第58回テーマ館「死」



十四歳の天使 林檎 [2005/08/24 17:23:34]

「白血病」
真実は、あまりにも突然にやってきた。
アマリニモ酷イ現実。
ずっと、楽しく過ごしていた世界が一変に崩れてきた。
まだ、十四歳なのに。
「助からないんですか・・・?」
「・・・・・・」
もう、私は死ぬしかない。だけど、もっと、たくさんのことをやりたかった。

                マダ、死ニタクナイ

                   助ケテ!!

そう、叫びたい。思い切り、拳を叩いて、叫びたい・・・。
「キミが、死ぬまであと、三ヶ月」
冷酷に、つきつけられた、たった三ヶ月の余命宣告。
私は、どうすればいいのだろう・・・。

病室に戻って、カレンダーにキュッと丸をつける。
そのつけられた丸が私のメイニチ。
涙がとめどなく溢れてくる。
ナクコトナンテ、ナイジャン。
アト、サンカゲツデ シンジャウンダカラ、ナイタッテ ムダナンダカラ・・・。
でも、想いとは、裏腹に私の涙は止まらなかった。
それから、二ヶ月。私は、セミの抜け殻の様に過ごした。
病院食も、三分の二残し、眠って、治療を受けて、眠る。その繰り返し。
いつのまにか、季節は七月だった。
セミがけたたましく鳴いて、子供の笑い声がする・・・。
私も、海に行きたいなぁ・・・。
裕子たちと約束したんだ・・、今年の夏は海にいこうって・・・。
何、やってんだろ・・・、裕子たち・・・・。
・・・・あと、一ヶ月でしんじゃうんだ・・・。
涙が流れる・・・。
もう、泣かないって決めたのに・・・。

涙は止まらない。
毎日毎日泣いていた。
でも、泣いたってどうしようもないから・・・・。
カレンダーの赤丸はどんどん近づいていた。
でも、私は泣かない。
泣いたってどうしようもないから。

「あと、一週間・・・」
セミも悲しく鳴いているように聞こえる。
もう、私は食事を食べなかった。
寝るだけ。
たまに、庭で散歩してた。
強い日差しが照り付けてた。
もっと、生きたかった。
たくさん、楽しいことをやりたかった。
でも、戻れない。

「心臓が弱ってます!」
「血液も・・・、不足しております」
「ダメだ・・・、もう、手のほどこしようがない・・・・」
死にたくない・・・。
生きたい・・・。
でも、限界・・・。
私はよく生きた。
十四年間、幸せだった。
視界が小さくなっていく・・・
細い手が床に触れる。

                 サヨウナラ・・・。



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