『テーマ館』 第23回テーマ「ブロック」


 「高性能爆弾広告」   by  らいくん


       あなたは、不思議な会議を目撃している。時間は夜。窓の外は摩天楼。
       黒いスーツに身を固めた男達。長いテーブル。
       テーブルの上には各人毎におかれた蛍光緑の飲み物。ついでに湯気もつけとこう。
       照明はやや暗め。窓ガラスに会議の様子が映り込んでいるような……。
       あなたは、俯瞰でそのガラスを見ている人って事で。
       声には多少エコーがかかっていて……。
       「今回のH商品のマーケティングについてだが、誰か良い意見は?」
       それは、中央に座っている男のセリフ。
       そのセリフに、いかにも下っ端風な男が答える。ただ、何か言いたいだけの男が。
      「バブルの時とは違いますからね。今の状況じゃなんとも」
       その下っ端の言った意味も無い言葉を抑制すれば、自分の株が上がると思っている男が続く。
      「なんだそれは、意見のつもりか?」
       いかにも下っ端風な男は、出鼻を挫かれ黙り込む。
       沈黙。
       ここで、一発決めればカッコイイと思った男が意見を言う。
      「やはり効果を見込んで、ブロックバスターなど、良いのではないでしょうか?」
       それに対して、横文字を使う事に、単にむかつく男が呟く。
      「横文字を使えば採用されると思ってるのかよ」
       カチンと来た男が、こいつは意味を知らないと思って追窮する。
      「あんたは、ブロックバスターって意味、しってるのか?」
       横文字を使う事にむかつく男が言い返す。
      「高性能爆弾広告の事だろ。あんなのには金がかかる」
       カチンと来た男が、横文字男に当てられた事でショックを隠せない男になる。
       「そ、そうだな。金がかかるよな」
       解決策を出さずに、黙ってる男が会議の終了を待って考える。
       (くそっ! この後デートなんだぞ。いいかげん会議おわらね〜のか?)
       中央に座っている男が状況の報告と、新たな意見を求める。
       「現在我が社にはブロックバスターに使う程の金はない。他の意見は?」
       現在、中央に座っている男は、意見を求めるだけの男になっている。時間がそうさせている。
       また、ただ言いたいだけの男が変な事を言い出す。
       「そうですよね。低コストでマーケティングが出来ないと駄目ですよね」
       そして会議が始まった時から、何回も同じ事を繰り返しまくる。
       さっきの言葉に、相手の意見を抑制することが出来れば自分の株が上がると思っている男が続く。
       「だから、君の言葉には、何の信憑性も無いんだよ。
      もっと具体的に言えないのか? 君は!」
       結局この男も何の意見も言ってない。そして、また沈黙の時間が続く。
       それを繰り返し続けまくる会議。
       結局、『今日の会議は無意味だ』という結果を皆既に理解している。
       その結果を予測していた男が、会議をエスケープし、
      家で青いビールを飲みながら、一言。
      「あいつらじゃ、どうせ決まらね〜よ」
      わかったような事を影で言う最低な男。
      そして、社員の中で最低と言われていた男が、会議にも誘われず寝る前に一言。

      「地球は丸かった!」

                                                                      
(投稿日:11月13日(金)02時26分59秒)