第42回テーマ館「悪魔」



悪魔は宿題をして――― 華丸縛り [2001/12/30 22:19:21]


僕は必死だった。
真剣に、一生懸命だった。この想いに嘘はない。
なのにあいつは―――。
僕をまるで相手にしていなかった。日常、よくあることのように、あっさり
切り捨ててしまった。
それは僕が弱かったせいかも知れない。勝負などなかったのかも知れないが―――
負けたことにとやかく言うつもりはない……。
だが、あいつはこっちの姿を見ようともしなかった。
あんなふざけた態度で、口笛なんか吹いて。
どれだけの使命を背負って、僕がこんな醜い姿になったと思っているんだ。
お前が―――悪魔が、生きているせいだろう!

このままじゃ終わらない。
さわ。
このままじゃ終わらない。
さわ。
このままで終わらせて言い訳が無い。
さわ。
このままじゃ終わらない。
さわ。
このまま終わらせない……。
さわさわさわ。

「……悪魔が来たとでも言っておこうか」

そう言うと、あいつはまた正面を向いた。僕になんか、まるで興味がないようだ。
―――ふざけやがって。
欠片となった僕の身体だったが、ふたつだけまだ感覚が残っていた。

「よ、よし……、これなら」

細心の注意を払いながら、僕は始めと同じく左右へ身体を動かした。
僕の身体は飛び上がることは出来ても、素直に前へ進む事が出来ない。
だからあいつに近付くには、こうやって交互に……。

ドン!!

けたたましい音ともに、頭ににぶい衝撃を覚えた。
何かに押さえつけられているのか、身体が動かない……。
見上げてみると「数学」という文字が片方の瞳に貼り付いていた。

「あー、分かんねえ」

悪魔は苛ついたように吐き出すと、丸めた教科書を慣れた手付きで振り下ろしていた。


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