「飛ばない飛行機」 しのす 『19時30分の飛行機でアメリカへ行きます。 もしもまだやり直せるなら… 芳美』 あたしの置き手紙は見られることなく。 それともすぐにゴミ箱行きか。 人の心を試すなんてしなければ良かった。 試したつもりが、試されて。 神はそんなあたしにいじわるをして。 予定時刻に飛行機が飛ばないなんて。 エンジントラブルで飛ばない飛行機。 ラウンジで待つ。 「よしみ!」 ラウンジへの入り口で叫ぶ彼。 来てくれたんだ。 あたしは神のいたずらに感謝した。 「ゆうま!」 あたしは彼に駆け寄った。 入り口から飛び出して抱きつこうとするあたしを押しとどめて。 彼は言った。 「三万、返してくれ。どこに行こうと勝手だが」 戻る