『テーマ館』 第23回テーマ「ブロック」
「落語5」 by ゆびきゅ
♪テケテンテン〜テケテケ〜テテン♪
え〜、実はこう見えても私、学生時代バレーボールをやっておりまして、セッターという
ポジションをやっておりました。ええ、私の着物を、体操服にブルマーと取り替えて想像
していただければ...まあそれは冗談ですが...
「おお源さん、またいっちょやろうじゃないか」
「辰さん、人んち勝手にあがりこんで、いっちょやらんかはないでしょう。さあ、雪駄も
脱いでおくんなさいよ」
「お、わりい。で、いっちょやろうじゃないか」
「解りましたよ。どうせまた私の勝ちでしょうけどね」
「なにを! 今度こそ源さんの王さんをこう攻めてとって攻めて...」
「しかし辰さん。仕事の方はいいんですかい? また大きな工事が入って、忙しいって言っ
てたじゃありませんか」
「うるせえ。とっとと駒並べろってんだ」
「はいはい解りましたよ」
こうして源さんと辰さんは一局始めます。でもどうしたって勝てないものは勝てない。4、
5分もたたないうちに、源さんの額には脂汗がじわじわと滲み出てきます。
「待った! それ待った!」
「またですか、もう5回目ですよ、源さん」
「つまんねえこと覚えてんじゃねえよ。それ、その金、元に戻しな」
「戻しますけどね。しかし辰さん、仕事はいいんですか? 噂じゃ、現場にブロック置きっぱ
なしってえ言うじゃないですか。工期はもう終わっちゃうんじゃないですか?」
「終わんねえよ。それより、ほら、この飛車でどうだ!」
「はい。そんな手とっくにお見通しですよ。さあ、もう勝負は見えたんじゃないですか?」
「て、てめえ! ブロック屋の辰をナメんじゃねえよ!」
「と言いますと?」
「ブロックも将棋も、つまなきゃ終わんねえんだよ!」
♪テケテンテン〜テケテケテケ〜♪
「師匠! ご苦労様です!」
「おう」
「しかし、師匠が学生時代バレーの選手だったなんて初耳です」
「顔に似合わねえって言いてえのか? これでもブロックの鬼と呼ばれてたんだぜ?」
「かっこいいっす。めっちゃかっこいいっす」
「ああ。そのブロックの練習も落語にはしっかり生かされてるんだぞ」
「え、どんなとこがです?」
「つめを大切にして、うまく落とせってな」
(投稿日:10月29日(木)23時50分43秒)