第33回テーマ館「天使」


私の天使。 SOW・T・ROW [2000/05/04 00:15:51]


私にはとっても大切な相棒がいるの。
天使のカルマ。いい名前でしょ? 私は気にいっているわ。
体は私の半分ぐらいあって、頭にワッカが付いている。白い羽もあるのよ。
天使と言ってもぬいぐるみ。私の問いに答えもしなければ、叩いても痛がりもしない。
でもね、いつだって笑顔で私の話を聞いてくれるの。
話題はいつだって、恋愛話。恋多き年頃の私は、カルマにいつも愚痴を言う。
それを、変わりなく聞いてくれる。顔が変わらないのも、当たり前なのは分かっているけど。
それでも、私は安心する。だってこの子は・・・・・・。
今日も、私はベッドの上でこの子に話し掛けるの。彼の事を。
「ねえ、カルマ」
寡黙の天使。聞こえは良いけど、実物は少し間抜け。
「彼がね。私を怖いって言うの」
赤い糸で作られた口。黒い多きなビーズの目。固い布で作られた鼻。
「何でかな。みんな、私の事、怖いって言うよね」
腕を握って、閉じたり開いたりする。それが、頷いているみたいで面白い。
「好きな人にはさ。好きな人間でいて欲しいもん」
右手を上に突き出す。それが、私の言葉に賛同してくれているみたいで勇気が出てくる。
「皆、我侭だよね? 私のお願い聞いてくれないなんて」
頬を掴む。そして、横に引っ張る。赤い口が広がる。笑っているみたいだ。
「彼の顔って、少し長いの。だからね、縮めたいの。だから病院行ってって言っているのに、
彼ったら聞いてくれないの」
腕を再び持って、胸の前で組ませる。一緒に考えてくれている。
「性格もね、もう少し暗くなくちゃ駄目。あまり喋っちゃ駄目って言うのに、
彼ったら私に色々話しかけてくるのよ。酷いと思わない?」
その体勢のまま、頭を前に倒す。私の話を聞いてくれている。そして、頷いてくれている。
「やっぱり、私の事分かってくれるのはお前だけなのかなぁ? カァルマ?」
本当にそう。この子だけが私の事を分かってくれる。
そして、この子が、私の理想なの。本当は皆カルマみたいになって欲しい。
でも、それは無理だって分かっているから、本当に気に入らないところだけ変えたい。
なのに、今までの恋人は、皆、私の願いを聞いてくれない。
ぬいぐるみとじゃ結婚できないし、愛も確かめられない。
どうしてもカルマに近付いて欲しいのに、必ず私を怖いと言って離れていく恋人達。
皆、我侭だ。何で、私の言う事を聞いてくれないのだろう。
でも、いいの。少なくとも今までの恋人達は、最後にはちゃんと私の理想になってくれたから。
「ねえ、カルマ?」
そう言って、ベッドから立ち上がり、その大きな体を抱き上げた。
ごつごつした感触がある。少し臭いもする。私の子供の頃からの古い相棒。
「彼にも、カルマになってもらおうかなぁ? ねえ、カルマァ」
私の頭よりも上に持ってくる。すると、お尻の所から何かが覗いていた。
それは、白くて、少し赤がついていて、細長くて、先が膨らんでるもの。
昔いた恋人達。その内のどれか。
「駄目じゃない。逃げようとしたの? 駄目。貴方はカルマになったのよ。
私の恋人だったときに、言う事を聞いてくれれば今にはもう結婚できたのに」
駄目だったから、彼にもカルマになってもらった。私の新しい恋を応援してもらう。
お願い聞いてくれなかったんだから、これくらい当然の償いよね。
その白い物を中に押し込むと、カルマの体のゴツゴツが動いた。
「皆、私の恋を応援してね」
カルマは、赤い口で笑う。白い羽には、少し赤が混じってる。
もうそろそろ、彼も駄目かな。なら、カルマの中に入ってもらおう。次の恋の為に・・・・・・。