第61回テーマ館「壊れそうなモノ。」「壊れる」



預言書 ZAX [2006/05/07 23:32:37]

その最初の何ページかに書いてあるのは名前だった。
只管名前だけが、ずらずらと書き並べてあった。細かく。無機質に羅列されてある。
知らない名前ばかりだ。大学の卒業生の名簿か何かと思えば分かりやすいかもしれない
が・・・・。

そもそも、この「本」はなんだろうか。酷く分厚い。まるで百科事典。なのに、開ける
のはこの最初の何ページかだけなのだ。あとは、まるで糊でくっつけられたみたいに開
けない。汚い本だ。埃を被って地下室の隅っこに放置されてた。汚いくせに、装丁だけ
は豪華だ。革張りで、上等。新品ならば大層な値がついたことだろう。

かと言って、この名前のリストの不可解さが説明できるはずもない。

「創世記、というものがあるのならば、世の中が終わる過程を記した書物があっても良
くは無いか?」

声がした。どこから?ここには誰も居ない。すぐ傍でしている。

「まずは、人間が、死に絶える。今、おまえが開いているページに載っている者は、
皆、同時にこの世から消え去る。事故で、病気で、行きずりの殺人の被害者として、同
時にな。今から、きっかり、10秒後だ。いいか、数えるぞ。10、9、8、7、6、
5、4、3、2、1・・・・・終わりだ」

謎の声は淡々と告げた。同時に・・・・・。そのページが白紙になってしまった。あれ
だけ、気持ち悪いほどびっしりと書かれていた名前が一斉に消えていた。

そうやって、パラっと二ページほど紙がめくれた。やはり、名前のリスト・・・。

「これは、明日の分だ。明日、そこに載っている人間が、同時に消え去る」
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