『テーマ館』 第31回テーマ「2000」


幻想手鏡。 SOW・T・ROW 2000/01/11 13:23:27


      小さな小さな手鏡を、手に取り眺めて笑ったら、
      ころりかわいい女の子、ひそかひそかに笑ってる。
      (刺しても刺しても、死ねないの。もう体中血だらけよ)
      「くすくすくすくす、死ねないの?もうどれくらい傷がある?」
      (もう数え切れないよ。2000回くらい刺したかな)
      「くすくすくすくす、本当に、ちゃんとお胸を刺してるの?」
      (お胸はなぜか刺せないの。いっつも腕や足ばかり)
      「くすくすくすくす、そんなんじゃ、2000回でも死ねないよ」
      周りは腐った匂いだけ。注射器、空瓶、転がって、
      腕には真っ赤な斑点が、お花のように咲いている。
      「くすくすくすくす、ねえねえねえ、あなたは何でそんなに死にたいの?」
      (私がなんで死にたいか。それはあなたが死んだから)
      「くすくすくすくす、私はね、死んでなんかいないのに」
      (私がこの手で殺したの。車が転がり、崖の下)
      「くすくすくすくす、転がって、車の中はぐちゃぐちゃに」
      (気付けばあなたは死んでいた。潰れて死んだ私の娘)
      割れた手鏡翳しては、女は白く笑ってる。
      小さく悲しく囁いて、奇麗な顔で微笑んだ。
      (あれは全部あたしのせい。あなたを1人にした私)
      「くすくすくすくす、そうだよね、私はあれから1人だけ」
      (私もすぐに行きたいの)
      「・・・・・・・」
      (あなたが孤独に入る所。私も早く行きたいの)
      「だったらお胸を突きなさい!」
      白く笑った女の手、腐って錆びてるカッターを、
      いっぱいいっぱい伸ばしきり、真っ赤な服につきたてる。
      吹き出し、流れる血血血。崩れた女は池の上。
      最後の最後に笑ってた。注射器、空瓶見つめつつ。
      「(私の可愛いヨウコちゃん・・・・・・・)」

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