第38回テーマ館「こんな一日」



ゆれるゆれるやなぎはゆれる いー・あーる [2001/03/25 23:37:02]


 ぼけーっと、道を歩いていた。

 夜中の三時。夜中の工事のおじさん達か学生くらいしか、
道を歩いていないような時間帯。職場からの抜け道も、
コンクリート塀のすぐ外の街灯で、かろうじて足元がわかるくらい。
 一本隔てた大通りからは、自動車の音が絶えることなく聞こえる。
けれども流石にこの一方通行の道までは、そんな車も通る気配は無い。

 だから、ぼけーっと。
 道の真中を歩いていた。

 空は、適度に曇っている。
 風は、殆ど無い。
 うっすらと、春めいて大気が柔らかい。

 肩の凝りだけは、季節に因らない。
 いち、に、で首を曲げながら歩いていたら。

 塀越しに、柳が揺れた。

 毎日見ている筈の柳。微風にも揺れるくせに、折れた枝は案外硬かった。

 冬中、焦げたような茶色だった枝に、びっしりと緑の葉が付いて。
 常夜灯が照らす部分が、淡い緑に光るようで。
 夜の画布の上に、ざっと粗い筆を走らせたように。

 眺めていたら、涙が出てきた。
 ああ、妙に綺麗なんだ、と、気が付いた。

 あかるい。
 光を帯びて、あかるい緑。

 坂の途中から跳ねて帰った。
 こんな日も、多分悪くない。

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