『テーマ館』 第23回テーマ「ブロック」
「愛の告白」 by 学茶
「バイト先に素敵な人がいるんだけど」
A子は顔を赤らめていた。嬉し恥ずかしの告白である。
「告白しようかどうしようか、迷ってるの」
「すれば?」
B子は素っ気無く答えた。
「やっぱり、そう思う? ねえ、どういう風に言ったらいいと思う?」
「ストレートに言うのが一番だと思うけど。あんまりひねらない方がいいんじゃない」
他人の恋路なんてどうでもいいやと思いながら、それでもB子は率直に自分の意見を述べた。
「でもね、すんごくモテる人なの。心に残るような告白をしたいの」
夢見る少女のA子は一瞬、トロンとした目をした。それから真剣な眼差しになって、
「彼ね、バレーボールをずっとやっていたんだって。バレーボールが好きなんだって。だから」
「バレーボールの試合、一緒に行きませんかって誘うの? よしなよ、もう他の娘達が使い古しているよ」
現実的なB子は即答した。
「え〜っ、だめぇ?」
「駄目、駄目。当たり前過ぎるよ」
何がココロに残る、だ。あんたの考えているのはその程度なのか、あ〜、おそまつ。
「え〜、どうしよう。何かいいセリフない?」
「あたしが考えたら駄目じゃん。そういうのは自分で考えないと」
B子は、駄目駄目、ばかり言っている。本当は現実的な分、A子より応用が利かないのだ。B子にはその手のストックがなかった。
「でもさあ、ストレートに言って断られたら、あたし自爆しちゃうよお」
してみろよとB子は思った。
二週間後、A子は再びB子の元へ顔を出した。この間と同じで顔が赤い。
「ねえ、聞いて、聞いて。もう超ハッピーなの!」
A子は突然、B子に抱きついた。
「今あたしね、彼とつきあってるの!」
B子はA子を振りほどくと、A子の顔を覗き込んだ。
「例のバレーボール好きの彼と?」
「そうなの!」
B子は驚いた。そして側にいるとうるさくて落ち着かないこんなオンナと付き合う気になった相手を一度見てみたいと思った。
「で、何て告白したの?」
「えっ、言わなきゃ駄目? 何か恥ずかしいなあ」
そう言いつつ、A子は言いたくてうずうずしている。
「もったいつけないで言いなよ」
「うん。あのねぇ『私の気持ちをアタックしたらレシーブしてくれますか』って言ったの」
「直に?」
「うん」
今度はB子の顔が赤くなる番だった。なんてベタなことを。あ〜、恥ずかしい。
「でも」
「でも?」
怪訝な顔をしてA子は相手を見つめた。
「ううん、いい。何でもない」
B子は言いよどんだ。
「何よ、気になるじゃない。言ってよ」
A子は少しムッとしている。仕方がないのでB子は答えた。
「いや、良かったなと思って。『いえ、ブロックします』って言われなくてさ」
(投稿日:12月06日(日)13時18分19秒)