道路政策モニターでの発言


国土交通省道路局では「今後の道路政策はどういった観点からすすめていくべきでしょうか。みなさんで意見交換する場を設けました。会議室へのご参加をお待ちしております。」ということで,道路政策モニターというページを解説しています.この場を真に意味のあるものとするために,現実の道路問題に直面している私たちが積極的に意見を述べていく必要があると思います.皆様の参加を期待しています.閲覧,発言(登録制)は,道路政策モニター(http://www.monitor.jice.or.jp/)で.


誘発交通が道路建設の効果を相殺する(2001年2月26日)

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誘発交通が道路建設の効果を相殺する

2001年2月26日   

 

しばらく様子を見ていましたが,そろそろ本格的な議論を仕掛けたいと思います(長文失礼).

第1弾は誘発交通です.

この言葉は,1996年11月7−8日にパリで開かれたヨーロッパ交通大臣会議第105回ラウンドテーブルの記録,に登場します.この記録の全文は入手していませんが,要約は以下のホームページで閲覧することができます.

http://www.oecd.org/cem/online/conclus/rt105e.pdf

Infrastructure-Induced Mobility, ECMT Round Table 105, OECD, 1998

 

その中から混雑緩和をめざして行われる道路建設の運命についての議論を紹介します.

○基盤整備によりキャパシティーを増加させれば交通容量を増加させ,それに平行して環境を悪化させると一般的にいえる.

○道路建設により誘発される交通の量は,道路計画の規模,道路混雑状況,地理的・経済的条件,代替手段の有無により変わってくるが,自動車の利便性を阻害することとなる.特に混雑が激しくなれば道路計画全体の価値が著しく低下する.そうした影響は,数年あるいはそれ以上に継続する.こうした事実を直視するならば,道路建設の上に立った輸送計画を見直し,交通を管理し,減少させる有効な対策の必要性は明らかであろう.

○誘導された交通には地域の利点があったとしても,一方で道路混雑を生み環境を害するため,しばしば利点を相殺する.その影響は混雑度によりことなり,現に混雑しているエリアでは利点は極めて小さいかむしろネガティブである.既に交通量が飽和に達している地域での新しい計画は,新たな交通を誘導するだけというおなじみの結果となるに過ぎないからである.都市圏では混雑緩和のための新しい道路の建設は,利用しやすさの改善にはつながるものの,結局成功する見込みはない.

 

イギリスでは,これまでの道路建設を検証した結果,108路線全てで道路建設が自動車を誘発して本来の目的を達成できなかったといいます.

こうして,ヨーロッパでは誘発交通に対する考慮を欠いていたことを反省し,今後の輸送計画として交通を管理し,減少させる対策を模索しているのです.

 

翻って日本ではどうでしょうか.相変わらず渋滞緩和を目的とした道路作りに躍起になっているのです.可住面積あたりの道路密度世界一を誇る日本に,渋滞緩和を目的とした道路が果たして必要なのかどうか.ヨーロッパの見識に学んで根本から考え直す時代になっているのではないでしょうか.

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