「躍動するふくらはぎ」 by ゆびきゅ こんな奇怪な鉛色の空に、私は約束をせびる子どもの小指のように身体を一直線に伸ばし飛び込む。 目の前を通りすぎるのは薄絹の迷宮、しなやかな雪崩。 棺桶から這い出せ! 断崖を恐れるな! かくも巨大な棺桶は、私のふくらはぎを戯れに似せ、深い地獄へたぐり寄せる。 新しい都のように秩序をまとった蜘蛛の巣は、 太陽さえも知らない女に、その背中を撫でさせようと待ち構える。 首を丸め、羽を抱いた可愛らしい白鳥。 花咲くように空のさなかにのぼってくる。 まもなく私は沈むのだ。残酷な棺桶に鎖でつながれるのだ。 おお神よ! 望みはただひとつ。 私のこのむき出しの手のひらの海に、彼女を溺れさせたいのだ! 真っ白な月を、砂漠の涯てに叩きつけてやりたいのだ! (投稿日:10月29日(木)23時12分30秒)