75,900 95.56
合  計     872,550 1,098.54

(出典)推定日交通量:評価書 p.23-26

 

 年間排出量 = 1.09854トン × 365日 = 401トン

 

3.環状六号線からの窒素酸化物排出量の算出

環状六号線の交通量と排出量

区  間 距離 交通量(台/d) 走行量 排出量
現在 2000年 (台・km/d) (kg/d)
青葉台〜淡島通り 0.30 46,691 40,000 12,000 10.75
淡島通り〜駒場 0.20 46,691 36,000 7,200 6.45
駒場〜東大裏 0.65 45,893 55,000 35,750 32.03
東大裏〜富ケ谷 0.20 45,893 40,000 8,000 7.17
富ケ谷〜井の頭通り 0.45 45,893 30,000 13,500 12.10
井の頭通り〜新宿南 1.00 50,114 32,000 32,000 28.67
新宿南〜補助59号 0.35 47,006 50,000 17,500 15.68
補助59号〜甲州街道 0.30 47,006 45,000 13,500 12.99
甲州街道〜水道通り 0.30 43,433 43,000 12,900 11.56
水道通り〜方南通り 0.60 40,490 45,000 27,000 24.19
方南通り〜補助63号 0.30 40,490 52,000 15,600 13.98
補助63号〜中野本町 0.15 43,367 61,000 9,150 8.20
中野本町〜青梅街道 0.45 43,367 45,000 20,250 18.14
青梅街道〜大久保通り 0.45 41,493 41,000 18,450 16.53
大久保通り〜早稲田通り 1.10 41,493 41,000 45,100 40.41
早稲田通り〜新目白通り 1.05 47,793 41,000 43,050 38.57
新目白通り〜目白通り 0.50 47,793 30,000 15,000 13.44
目白通り〜池袋南 0.60 41,783 30,000 18,000 16.13
池袋南〜補助172号 0.10 41,783 50,000 5,000 4.48
補助172号〜立教通り 0.30 41,783 40,000 12,000 10.75
立教通り〜放射36号 0.30 41,783 40,000 12,000 10.75
放射36号〜高松 0.45 41,783 43,000 19,350 17.34
合  計       412,300 369.42

(出典)推定日交通量:評価書 p.23-26

 

年間排出量 = 0.36942トン × 365日 =  135トン

 

 

4.中央環状新宿線からの排気中の窒素酸化物濃度の算出

@各換気所の排気風量

年 度 単位 神山町 代々木 西新宿 本町 東中野 上落合 中落合 要町 合 計
1995年 m3/s 815 311 370 447 520 519 801 520 4,307
m3/m 48,919 18,712 22,242 26,847 31,239 31,147 48,090 31,224 258,420
m3/h                 15,505,200
m3/d                 372,131,999
2000年 m3/s 934 448 510 460 562 558 821 539 4,836
m3/m 56,062 26,922 30,645 27,627 33,757 33,480 49,307 32,374 290,160
m3/h                 17,409,600
m3/d                 417,855,599

 

A平均NOX濃度の算出

 濃度 = NOX排出量/排気風量

  1,098.54kg/d/417,855,599m3/d = 2.629mg/m3

 重量比を体積比に変換

   すべてNO(分子量30)とした場合 0.0224m3×0.002.629g/30g  2.01ml/m3=2.01ppm

   すべてNO2(分子量46)とした場合 0.0224m3×0.002.629g/46g  1.31ml/m3=1.31ppm

  自動車排ガス測定局におけるNOとNO2の割合

   NO 64.3%  NO2 35.7%

 換気搭排出ガスの平均NOX濃度

  2.01×0.643+1.31×0.357=1.76ppm

 

5.結論

中央環状新宿線からの窒素酸化物排出量は 年間401トン

環状六号線からの窒素酸化物排出量は 年間135トン

 これらの数値がいかに大きなものか,東京都の窒素酸化物削減目標と比べて下さい.

東京都の窒素酸化物削減目標
東京都における平成17年度の排出予測 35,800トン
環境基準達成するための排出量 28,100トン
差引必要削減量 7,700トン

 

換気搭排出ガスの平均NOX濃度は 1.76ppm

 東京におけるNO2の環境基準は日平均の98%値(大きい値から2%分,つまり7日分を除いた最大値)として0.06ppmです.これはNOXの0.1〜0.2ppmに相当します.この値がいかにすごいかお分かりいただけるでしょう.

