第41回テーマ館「飛行機」



わいわいわい 原千円札 [2001/09/09 00:02:15]


黒い飛行機に乗って、そいつはやってきた。

それは私がいかだに乗って太平洋を横断に挑戦していた時の事だ。
私は、誰にも言わずに、密かに挑戦した。
アパートの大家にも、愛する恋人にも、両親にも。
心残りはあったが、出発する時は不安のみで、置いていく人達の事なんぞ忘れてしまっていた。
その為、罰を受けたのかもしれない。
出向して三日目、いかだは嵐に襲われていた。
……諸君、歌手ではない。
……京都にある山でもないぞ。
笑い事ではないのだ。
私は、いかだの体制を整える事に無我夢中だった。
いかだは最高90度にまで傾いたと記憶している。
……分度器で測れるか!
冗談ではない。本当にそのくらい傾いたと私は思った。
もとい、肌で感じた。
何度も吐いたよ。あまりの揺れと恐怖から、胃の中は空っぽになった。
……ビニール袋なんぞ使えなかったよ。
……なに? 海水汚染だって?
必死だったのだ。そんなこと考えられるか。
私はとにかく、無事嵐を乗り切った。
……死んでたら私はここにいるわけないだろう!
気がついた時に、嵐は去っていったのだ!
……ああ、おそらく眠っていたのだろう。
疲労でくたくただったからな。
幸いにも、怪我はなかった。
いかだにも損傷は少なく、無事航海を続ける事が出来た。
……そうだ。
そんな時だ。私がもう大丈夫だろうと安心していた時だ。
飛行機の爆音が聞こえた。
私は驚き、空を見た。
すると、空で黒い飛行機が浮いているのが見えた。
私は驚き、いろいろな事を考えた。
私は自国に戻されるのではないか?
私は国境を越えたため、不法侵入者として囚われてしまうのではないか?
とにかく、嫌な事ばかり頭に浮かんだ。
しかし、実際はもっとひどいものだった。
その黒い飛行機はいかだに近づいてきた。
かと思うと、いかだの脇にずざああああという音とともに着水した。
私は、飛行機に乗っている人間ばかり気にしていたね。
無事着水した飛行機には、一人の男が乗っていた。
そして、彼は紙を取り出して、こう言った。
「はんこお願いします」
私はどういうことか、全く意味がわからなかった。
しかし、その紙を見てようやくわかった。
その紙にはこう書いてあった。
「離婚届」と。
……笑うところではないぞ、諸君。

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