道路・公害に関する資料集


インフラ整備に誘発される交通 

環六関係区における公害病認定患者数の経年変化

窒素酸化物濃度の経年変化

交通整備財源の実質的な負担者

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インフラ整備に誘発される交通 (要約)

Infrastructure-Induced Mobility, ECMT Round Table 105, OECD, 1998

1996年11月7−8日にパリで開かれたヨーロッパ交通大臣会議第105回ラウンドテーブルの記録

1. 基調報告のまとめ

 基盤整備によりキャパシティーを増加させれば交通容量を増加させ,それに平行して環境を悪化させると一般的にいえる.人々の反応は移動経路,移動様式の変更など多様であり,交通量の増加もかなりの幅がある.しかもその反応は時間と共に変化し,交通のパターンも次第に変わって来る.しかし,道路建設は交通混雑の緩和や環境改善には結びつかず,新たな道路容量の付加は新たな交通需要を誘導していることが明らかである.

 道路建設により誘発される交通の量は,道路計画の規模,道路混雑状況,地理的・経済的条件,代替手段の有無により変わってくるが,自動車の利便性を阻害することとなる.特に混雑が激しくなれば道路計画全体の価値が著しく低下する.そうした影響は,数年あるいはそれ以上に継続する.こうした事実を直視するならば,道路建設の上に立った輸送計画を見直し,交通を管理し,減少させる有効な対策の必要性は明らかであろう.

 鉄道輸送では,スペインでの新幹線建設は旅客輸送の大きな伸びに見られるように,供給は新たな輸送の獲得に確実に結びついている.

 インフラ整備は間違いなく輸送力増強につながる.しかし長距離輸送の場合,それは交通量の多いルートに輸送を集中させる結果となる.一方市街地では,特に公共交通ではユーザーが料金が輸送力改善より料金が大きな意味を持っている.

 このように,行動の長期的な変化は,輸送の変化からその一部は理解できるかもしれない.しかし,社会の変動といった別の分析も必要だろう.

 移動や輸送のあらゆる形態はそれぞれのニーズに対する反応の結果である.政策決定者は,それらが本当に意味のあるニーズなのかどうかを吟味し,人々の要求がどこにあるのか正確に把握しなければならない.さらに,正確な数値が得られるのは総交通量だけであって,誘発された交通量は推定に過ぎないという点にも留意しなければならない.より正確な推定については今後さらに議論の対象となるだろう.

 

2.討論の結論

 誘発された交通は,輸送力増強,延長または高規格化の結果,それを利用する人達によって新たに付け加わった交通と規定できる.

 多くの輸送を生み出すのは道路容量の増加ではないことに注意しなければならない.誘発された交通は,経済的,社会的アクティビティーによるものである.道路容量の増加は,移動時間の短縮を生み,移動のパターンを変化させる.それは生活や仕事の形態の大きなファクターとなり,その結果として交通量の自然増を上回る,新たな移動が生み出される.

 交通容量,特に道路容量の増加は新たな交通を生むことは経験的,歴史的,そして理論的に確かである.しかし新たなインフラ整備がどの程度の交通を生み出すのか,100%の確度で予見することはできない.誘発される交通量は地域的,経済的な状況により大幅に変化するのである.人々の収入の状況,自動車のランニングコスト,その他の経費などに特に敏感である.局所的には,計画の規模,混雑状況,土地利用計画,代替経路,代替手段に依存するであろう.

 道路建設の場合,交通量の増加は短期的には10%,長期的には20%程度,状況に応じて0ないし40%の範囲であると予想される.

 誘導された交通には地域の利点があったとしても,一方で道路混雑を生み環境を害するため,しばしば利点を相殺する.その影響は混雑度によりことなり,現に混雑しているエリアでは利点は極めて小さいかむしろネガティブである.既に交通量が飽和に達している地域での新しい計画は,新たな交通を誘導するだけというおなじみの結果となるに過ぎないからである.都市圏では混雑緩和のための新しい道路の建設は,利用しやすさの改善にはつながるものの,結局成功する見込みはない.

 交通が誘導される原因については,その実態と共に実は余りよく分かっていない.我々が測定できるのは交通総量であって,それを以前から存在していた交通と新たに加わった交通とに分解することはできない.実態調査のためには,整備の前後,それに後日のフォローアップ調査を実施する必要がある.トリップの変化は,安定するのにある程度時間を要するし,予想外の影響もあり得るからである.例えば鉄道建設の場合,人々は自動車が頼りの郊外にすむことが可能となるため,道路交通も誘発し得る.道路交通を誘導するのは新規の道路だけではない.

 これらの現象を把握するための誰もが納得できる方法はない.実態調査と理論的モデルの組み合わせの様な,相補的なアプローチこそ期待される.政策決定者のためという視点に立てば,こうした相補的アプローチや統計の集積が重要である.最後に,交通が生活スタイルの大きな変化(例えば2台目の車,ショッピングセンターの広域化,余暇のためのトリップの増加)がどれだけ交通の誘発に影響しているか繰り返す必要はない.それらはすべて新たなインフラ整備の必要性の判断を迷わせる.同時にインフラの提供はライフスタイルに影響を与えるのである.

