第76回テーマ館「朝起きたら…」



雨の日 はなぶさ [2010/04/16 01:12:13]


朝目が覚めると、ぽつぽつ音が耳に入ってきた。薄暗い部屋から少し明るい
窓を見ると、白い空が見える。それほど曇っていないのに、雨なんだな。

雨は気持ちを沈ませるから嫌いであり、好きでもある。明るすぎないためか
地上の色彩が目にしみるから好きでもある。つや消しの赤に色の質感を
再認識させられるから好きでもある。結構好きなのかもな。

ただ、昨日までいた黒い髪の後姿は見えない。うっすら寒い空気が
春なのか冬なのか、それとも。寂しいから、やっぱり雨の日は嫌いだな。

こんな日に雨なんて。晴れてくれさえすれば、気持ちよく立ち上がれた
のにな。もう二度と立ち上がりたくない、そんな気持ちで外を見てみる。

目なんて覚めなければ良かった。もう一日寝て、そうすれば晴れが
私の前に現れてくれるだろう。そう思ってもう一度毛布に包まる。

十分後、電話が鳴り私は毛布から引きずり出されて受話器を
握らされて、声を出さざるを得ない立場に追いやられた。

何のために生きているのかはわからない、けれど。
外の雨に濡れてみるかな。

きっと、冷たい水滴が私の赤い血に染み込んで
少しは自分を動かしてくれるだろう。

そう。



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