第67回テーマ館「誕生日」



ダイヤル110を回せ! 大津庵 [2007/11/22 04:52:57]


会社帰りにコンビニで弁当を買う。
ふとレジ後ろの時計に目が留まる。午前1時。
無意識にため息がでた。
ここのところ残業つづきで一日中、眠気に襲われるうえ常に疲労感が尾を引いている。
数時間後にはまた満員電車の中だ。
食事して、風呂に入って、資料を整理して・・・といろいろ考えながら歩いていると胸
ポケットで携帯電話が震えた。
『誕生日おめでとう!風邪ひかないようにきをつけてネ。年末には帰ってくるのです
か?』と母親からのメール。そういえば今日はワタシの誕生日だ。
それほど重要なことではない。いつもと変わらぬ一日。
今日も今日とて馬車馬のごとく働くのだ。なかば己に言い聞かせるようにして重くなっ
た足に力をこめる。
ようやくアパートに到着した。
ポストからはみ出た紳士服の割引ハガキ『お誕生日おめでとうございます』の文面に、
またか、と思いつつ部屋のドアを開けた。

その瞬間、真っ暗な部屋に電気が煌々と点灯し、老若男女の様々な声が轟いた。
打ち鳴らされるクラッカー。とびかかる色様々な紙テープ。
「おめでとう!」「ハッピーバースデー!」「まってたよ〜」自室にこれでもかと、ひ
しめいた老若男女様々な人々が喜色満面に優しい言葉を投げかける。
なにをいわんや、やがて総勢数十名ともいえる人々がハッピーバースデーの歌を合唱し
はじめた。お約束のように「ディア〜」のあとの名前の部分でグダグダになったが合唱
が終わり、マイナスイオンが発生してるんじゃないの?と思うほどの滝のような拍手が
周囲に轟いた。
「あ、あんたたち・・・・」拍手に包まれながら身体を振るわせる。

「あんたら、だれだぁああぁあああぁぁっっっ!!!???不法侵入で訴えるぞ!!」

夜の闇にパトカーのサイレンが響く。


戻る