第33回テーマ館「天使」


みせられた夢 らいくん [2000/06/05 16:36:57]


ある日夢をみた。とてつもなく恐ろしい夢だ。
それは自分が天使によって地獄へ連れて行かれるという夢だった。

夢の中で地獄を見た。自分は針の山を歩いている。
針の山には血で塗れている錆びた長い針が無数にあった。
そこから、どこに流れているのかわからない真っ赤な長い川が一本あって
燃える舟に沢山の人を乗せて、ゆっくりと川を渡っている。
自分の近くには火に焼かれ続けている真っ黒な人々や、体中にさびた長い釘を
刺されて歩いている人々がいる。その表情には人間という表情はなく。
感情は一つのみで、悲しみを越えてしまった苦痛の表情しか見受けられない。
自分にはそれが、とてつもなく残酷に見えた。

ある日夢をみた。とてつもなく恐ろしい夢だ。
それは自分が天使によって天国へ連れて行かれるという夢だった。

夢の中で天国を見た。自分は古めかしい駅のホームにいた。
駅は一面に広がる麦畑の中にぽつんとたたずんでいる。
そこから、どこへ向かうのかわからない線路が一本ひかれていて
ものすごく長い汽車が白い蒸気を出しながらゆっくりと走っている。
駅のホームにいる人々は、だたひたすらに幸せそうな顔をしている。
しかし、そこにいる人たちには幸せの表情のみしか無い。
感情はそれ一つのみで、悩みもなく怒りも悲しみも見受けられない。
自分にはそれが、とてつもなく冷酷に見えた。

ある日夢をみた。とてつもなく恐ろしい夢だ。
それは自分が天使によって現実へ連れ戻されるという夢だった。

夢の中で現実を見た。自分は都会のまっただ中にいる。
都会は一面のコンクリートに覆われ、幾本ものビルが天に向かってそびえ立っている。
そこから、どこに向かうのかわからない道が無数に走っていて、
その道を沢山の黒いガスを出す車が走っている。
自分の周りを歩く人々は、それなりに豊かな表情をしている。
しかし、そこにいる人たちには何か大切な表情欠けているように見える。
感情は沢山あるのに、他人を敬うような表情が足りない。
自分にはそれが、とてつもなく無惨に見えた。

ある日夢をみた。とてつもなく恐ろしい夢だ。
それは自分が天使を刺し殺しているという夢だった…。