第38回テーマ館「こんな一日」



明日へ時間 布施乱歩 [2001/02/03 08:53:02]


鮮やかな日差しが、カーテンからこぼれている。

朝、すっきりした頭で目を覚まし、
顔洗って、ご飯食をたべて、
伸びをして、犬の散歩。
日の当たる部屋で読書して、
妻の入れてくれたコーヒーをすすり、
いつの間にか、陰ってきた窓の外・・・。

オレンジ色の日差しが、雪の積もった庭に射し、
小さな命が眠っていることを思う。
そこは、冷たいかと、心の中で呟く。

妻の声に誘われてダイニングに行くと、暖かな夕飯がまっている。
夜も深け、テレビのロードショーをみる。
隣りで、ほつけたシャツを繕ってくれる妻の手が動いている。
ふと、窓の外に目をやるとまた雪が静かに降ってきていた。
窓際にある、主のいなくなったゲージを見ると、また思い出す。

風呂から上がり、妻の入れたくれたビールを飲み、
何事も無く1日が終わろうとしている。

新聞もテレビのニュースも見る事も無くなって
世間の事はよく解らないが、
ゆったりした時間を楽しむのは
残された時間を思うと、
これでいいと思う。

一足先に眠ったやすらかな妻の寝顔をみながら
眼鏡をはずし、布団に入り
安殿のため息を漏らす。
そばで犬が目だけをこちらに向けている。
おやすみ、そう声をかけると安心して目を瞑った。
この犬も11才。
私が先か、お前が先か・・・。

平和で安らかな時間を愛して止まない、
こんな1日が明日へ続くようにと
願いをかけて、私も夢の床についた。

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