しかも,計算に用いた屋外の自動車排ガス測定局におけるNO/NO2値と比べて,地下道路におけるはその値ははるかに高いなどの不確定の要素があり,実際にはこの値を上回り,2〜3ppmになるものと考えられます.

 こんな排気ガスをそのまままき散らすのは犯罪です.

 

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浮遊粒子状物質排出量

 

1.中央環状新宿線車両1台あたりの浮遊粒子状物質排出係数の算出

 

中央環状新宿線車両1台あたりの浮遊粒子状物質排出係数
(車種別排出係数と車種別交通量比率から算出)
  車種 g/km・台

最小〜最大

車種別交通量比率(%)
小型車の比率(混入率)     77.7
内 訳 軽自動車 0.075-0.32 0.7
乗用車(ガソリン・LPG) 0.075-0.32 49.3
貨客車 0.080-0.36 16.9
小型貨物(ガソリン) 0.080-0.36 5.3
小型貨物(ディーゼル) 0.270-0.90 5.5
1台あたりの平均排出係数(小型車) 0.070〜0.289g/km・台
大型車の比率(混入率)     22.3
内 訳 普通貨物(ディーゼル) 0.7-1.2 17.5
大型貨物(ディーゼル) 0.9-2.4 3.9
バス(ディーゼル) 0.8-2.2 0.9
1台あたりの平均排出係数(大型車) 0.165〜0.323g/km・台
1台あたりの平均排出係数(全車種合計) 0.235〜0.612g/km・台

東京都環境影響評価条例技術指針関係資料集,資料1−16 浮遊粒子状物質の予測方法のデータに基づき車種別交通量比率について以下の補正を行なった

・車種別交通量比率:アセス資料編 P.171 表3.1.18 年度別車種別走行量をもとに算出

・自動車公害防止計画 P.20の表1-4,表1-5に基づいて,アセスにおける小型貨物は,ガソリン車40%,ディーゼル車60%として,また普通貨物は,普通貨物80%,大型貨物20%として比例配分

・特殊車は普通貨物に,軽貨物は小型貨物(ガソリン)に算入し,軽自動車は4サイクル,2サイクルを区別しなかった

 

中央環状新宿線における浮遊粒子状物質排出係数 = 0.235〜0.612g/km・台

 

2.中央環状新宿線からの浮遊粒子状物質排出量予測

中央環状新宿線からの浮遊粒子状物質排出量
(山手通りの走行量と平均排出係数から算出)
区   間 距離 交通量 走行量 排出量(kg/日)
km 台/日 台・km/日 最小 最大
青葉台〜富ケ谷 1.35 91,000 122,850 28.87 75.18
富ケ谷〜新宿南 1.45 101,000 146,450 34.42 89.63
新宿南〜西新宿 0.65 83,000 53,950 12.68 33.02
西新宿〜中野本町 1.35 75,000 101,250 23.79 61.97
中野本町〜中落合 3.05 91,000 277,550 65.22 169.86
中落合〜南池袋 1.10 86,000 94,600 22.23 57.90
南池袋〜高松 1.15 66,000 75,900 17.84 46.45
合  計 205.05 534.01

 

中央環状新宿線からの浮遊粒子状物質排出量 = 205.05〜534.01 kg/日

 

3.中央環状新宿線からの排気中浮遊粒子状物質濃度の算出

浮遊粒子状物質排出量                205.05〜534.01 kg/日

中央環状新宿線の各換気所からの排気風量の合計   417,855,599m3/日 

 (上記,窒素酸化物排出量予測中4@による)

 

換気搭排出ガス浮遊粒子状物質濃度      0.491〜1.278mg/m3

浮遊粒子状物質の環境基準:1日平均 0.10mg/m3以下,かつ1時間値が 0.20mg/m3以下

 

浮遊粒子状物質は気管支の上皮細胞に障害を与えて喘息を引き起こします.すさまじく汚染された排気ガスが未処理のまま吐き出され,時にそのまま地上に降り注ぐことになるというのに,首都高は対策はもちろん,予測しようとさえしないままに,道路建設を推進しようとしているのです.

 

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