行政訴訟の原告適格に関する質問に対する環境大臣の答弁

環六訴訟の敗訴判決に関連して,2001年2月27日の衆議院環境委員会で,社民党原陽子議員が原告適格拡大についての質問をしました.川口環境大臣の答弁を抜粋して掲載いたします.残念ながら環境大臣としてこの件に対して積極的に取り組もうという姿勢は見られませんでした.元通産省の役人ですからこんなものというところでしょうか.


○原委員 (前段省略)大臣は所信表明の中で,重点的に取り組む施策の第三番目として,国民の安心と安全の確保を挙げられ,この中でも自動車排出ガスに起因する大気汚染対策を第一番目に挙げられております.このことに関してお尋ねをしたいと思います.

大気汚染防止法によれば,「大気の汚染に関し,国民の健康を保護するとともに生活環境を保全し,並びに大気の汚染に関して人の健康に係る被害が生じた場合における事業者の損害賠償の責任について定める」とあります.また,自動車NOx法では,特定地域の総量削減が課されると書いてあります.ただし,現状では,尼崎や名古屋などの訴訟で見られるように,ようやく被害が起きた後に住民が勝訴や和解ができるようになりました.しかし,本来,予防原則に基づいて,公害が起きる前に裁判が起こせるようになるべきではないでしょうか.

現在,内閣府のもとで司法制度改革審議会が開かれています.そこでは,司法の行政に対するチェック機能のあり方についてというテーマでも話し合いが行われており,実は,このことと大気汚染対策が深く結びついているのではないかと私は思っています.

この審議会の中では,行政法の専門家で立命館大学の園部教授,東北大学の藤田教授,そして弁護士の山村氏,このお三方が共通して同じ問題を指摘されています.それは,司法による行政チェック機能が低いということです.環境保全にとって私はこれは大変不利なことだと考えますが,大臣の所信の中には,裁判制度とのかかわりについてのお考えが含まれておりませんでしたので,この点,つまり,司法による行政チェック機能が低いという点について大臣はどのようにお考えをしているか,お尋ねをしたいと思います.

○川口大臣 (前段省略)それで,質問のお答えでございますけれども,未然防止ができるようにというお話もございましたが,行政上の取り組みといたしましては,例えば大気汚染に対応するための仕組みといたしましては,自動車NOx法ですとか大気汚染防止法ですとか,そういった法律による規制のほかに環境アセスメント制度というのがございまして,地域住民の意見を幅広く聞くということの仕組みがございまして,まず,環境行政をする立場としては,これらが適切に運用されるということが大事だというふうに思っております.

それから,同じく去年の夏まで永田町,霞が関の外にいた人間といたしましては,行政に対するチェックが,司法のみならず普通の国民からも十分に行われるということが大事だというふうに思いますけれども,司法の問題ということで申し上げますと,現在,司法制度改革審議会で司法制度に係る幅広い,これはこの問題だけではなくて,非常に幅広い議論が行われていますので,司法の行政に対してのチェックという意味では,その議論をもう少し見守らせていただきたいと思っております.

○原委員 質問の続きになるのですけれども,例えば道路ができる計画段階で将来的に大気汚染が予測できる場合は,やはりその周辺住民が裁判を起こし,原告適格とみなされるようにならなければ,大臣が所信の中で表明をされた国民の安心と安全の確保は実現されないと思います.常に公害が起きた後で損害賠償を求めることができるだけではやはり私も不十分であると考えます.

大気汚染防止法の強化や環境影響評価法の強化により,例えば,道路の計画段階であっても訴訟が起こせるような立法措置を検討していかなければならないと思いますが,このことについて環境大臣としての御見解をお尋ねしたいと思います.

○川口大臣 国民の皆様が政策についてどうお考えになるかということは,その政策評価ですとかアセスですとか,いろいろな仕組みで真剣に取り組んでいくことが重要だというふうに思っております.

行政をどうチェックするかということについては,先ほど申しましたように,審議会の動向を見守りたいと思います.

 

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