淵 投稿者:汝繰 投稿日:09月01日(水)06時29分56秒 薄暗い深淵。 その冷たさが、研ぎ澄まされた刃のように私の心を傷付けていく。 死にたくない… 初めてそう感じて身を震わせる。 でも、もう… 闇の触手が私を捕えて離そうとしない。 氷のような御手で触れ、心を凍らせようとしていた。 何故、冬の海へ飛び込んだのだろう。 さ細な事だったのかもしれない、思い返す事も出来ない程… 心が凍える。 返りたい。 ささやかな陽の元に、家族の待つあの場所へ。 無くして初めて気付くものがある。 死にたくない… 再び目覚めたのなら、きっと離さないだろう。