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環六関係区における公害病認定患者数の経年変化

  法 認 定 都 条 令 認定  条令
年度  新宿  目黒  渋谷  豊島  新宿  目黒  渋谷  豊島 世田谷  中野  19区  23区
1981 1342 1102 942 1084 11 3 3 1 1451 889 29159 4391
1982 1451 1139 1026 1156 7 2 5 2 1420 936 31340 4477
1983 1587 1222 1098 1266 7 4 7 1 1462 1031 33467 4880
1984 1759 1263 1204 1344 5 3 6 0 1497 1101 35736 5171
1985 2007 1310 1321 1426 5 1 5 0 1599 1184 37957 5616
1986 2217 1363 1449 1513 6 2 6 0 1688 1192 40211 5987
1987 2475 1423 1577 1632 5 2 7 0 1701 1193 43261 6357
1988 2550 1414 1519 1676 138 57 57 46 1649 1196 43584 8223
1989 2409 1317 1411 1596 315 149 105 137 1619 1219 40836 11178
1990 2280 1212 1328 1471 441 225 154 219 1631 1226 37928 13919
1991 2188 1127 1258 1401 576 268 195 272 1752 1262 36068 16596
1992 2085 1048 1177 1339 654 344 224 308 1877 1336 34218 19351
1993                        
1994 1950 929 1043 1103 870 467 327 435 2048 1476 30723 25765
1995 1883 869 974 1051 862 551 292 487 2204 1576 29286 27267
1996 1797 806 905 1000 805 668 357 562 2363 1456 27670 27651
1997                        
1998                        

法認定:公害健康被害補償法による認定.23区内では19区が指定地域.1988年以降は指定地域解除となり,新規認定なし.

条令認定:東京都の認定による医療費補助.18才未満が対象.

 

コメント

 この表はまだ未完成です.

 1987年までは豊島,新宿,渋谷,目黒に比べて中野,世田谷では都条令認定患者が非常に多くなっていますが,これらの地域は法の指定地域に認定されていなかったからです.1988年に指定が解除されると,死亡や転出により法認定患者の数は減る一方なのに対して,仕方がなく都条令の認定を受ける患者の方が激増しました.しかし,この場合は18才未満が対象ですから,いずれ認定が解除されてしまいます.子どもの数が減少しているのにもかかわらず,認定患者の数がじわじわ増えているのは,それだけ健康被害が深刻化していることを意味しています.

 ぜんそくは低年令の病気で成長と共に直るものと思われてきましたが,最近では高学年になっても回復しない傾向にあります.また,高年令者での発病も多く,その場合はより深刻な病状です.指定地域解除で公害病は終わったなどとのんきなことを言っている場合ではないのです.

 

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交通整備財源の実質的な負担者(雑感2000年10月23日を転載)

道路特定財源について考える中で(9月20日雑感参照),道路,鉄道,空港で,実質的に利用者が負担している割合がどれだけで,一般財源でまかなわれているのがどれ位なのか,比較したデータが欲しいと思っていたところ,知り合いより次の2つの文献を紹介していただいた.

松中・中川・小西・高木「各国の交通制度の変遷を踏まえた交通整備財源の実質的な負担者の比較」土木計画学研究・論文集No. 15, 1998年9月、pp. 195-204.

松中・中川「交通整備財源の負担者比較手法を用いた事業種別の財源構成」土木計画学研究・論文集No. 14, 1997年9月、pp. 43-50

まだ十分に読み込んでいないが,中々役に立ちそうな資料だ.たとえば,税金(道路特定財源等)も含めた利用者負担率をこの資料に示されたデータから計算すると,道路整備65.1%,鉄道整備81.3%,空港整備89.3%となり,逆にいえば道路整備の35%は国と地方の一般財源によりまかなわれているのに対して,鉄道は19%に過ぎないことになる(下表参照).

さらにこれを実際の金額で見るととんでもない現実が見えてくる.すなわち,平成4年度予算に見るトータルの額は,道路12兆2332億円,鉄道1兆5880億円,空港8796億円で,その内一般財源(つまり利用者負担とはいえない部分)からの支出額は,道路4兆2685億円,鉄道2977億円,空港941億円である.つまり圧倒的な大きな金額の税金を道路整備につぎこんでいるのだ.これでは鉄道貨物など勝負になる訳はない.国民の貴重な財産であった鉄道を衰退させてまで道路,自動車に奉仕し続けて来たことのつけはあまりに大きい.

表 平成4年度予算に見る交通整備財源の実質的な負担者の比較
  予算額(億円) 利用者負担(道路特定財源等含む) 一般財源負担(利用者負担外)
額(億円) 額(億円)
道路整備 122,332 79,647 65.1% 42,685 34.9%
鉄道整備 15,880 12,903 81.3% 2,977 18.7%
空港整備 8,796 7,855 89.3% 941 10.7%

 

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