ついに決裂した公害審査会での調停手続き


某MLへの投稿 (1998年4月24日)

 都道環状六号線拡幅事業とその地下の首都高速道路中央環状新宿線建設事業の沿道環境対策をめぐって、7年以上にわたって交渉の場となっていた東京都公害審査会の調停手続きは、本日4月23日をもって調停不成立、不調となり終結しました。調停委員会から調停案の提示があり、東京都が拒否する中、しばらく検討させてほしいという首都高速道路公団の対応を若干の期待をもって見守ってきましたが、やはり拒否の回答を寄せてきたことを受けて、委員会としてもこれ以上手続きを進めることは無理と判断、不調となったのです。「東京都や公団の拒否の理由は明確でなく理解できない、大変遺憾に思う。被申請人は公共体であり、今後沿道住民の不安を払拭するよう最大限の努力をしていただくことを強く希望する」という調停委員長の最後の言葉がせめてもの慰めとなりました。

 調停不成立の本当の理由は、要するに東京都や首都高速道路公団といったいわばお上は住民など下々のものと一切約束などしない、という姿勢につきます。調停案は最初の提示から被申請人の意見をいれて次々と後退していました。最後の調停案などほとんど骨抜きです。たとえば、地下高速道路からの排ガスを出す換気搭に脱硝装置の設置を求めている件では、最終的には「脱硝装置を設置するかどうか検討する」というほとんど意味をなさないものでした。そして事実は脱硝装置の設置を東京都や首都高速道路公団は検討しているのです。それでも調停は受入れられない、というのです。

 公害審査会は公害紛争処理法に基づき、公害をめぐる争いを調停という形で納めようとするもので、国の公害等調整委員会と、各都道府県の公害審査会とがあります。都道府県のものは権限が弱いのですが、それでも調停の成立を本当に目指すのなら、最後には両当事者に調停の受入れを勧告するという手段もあり、私たちはそれを強く求めました。しかし、被申請人側が受諾の可能性がない中では勧告はできない、とあくまで及び腰でした。これでは何のための勧告制度か分かりません。環境保全に関わる公的機関は上は環境庁から下は各自治体の機関まで、どうしてこんなに弱いのでしょうか。

 これまで調停の内容は公表しない、という公害紛争処理法にしばられて私たちはあまりオープンにすることができませんでした。テレビの取材などでいくらか流れたのを強く非難してくるのです。相手は公共機関であり何をいうか、という怒りを抑えながらも公表は控えるようにしてきました。不調になった以上、機会を見つけてすべてを公開したいと思います。

 以上,まずはご報告まで。

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