第58回テーマ館「死」
死ねと言われる しのす [2005/09/30 00:26:04]
「死ね」
彼の教室で「死ね」という言葉が流行した。
最初はつまらないことを言ったり、したりしたら、「馬鹿か」というような意味で使
われた。
ふざけて言い合っていたのだ。
しかしふざけだとしても、相手に「死ね」と言うことが、彼には我慢できなかった。
「死ね、なんて冗談でも言っていい言葉じゃないだろ。死ねなんて言われたら気分悪
いだろ」と「死ね」と頻繁に言う男に言った。
すると「死ね」と男は言った。
「うぜぇんだよ」
それから男は彼に頻繁に「死ね」と言うようになった。それはふざけではなく、嫌が
らせだった。
そういうことが続くと、男にならって他の連中も彼に意味もなく、「死ね」と言うよ
うになった。
彼が何をしても「死ね」、何もしなくても「死ね」だった。
明らかにいじめだった。彼は明るさとまっすぐさを失い、暗い少年になった。
うつむいて帰る下校の道。
「死んじまえ!」
彼はそう自分に言われたと思い、かっとなった。そして走り出した。
そこへダンプが来て、彼ははねとばされ、死んだ。
「息子の真二がふらふら歩いていて。前にダンプが走っていて。危なくて。注意した
のに」と彼の父親は泣きながら言った。
「シンジ、前って…」
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