第61回テーマ館「壊れそうなモノ。」「壊れる」



ブロークンハート しのす [2006/04/12 22:28:57]

 「はい、こちち電話心の相談相談、堂出萌です」
 「た、たいへんなんです」
 「どうしましたか」
 「あたし、高校生なんだけど、好きな人いて、さっき告白したの。クッキーを手作りし
て一緒に渡したの。そしたら、彼、『お前なんて好きじゃねぇーよ、ブス』って吐き捨て
るように言って、クッキーの箱を地面に叩きつけると踏みつけたの」
 「そう、踏みつけたの。ショックだったでしょう」
 「もうあたしもそれ見て、心を込めて作ったクッキーが…と思うとキレちゃって、彼の
胸を押したの」
 「そう、押したんだ。本当に頭に来たんだね」
 「そ、そしたら手が彼の身体にズボズボと入っていって」
 「え、手が入ったんだ」
 「そして手にドクンドクンと熱いモノがすっぽり入って、えーっと思って引っ張り出し
たの。そしたら彼の心臓が手の中にあって、キモいと思って握りつぶしちゃった」
 「まじーっ、それって『インディ・ジョーンズ魔宮の伝説』じゃん。で彼、どうなった
ん」
 「『ぐげーっ』ってへんな言葉を吐いて、倒れたの。で、今目の前で死んでるんだけ
ど、どうしたらいい」
 「へぇー、目の前で死んでるんだ。ま、心臓握りつぶしたら死ぬわな。失恋のことブロ
ークンハートって言うけど、まさしくハートをブロークしちゃったわけね。でも変よ、失
恋したの、あなたなんだから、あなたがブロークンハートでなければ」
 「えっ、どういうことですか」
 「今度は自分の左胸に手を差し込んで」
 「はい、手が入ったわ。あ、ドクンドクンって、これ、あたしの心臓なんだぁ。生きて
るって感じぃ」
 「で、握りつぶす」
 「ぐげーっ……」
 「どう、これであなたがブロークンハートでしょ。解決したかしら」
 「………」
 「そう、じゃ、またなんかあったら電話してね。堂出萌でした」

戻る