第41回テーマ館「飛行機」



わたしはぼんやりすわっている いー・あーる [2001/09/25 12:56:19]


 わたしはぼんやりすわっている。
 午後の陽射しは、奇妙に傾いている。
 ふと心配になって、腕時計を眺める。
 日の傾きは、予想よりも2時間ほど早い。

 わたしはぼんやりすわっている。
 公園の、日を遮るものの無いベンチに、長々と。
 ……もうそれだけ秋になっている。
 日光はまだひりつくような熱を含んでいるが、大気は冷たい。
 ひんやりと。
 透明度を確実に増して。

 わたしはぼんやりすわっている。
 公園の隅に、曼珠沙華の花が数本。
 傍らのアパートの灰色の壁を背景に、その色はどこか褪せて見える。
 それともそれは、既にセピアの色調を混ぜた、光のせいだろうか。

 時折、思う。
 わたしはどこまできたのだろうか。
 生きる、という過程が、一体どこで途切れるのかを知らない。
 恐怖ではなく、自棄を憶えるでなく。
 しんとして。
 そこにある、確実な乾いた手触りの。

 空っぽの己の中に、静かに響く疑問符。

 静かな轟音。

 すう、と、風がなだらかに吹く。

 わたしはぼんやりすわったまま、空を見上げた。

 鼻腔奥深く染みとおるような蒼い空に、飛行機雲が一筋流れていた。

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